金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

今年一番の政治イベント、恐らくは英国残留か?

2016年06月24日 | 投資

昨日(6月23日)行われた英国の国民投票の結果は東京タイムの午前中には大勢がはっきりするそうだが、直前の調査では残留優位だった。楽観の広まりにより昨日は欧米で株価が急伸した。ダウは230ポイント(1.3%)高になり節目を越えて18,011.07で引けた。

欧州ではフランスCACが2%、ドイツDAXが1.8%、英国のETSEが1.2%と軒並み上昇した。

ドル円為替は一時106円台後半までドル高が進んだが、現在は106円をはさんだところで取引されている。

国際的に見ると今年一番の政治イベントだった英国の国民投票は恐らく僅差で残留組が勝ちそうだ(ここで市場の大方の予想と反対の離脱組が勝つと大混乱が起きるが)。

だがどちらが勝っても僅差の勝利だろうから負けた側の意見を政策に織り込んでいく必要がある。

英国の国民投票は次の政治イベント米国大統領選にも影響を及ぼすと言われている。残留組が勝てば、米国の国内志向派の動きに歯止めがかかるが、逆になると内向き派がモメンタムを得ることになりそうだ。

米国の大統領選も最後まで結果が読み難い選挙になるのではないだろうか?従ってどちらが勝っても相手側の主張を相当取り込むことになるだろう。

はっきりしていることは共和党のトランプが勝つにしろ、民主党のクリントンが勝つにしろ、日本の独自防衛力を高めることを求めてくることは間違いないだろう。

英米の政治イベントの予想が難しいのに較べ、日本の参院選の序盤情勢は自民党が単独過半数に迫る勢いだと予想されている。米国が日本の独自防衛力の強化を求めることがほぼ確実な中でそれを受けとめる日本の政権基盤がしっかりしたものであることは安全保障上好ましい。

自民党優勢は安全保障上特にこの時期は歓迎するべきものである(もっとも早々と優勢が報じられると投票に行く人が減り逆を打つこともあるそうだが)。

今年の世界経済は減速傾向で株価を動かす原動力は乏しく、政治イベントが株価を動かすことが多そうだ。英国のEU残留が決まると一つの山は越えるが秋にはもう一つの山がある。

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老後資金の運用利回り、3%以上を期待してはいけない

2016年06月21日 | ライフプランニングファイル

CNBCに世界最大の資産運用会社(運用資産約4.5兆ドル)のラリー・フィンクCEOが「今日の投資環境下で退職金の期待運用利回りは最大でも4%。それ以上のものを期待するのは間違っている」と述べた。

このこと自体は別に新しい話でもなんでもない。先進国の高齢化や中国経済の減速で世界の経済成長率が低下しているので、長期的な期待運用利回りを引き下げるのは当然のことである。

またラリー・フィンク氏は「米国株だけであれば長い時間をかけると6~7%のリターンはあるだろう」と述べている。これは典型的な退職金運用ポートフォリオは株と債券のバランス型なので、株式オンリーのポートフォリオよりもリターンは低下(リスクも低下)するからである。

私はタイトルで「老後資金の運用利回り、3%以上を期待してはいけない」と書いた。これは日本の個人投資家向けの指標である。ベース金利が米国より低い日本では当然期待利回りも低くなるなるからだ。

なおラリー・フィンク氏の話を敷衍して次のことを述べておこうと思う。

一つは「10年以上保有する予定の老後資金があるならば、その相当部分は米国株に投資するべきだ」ということだ。日本から米国株に投資する場合の最大のリスクは為替リスクだ。リスクはプラスにもマイナスにも作用する。想定外の為替益もまたリスクなのだが、ここではマイナスのリスクつまり為替損を考えてみよう。仮に104円で投資していたドルが10年後に80円になっていると24円の損。単純計算では1年2円40銭。投資元本に対するマイナス利回りは2.3%だ。仮に2.3%を上回る配当を得る投資であれば、ドル円為替が80円になってもpay offする。それ以上の円安や株価上昇は総てプラスと考えてよい。

米国株には配当利回りが2.3%を上回る銘柄は多い。もちろん日本株でもこの水準を上回る配当銘柄は多いので何故米国株を買う必要があるのか?というとそれは企業に対する成長期待があるからだ。

投資の教科書にでる銘柄だがジョンソンアンドジョンソンなどはその典型的銘柄である。下のチャートが示すように同社の株は3%近い配当利回りを確保しながら安定的に時価総額を増やしている。短期的な値上がりを期待する投機家には面白味のない株だが、何もしないでじっくり持つには良い銘柄だと思う。

次に「投資コストに敏感になる」ということだ。仮に期待利回りを3%としても、投資信託の運用報酬に1.5%も支払うとネットの利回りは1.5%しかないことになる。高い運用利回りが期待できない時代だから、運用報酬にもっと敏感になろう。

