しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「タンゴステップ」   ヘニング・マンケル 

2012年03月21日 | 読書
「タンゴステップ」   ヘニング・マンケル       創元推理文庫 上・下巻 
 DANSLARARENS ATERKOMST            柳沢由実子・訳

1999年、スウェーデン。
76歳のヘルベルト・モリーンは、11年前警察官を定年退職した後、ヘリェダーレンの森の中に移り住む。
周囲との接触を避け、楽しみは人形をパートナーにタンゴを踊ること。
しかし、10月19日の早朝、モリーンは襲われ、残酷に殺される。
37歳のステファン・リンドマンは、ボロースの警察官。
舌がんの宣告に動揺していた。
そんな時、何気なく目にした新聞で、ヘルベルト・モリーンが殺されたことを知る。
モリーンはステファンが新米の頃、指導を受けた先輩だった。
そして、モリーンが何かに怯えていたことを思い出す。
がん治療を始める前の休暇に、ステファンはモリーンの住んでいた地を訪れる。
捜査を担当していたウステルスンドの警察官、ジョセッペ・ラーソンは、ステファンの捜査を受け入れる。
ラーソンは、被害者の家の床の血の跡が、タンゴステップを踏んだものだと発見していた。
犯人は血を流すモリーンを引き摺り、タンゴを踊ったようだ。






物語の冒頭は、ナチスの戦犯が処刑されるシーン。
なので、怯えていたモリーンの殺された理由も読者にはすぐ予想される。
そして、すぐに殺した側からの視点も書かれるので、モリーン殺しの犯人は分かる。
その後で起きた殺人の犯人と理由の方が読者には謎。
警察は、2つの殺人が同一犯かそうでないのかと思考錯誤。
分かっていて見ている捜査も面白いのだが。
殺人事件よりも、スウェーデンとナチスの繋がりに気持ちが行く。
北欧からナチス親衛隊に入り、ナチス信奉者が存続しているとは。
ひとつの思想だから。いつの世もどんな思想もあるのは当然なのだろうか。
日本に、ナチス信奉者がいるかどうかは知らないが、オウムの思想は続いている。
あんなことがあっても続くとは。

復讐の物語でもあるが、モリーンの殺され方はかなり残酷。
確かに、親しくしていた人物に裏切られたという、強い恨みもあるのだろうが。
殺人を強要されたという事も分かっていたのに。
あれほど残酷に殺さなければならなかったのか。
そして、モリーンは殺したが、もうひとつの殺人は犯していないとこだわる犯人。
そんなことは、無視して帰国してしまえばいいのに、と。
その辺りはしっくり来ない。

もうひとつ、ステファンの物語もある。
病気に不安になり怯える気持ちが、生々しく伝わる。
最後、犯人の罪は許したのかとも思ったが、名前を警察に伝えた。
その気持ちは。
ちょっと分からない。
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