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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

貧乏は毒だ

2008年02月21日 | 社会・経済

米国大統領予備選挙で民主党はオバマ候補の勢いが増してきた。今の米国を変革したいという人々の思いが「オバマ信仰」を作り出しているのだろうか?

さて18日のニューヨーク・タイムズに著名な経済学者ポール・クルーグマンが「貧乏は毒だ」という小文を投稿していた。ポイントは次のとおりだ。

  • 週末のファイナンシャルタイムズに、幼少時の貧困は脳の発達に障害を与えるという記事があった。貧困ゆえに社会的に隔離され、それが言語、記憶能力の発達を阻害するという。
  • 第36代ジョンソン大統領は44年前に「貧困との戦い」を掲げ、貧困層の削減に努めた。彼が大統領に就任した1963年に23%を占めた貧困層は彼が大統領を辞めた1969年には14%に減少した。
  • しかしその後米国の政治は右傾化し、貧富の差が拡大し2006年には貧困層の比率は17.4%になっている。
  • 民主党候補のヒラリー氏やオバマ氏は貧困問題に対する政策を掲げている。しかし貧困対策は政策の中心問題になっていないし、対策規模も中程度のものだ。
  • もし民主党候補が選挙で勝つとすれば、それは貧困層救済策によってではなく、中間層の不安を取り除くことによって彼らの支持を得るからである。彼らの政策のプライオリティは貧困問題ではなく、ヘルスケア問題である。
  • しかし究極の課題としては、今なお多くの米国人にとって有害な貧困を終焉させる政策を取ることを希望する。

リンドン・ジョンソン大統領についてはオリバー・ストーン監督による映画「JFK」の影響もあり、ケネディ暗殺の黒幕ではないか?という疑念があり、好印象を持っていなかった。しかしジョンソンは内政については上記のように大きな功績を残している。

大統領選挙を通じて米国の社会はどのように変わっていくのだろうか?

その度合いの程は不明ながら、私は貧富の格差縮小に向かうことは間違いないと考えている。貧困は毒であり、それを撲滅することが究極の政治課題だというクルーグマン教授の主張は明快である。

望むことは米国が自国の貧困を減らす努力を世界にも向けることである。いや先進国がもう少し世界全体の貧困を減らすことに努力をすれば、色々な紛争や緊張は緩和されるのである。

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まだ続く米銀の償却損失

2008年02月20日 | 金融

サブプライムローン問題に端を発する金融の混乱がどこまで続くのか予想することは難しい。従って何時どのような方法で混乱が収まっていくのか予想することは更に難しい。
しかし震源地の米国のアナリスト達やマスコミが問題を直視して、含み損を過小評価しない姿勢を保っていることは評価して良いだろう。

19日のニューヨークタイムズ(NT)は、大手銀行の償却がまだまだ続くという見解を示している。それは評価損がサブプライムローン以外のローン、具体的にはLBOローンなどに広がっているからだ。
私は日本の金融機関全体がこれらのローンをどれ位抱えているか正確には把握していないが、数兆円のエクスポージャーを持っていると判断している。例えば「みずほグループ」を例にとると、米国証券取引委員会に提出しているForm 6-Kの中で「9月30日現在86百億円の販売用ローンを抱えていて、その大部分は米国のLBOローンである。そしてこのローンに関して240億円の引当をした」と明記している。
ところがこのような情報を日本語の資料で見つけることは出来なかった(これは私の探し方が悪いのかもしれない)
実はForm 6-Kにしろ日本語のディスクロージャーにしろ頭から読み込んでいる訳ではなく、目次や検索機能で探しているのだが、 英語の資料では比較的簡単に見つけられる。もし外人投資家には重要な情報を提供して、日本人投資家には明示的に開示していないとすると日本人投資家を舐めきった行為といわざるを得ないがどうだろうか?

私はアナリストでないので、このようなことを調べても一銭の得にもならない(既にみずほの株ではかなり含み損こそ抱えているが)ので、この辺りで調べるのは止めるが、日本の金融機関も数兆円のLBOローンを抱えていると考えて良いだろう。

本題に戻ると、NTはこのLBOローン、商業用不動産を担保にしたローン、学生ローンなどの市場価値が急激に低下していると報じている。

このことはサブプライムローンで既に1,200億ドルの償却を行っている米銀に更に償却負担がのしかかることを意味している。オッペンハイマー社のアナリストWhitney氏は、「大手金融機関は2千億ドルの企業向けローンを抱えているが、今年の第一四半期に100億ドルから140億ドルの償却を迫られるだろう」と述べている。このことは保有ローンの5%から7%の引当をするということだ。
先に紹介したみずほの引当率が2.8%程度だから、みずほも倍以上の引当を迫られる可能性がある。