最後に「絶対にうまい話に乗らない」ということだ。この時期簡単に儲かる話はない。簡単に儲かる・絶対に儲かるなどという話はウソである。

★   ★   ★

今週木曜日に行われる英国の国民投票の行方に世界の投資家は注目している。先週末からやや残留派が優勢なのでは?という観測が流れ、昨日は世界中で大きな買戻しが入った。残留が勝つか?離脱が勝つか?それは分らない。分っていることはどちらが勝つにしろ僅差の勝利になりそうだということだ。僅差の勝利ということは仮に残留派が買ったとしても、離脱派の主張を政策に織り込んでいかざる得ないことを意味する。それが株価にどう影響するかということは現時点での判断は難しい。

英国の国民投票の次に世界の注目を集めるのは今秋の米国大統領選挙だ。こちらも誰が勝つか分らない。政治は予測不可能だ。むしろ世界の消費者を相手にした米国のコングロマリットの業績の方が将来の予想は立ちやすいだろう。政治が不透明な時に世界企業への投資を考えることは自然な成り行きなのである。

★   ★   ★

出版した電子本

「人生の山坂の登り方・降り方」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LYDWVPO/

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

「海外トレッキングで役に立つ80の英語」

「英語の慣用表現集」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LMU9SQE/

 

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アナログ旅ならアナログ情報が便利

2016年06月19日 | 旅行

私の旅は基本的にインターネット派である。東海道新幹線はエクスプレス予約であり、ホテルの予約はTripadvisorかBooking.comを使っている。山登りでは大抵カシミールから登山ルールをガーミンに落とし込んで使っている。沢登りやツアースキーの情報もインターネットで得ることが多くなった。

ところが今年の夏、某トレッキング同好会の幹事として、蔵王山のトレッキングを企画することになり、インターネットで調べてみたが中々手頃な情報が見つからないのである。

蔵王山麓からロープウェイを使って最高峰の熊野岳や「お釜」の見える刈田岳に登るのであれば、手元の百名山ガイドブックやインターネットの情報で簡単に分るのであるが、蔵王山中腹のドッコ沼やいろは沼をめぐるルートとなると詳しいことが分らない。

自分一人や気心のあった2、3名の旅であれば、「行けば何とかなるさ」で済むのだが、某トレッキング同好会は20名近い団体になりそうだし、体力・脚力に合わせて3パーティ程に分けるというので、かなり詳しい情報が要る。

そこで銀座の山形物産館に出かけ、「トレッキングマップ」を探したところかなり詳しい地図(無料)が手に入った。

蔵王温泉からは3本のロープウェイが架かっていて、ロープウェイの上の駅の間の高度差はそれ程なさそうだ。またところどころに夏山リフトがあるので、体力・脚力の弱い人でも高原散策が楽しめそうである。

どうしてこのような情報はあまりネットに出ていないのか?ということを考えてみた。

一つはこのトレッキングマップはかなり大きいのでA4サイズをPDFにしてアップロードすることが難しいということだ。

もう一つはこれは私の推測なのだが、蔵王山の中腹を歩く人達は比較的ご高齢の方が多くブログに旅記録を載せる人が少ないのではないか?ということだ。つまりアナログ派の人が多いということだ。推測だが。そう思って地図を見ると文字が大きく老眼でも大変見やすい。

そこでアナログ旅にはアナログ情報が便利と判断した次第。

また次に同様な企画をする場合もまず該当する県の物産館に出かけ、トレッキングマップを入手しようと考えている。なおトレッキングという言葉は本来はキャンプやロッジ泊まりをしながら数日連続して山道を歩くことを指すから、数時間の高原散策はハイキングと呼ぶ方が正しいと思う。でもハイキングよりはトレッキングの方がちょっとお洒落な感じがする?ので観光協会は「トレッキングガイドマップ」という言葉を使っているのだろう。目くじらを立てるほどの話ではない。

 

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前門に詐欺・横領、後門にすれすれ商品。年をとるのも大変

2016年06月19日 | ライフプランニングファイル

今週は愛知県の某地方金融機関と相続・民事信託の勉強会を行う予定だ。民事信託はその名前のとおり、民間(特に家族間)で行う信託であり、金融機関が扱うものではない。ただし高齢化社会において、高齢者の資産・事業・負債などが、スムーズに相続人に継承されていくことは、金融機関にとっても重要な課題だ。そこで上記の勉強会を企画した次第。

民事信託の実例については、詳しい司法書士から説明して貰う予定だが、骨子については私が説明を行う予定だ。

その中で一つ注意点を上げておきたいと私は思っている。というのは巷に出回っている民事信託(=家族信託)の本にはバラ色の話が多く、色々な難問を解決する万能薬的な説明がされている点だ。確かに民事信託を上手に活用すると遺言書では実現することができなかった「次の次の世代への財産承継」を設計できる等のメリットはある。

