米国大統領予備選挙で民主党はオバマ候補の勢いが増してきた。今の米国を変革したいという人々の思いが「オバマ信仰」を作り出しているのだろうか?
さて18日のニューヨーク・タイムズに著名な経済学者ポール・クルーグマンが「貧乏は毒だ」という小文を投稿していた。ポイントは次のとおりだ。
- 週末のファイナンシャルタイムズに、幼少時の貧困は脳の発達に障害を与えるという記事があった。貧困ゆえに社会的に隔離され、それが言語、記憶能力の発達を阻害するという。
- 第36代ジョンソン大統領は44年前に「貧困との戦い」を掲げ、貧困層の削減に努めた。彼が大統領に就任した1963年に23%を占めた貧困層は彼が大統領を辞めた1969年には14%に減少した。
- しかしその後米国の政治は右傾化し、貧富の差が拡大し2006年には貧困層の比率は17.4%になっている。
- 民主党候補のヒラリー氏やオバマ氏は貧困問題に対する政策を掲げている。しかし貧困対策は政策の中心問題になっていないし、対策規模も中程度のものだ。
- もし民主党候補が選挙で勝つとすれば、それは貧困層救済策によってではなく、中間層の不安を取り除くことによって彼らの支持を得るからである。彼らの政策のプライオリティは貧困問題ではなく、ヘルスケア問題である。
- しかし究極の課題としては、今なお多くの米国人にとって有害な貧困を終焉させる政策を取ることを希望する。
リンドン・ジョンソン大統領についてはオリバー・ストーン監督による映画「JFK」の影響もあり、ケネディ暗殺の黒幕ではないか?という疑念があり、好印象を持っていなかった。しかしジョンソンは内政については上記のように大きな功績を残している。
大統領選挙を通じて米国の社会はどのように変わっていくのだろうか?
その度合いの程は不明ながら、私は貧富の格差縮小に向かうことは間違いないと考えている。貧困は毒であり、それを撲滅することが究極の政治課題だというクルーグマン教授の主張は明快である。
望むことは米国が自国の貧困を減らす努力を世界にも向けることである。いや先進国がもう少し世界全体の貧困を減らすことに努力をすれば、色々な紛争や緊張は緩和されるのである。