UBSのアナリスト達はもっと悲観的な見方をしていて、大手銀行は最終的に1,230億ドルから2,030億ドルの追加償却を迫られると予測している。もっともこれはモノライン保険会社が破綻するという前提に立っているので、悲観的過ぎるかもしれない。

どうしてこのようなローン価格の下落が起きるのか?というとローンの最終的な投資家がいないからだ。通常のマーケットでは大手銀行はLBOローンを引き受けて、ヘッジファンドや投資信託に販売する。しかし現在はこれらの機関投資家がそっぽを向いているのだ。
このためLBOローンの価格は額面100に対して88まで下落している。これはデフォルト率が8%を越えた2002年以来始めてのことである。

現在のデフォルト率はもっと低いので、ここまでLBOローンの価格が下落することは経験に照らすとおかしいのだが、買い手がいなくてはしかたがない。

引当の結果大手銀行の資本勘定が減少すると、銀行は貸出を抑制して自己資本比率を維持しようとするので貸し渋りが起きる。
米国では住宅ローンの新規実行やクレジットカードの発行に関して、審査が格段に厳しくなっているが、これもその一環だ。

日本でも大手行が中小企業ローンから撤退するなど、中小企業向けの与信パイプが急速に細くなっている。これは銀行独自の事業判断だけではなく、監督官庁の示唆(例えば引当率を引き上げる等)が働いているとみるべきだろう。

ローンの流通市場が回復するためには、バリューファンド(割安ファンド)のような度胸のある投資家が現れて妥当な値段でローンを買うことが必要だろう。米国の金融市場の懐は深いので、いずれはそのような投資家が現れるのだが、今のところ私の目にはそれが何時なのかまでは見えてこない。

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ブルーレイ、勝っても長続きしないか?

2008年02月18日 | デジタル・インターネット

先週末(2月15日)ウオールマートがHD-DVDプレヤーを6月までに撤去すると発表したことで、第三光ディスクを巡る争いはブルーレイの勝利に決まった。これを受けメディアは「東芝がHD-DVDから撤退するだろう」と報じた。これに対し東芝は18日日中「当社として決定したという事実はない」と発表している。しかしこれはこのような場合の
常套句的発言と解するべきだろう。抜け目のない株式市場は東芝のHD-DVDからの撤退を好感して、同社の株価は上昇していた。

HD-DVDのHDHigh Definition 高画質の意味だ。東芝は過去2年間、多額の資金を投入してHD-DVDのついたラップトップパソコン等を生産してきたが先月ワーナーブラザースがブルーレイを支持すると発表してから敗色が濃くなった。業界筋では東芝は技術で負けたというよりもハリウッドの支持を得られなかったことで負けたという声が多い。
もっともあるブログでは「HD-DVDという長い頭文字の羅列より、ブルーレイ(青い光線)という名前の方が前向きに見えるから、勝ったのではないか?」という意見を発表している。

ところで消費者はハードメーカーの熾烈な戦いを冷ややかに見ていたとFTは報じている。何故ならディスクに映像をストックしなくても、将来インターネット経由で映像をダウンロードできるようになるので、消費者はブルーレイを飛び越してしまうのではないか?と観測しているからだ。

もっともFTは「大部分の米国の消費者は高画質映像をデジタル・ダウンロードするインフラを持っていないので、ブルーレイのようなパッケージ・メディアを支持するだろう」とも述べている。この点について私は短期的には同感する。私は少し前にOCNシアターというインターネットを利用して、映画をダウンロードするサービスに入ったことがあったが、「映像の画質が悪い」ということと「コンテンツが貧弱」という理由で止めてしまった。高画質の映像をインターネット経由でダウンロードするのはもう少し先になるだろう。とは言うものの私は今のDVDレコーダーを直ぐにブルーレイ・レコーダーに換えるかというとコストパフォーマンスの点からそれ程強いインセンティブも起きない。少し待てばもっと安価に高画質のコンテンツを見る方法が開発される・・・と期待して余り高価なプレーヤーなどを揃える気が起きないということも事実だ。

FTは業界観察者は「ハードウエアが直ぐに時代遅れになる時代にどうしてソニー・東芝という日本のメーカーがハードウエア戦争に熱中するのかという疑問を禁じえない」と結んでいた。

私は日本のメーカーには「日本人はハードウエアの性能に固執する」という思い込みがあるのかもしれないと考えている。しかしこの既成概念が変化しているということを合わせて考えないといけないだろう。

今量販店では華碩電脳(アスーステック)やレノボなどが、5-6万円のノートパソコンを販売し人気を博している。NEC等日本メーカーは価格競争に巻き込まれて「利益なき戦い」に喘いでいる。
日本市場は特別という時代は終わったのかもしれない。企業で使うパソコンがシンクラアント化(クライアント側のパソコンを軽くして、アプリケーション・ファイル
などをサーバー側で管理するシステム)するように、映像等のコンテンツも光ディスクにストックするより、インターネットを経由して観たい時にダウンロードするという時代が早晩来るだろう。そう考えると光ディスク戦争の勝者も泡沫(うたかた)の夢を見るだけかもしれない。