しかしまだ余り大きな問題にはなっていないが、受託者(主に相続人の子ども)が委託者兼当初受益者(主に親)の財産(信託財産)を着服するというケースは幾つか散見されている。民事信託もリスクを内包しているのである。

民事信託より広く行われている成年後見制度については、後見人の着服について最高裁が調査結果を発表している。それによると2015年度の着服件数は521件金額は29.7億円に上った。またこの内弁護士等専門職による犯罪は37件金額は1.1億円だった。後見人全体による着服件数は減少傾向にあるが、専門職による犯罪は過去最多となっている。

もっとも本当の被害総額はもっと多いと考えるべきだろう。2015年9月の東京新聞Webサイトは「2014年の被害額は少なくとも56.7億円で専門職による横領は5.6億円だった」と書いている。被後見人の判断能力は低下している(だから後見が必要になる)ので、被害を被害と認識できない場合も多いと思われるから、実際の被害額は相当大きいと考えてよいだろう。

民事信託には成年後見制度を補完する機能がある。本来「委託者のために委託者の勘定で金銭を管理するべき」なのだが、委託者の金銭を自分のものとして費消することが時として起きる。親一人子一人ならそれでも容認されるかもしれない(親が死ねば子ども一人が相続するので)が、子どもが複数でその中の一人(例えば同居する長男)が受託者となっている場合は、他の兄弟との間で揉め事が起きる可能性は高い。

ちなみに振り込め詐欺など「特殊詐欺」の昨年度の被害金額は476億円だった。後見人や遺言執行者による着服は発覚し難いあるいは事件になり難いという点から全体像は把握されていないが、私は特殊詐欺被害額の2割程度はあっても不思議ではないと考えている。

「特殊詐欺」「成年後見人等による高齢者の財産の横領」を前門の狼とすれば、高額の寝具等を次々の販売する「次々販売」や証券会社・銀行等によるハイリスク商品の販売は後門の虎である。

こちらは完全に犯罪行為と決めつけることができないだけに被害総額(そもそも被害かどうかも判然としない)の推測を行うこともできない。

なお消費者センターによると70歳以上の人の相談件数は年間20万件前後に達している。

こんなことを考えていると「年を取るのも大変だな」と思う。

ではどうすれば良いか?というと、決定的ではないにしろ、一つの有力な解決策は「個や孫への積極的な贈与で財産を減らしておく」ことではないか?と私は考えている(残念ながら私には子どもはいても孫はいないし、積極的に贈与するほど大きな財産もないので机上の空論なのだが)。

つまり教育資金であれ、結婚・子育て資金であれ、余裕のある人(将来遺産として残してあげたいと考えている人)は、今積極的に贈与すれば良い(税法上のメリットも活用できる)のである。財産が少なくなると、振り込め詐欺や横領に遭う被害金額も少なくなるからだ。

また貰う子どもや孫にしても将来貰うよりも今貰う方が役に立つ。また財産はあるけれど身寄りがない、死んだら財産を公(おおやけ)のために寄付したいと考えている人も死ぬ前に財産の大部分を寄付した方が良いかもしれない。例えば専門職を遺言執行者として遺言を作成しても、その執行人に着服されてしまうリスクがあるからだ。金は眼が黒い内に使ってしまうというのが、鉄則ではないだろうか?

 

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ユーロ離脱国民投票を前にドル調達コスト急騰

2016年06月17日 | 金融

英国の国民投票を前にドルの調達コストが急騰している。ブルンバーグによると、FRA/OIS(金利先渡契約)スプレッドが、44ベースポイント(0.44%)と昨年末以降で最高水準に達した。昨年末にドル調達コストが急騰した理由は、米連銀が約10年ぶりの政策金利を引き上げたことに対して、銀行が身構えたことや年度末でバランスシートを圧縮したことが原因だった。

今日の日経新聞の一面もこの問題を取り上げていた(「日米欧、ドル緊急供給を検討」)。

市中銀行間でドルの貸借が難しくなっているのは、過去に較べてリスク管理等コンプライアンスが厳しくなり、市中銀行が裁定取引を狙ってドルを貸し出すことが減っているということもある。

市場にはリーマンショックや2011年の欧州銀行危機並のドル不足が起きるのではないかという懸念が広がっている。

ドルの調達コストは上昇しているものの、ドル円為替レートについては、円高が進んでいる。ドルが不足しているなら、対円でのドル安が一服してもよさそうだが、ドルを借りるということとドルを買うということは別なのだろう。市場は安全通貨として円を買っているのだ、とエコノミストは解説する。

長期的に見て今の日本に投資魅力は乏しいと思われるが、短期的には少なくとも通貨は安定、政府も為替介入に踏み切れないと投機筋は読み切っているようだ。

 

 

 

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