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中国の土地所有権問題

2008年02月18日 | 国際・政治

50年来の大雪など話題に事欠かない中国だが、土地所有権を巡る紛争については余り日本のマスコミで取り上げられていないようだ。しかし私はオリンピックが開催される今年この問題は大きくなると考えている。それは「食の確保」という問題を通して日本にも少なからぬ影響を持つものだ。

「土地を農民へ」という言葉は1924年に孫中山(孫文)Sun Yat Senが使って以来、中国革命のスローガンだった、とエコノミスト誌は現在の中国における土地紛争問題を書き出す。そして昨年後半中国共産党にこの約束を守れという声が中国各地で農民から上がっていると報じる。

中国の憲法は農村の土地は集団所有されていると規定する。しかし誰がこの集団を代表するか明らかになっていない。この曖昧さがここ数年の農村地域における騒乱の最大の原因になっている。地方官僚は、地方時自治体として金を稼ぐことに熱心であると同時に私財を肥すことにも熱心でしばしば農地を収用しては開発業者に売却している。

地方官僚の不正に対し、黒龍江省などで激しい抗議が起きている。檄文は「現在の集団的土地所有スキームは農民を農奴にしてしまう仕組みで農民は収容される土地に対し、農民は価格交渉権を持つべきだ」と主張する。

土地の所有権に対する各地の動きはすぐに弾圧された。今年1月には黒龍江省の二人の農民リーダーは強制労働キャンプ送りと判決された。

中国の土地問題は難しい段階に差し掛かっている。中央政府による公共事業促進に貢献して点数を稼ごうとする地方官僚は農民の土地を強制収用しようとする。また目端の利いた農民の中には、正式な開発許可を得ていない開発業者に自分の土地を売却して現金を得ようとする者がいる。(中国で農民は土地の利用権は認められているが、売却したり、抵当権を設定することは出来ないので、この話は奇異な感じもするが、闇では売却可能ということだろう)

これらのことから農地が減少して「食の安全」が危うくなることに中国政府は懸念している。

中国の歴史を見ていると、王朝末期には土地の所有権を求める農民集団が巨大化して王朝を倒すケースがある。現在の中国政府は過去の王朝末期の政府よりはるかに有能であるので、そのような懸念は少ないだろう。しかし現実に対する絶望感が一定レベルを超えると、過激な原理主義が出現する可能性が高まる。それは社会に不安定さをもたらすものだ。中国農民の土地所有権争いは着目しておくべき重要なポイントだろう。

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勝沼酒造、世界に通じるワイン

2008年02月17日 | 酒・ワイン

勝沼酒造のことは先週土曜日(2月9日)朝のNHKテレビで始めて知った。当社のワインがフランス醸造技術者協会主催の国際ワインコンテストで2003年、4年よ2年連続で銀賞を取ったことを報じていた。山梨のぶどうは元々食用で、一本の木に沢山ブドウの房を実らせている。このため糖分が多くの房に分散され、ぶどうが水っぽくなる。このぶどうから作るワインに甘味や酸味を付けるため、補糖や補酸が行われる。しかしワインへの一切の混ぜ物を排除するフランス醸造協会の基準ではこれら混ぜ物をしたワインはワインと認められないのだ。

勝沼酒造のワインがフランスで認められたということは、当社のワインが添加物を加えず、ぶどう本来の成分のみを凝縮してワインを作ったということだ。テレビで有賀社長は「ぶどう農家に頼んで、一本のぶどうの木につける房を減らし、コクのあるぶどうを作って貰った」と言っていた。

早速勝沼醸造のワインを飲んでみることにした。どこのワインショップで扱っているか分からなかった(当社に電話したところ土曜日は休みで取扱店を聞けず)ので、当社のホームページhttp://www.katsunuma-winery.com/index.htmlからオンラインで注文することにした。銘柄はアルガーノ 甲州樽発酵 2006 750ml辛口 3,150円を選んだ。

そのワインが届いたので昨日夕食時に開けてみた。料理はメダイにトマトソース味をつけたメインの他、りんごと大根のサラダ粒胡椒和え、ガーリックトーストなど。ワインはやや琥珀色を帯びている。説明書きによると「フレンチオーク樽で一ヶ月発酵させ」とあるので、ここで色が付いたのだろうか?

Katunuma

味は果実味があり酸味が強く樽香を伴う。酸味が強いのでタイよりもっとこってりした魚に合いそうだ。このワインを高く評価するかどうかは酸味をどうみるかかもしれない。

後はコスト・パフォーマンスの問題だ。しかし本場フランスn基準を満たす国産ワインを一度試すことは悪くないと思った。

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