金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

農林中金の新たな挑戦

2006年02月23日 | 金融

最近のエコノミスト誌に農林中金が新しいビジネスモデルを模索していると言う主旨の記事が出ていた。原題はIn serch of a new furrow / Agricultural reform poses a challenge for Japan's agricultural bankというものだ。つまり日本の農業改革で農林中金が新たな局面を向かえているというものだ。特段重要な内容はなく、埋め記事のような気もするが少し面白い話なので紹介したい。余談だがエコノミスト誌の文章が難しいのは洒落のため難しい英語を使うところにある。例えばfurrowということばだが、これは畠の畝と畝との間のみぞとかみぞを掘るという意味がある。農林中金だから畠のみぞなのだろうが、私はfurrowなどという言葉は知らなかったので辞書を引くことになった。

さて記事のポイントを紹介してから農業法人のことなど少し見てみよう。

  • 農林中金は二つの顔を持っている。一つは洗練された国際的金融機関で、総資産62兆円を保有し日本第4位の商業銀行というものである。もう一つは数百万人の農林漁業者の預金を管理するために1923年に設立された小さな準公的機関というルーツを反映するものである。
  • 両方の顔ともこれまで笑っていた。1980年代のバブル期に他の銀行が不動産担保融資で巨利を得ていた時、農林中金はまだ相対的に小さくついていけなかった。その頃農林中金は製紙業、スーパーマーケット、農業関連ビジネス等への融資は行なっていたものの、大部分の資金は日本国債で運用していた。その後円金利が下落し、農林中金は債券投資は極めて優良資産になった。一方90年代についにバブルが崩壊し他の銀行には不良債権と価値のない担保が残った。
  • この時他の銀行は国際市場で資金を調達する時1%以上のジャパン・プレミアムを払わされたが、農林中金は海外特にロンドン・ニューヨーク支店でその高い信用力を使い、邦銀の資金調達のラストリゾートとして資金を供給した。
  • 農林中金は国内でも同様に時々に資金の出し手となった。「我々はかって大手町~農林中金の本店がある~の中央銀行と呼ばれていた」と同金庫のある専務は思い出を語る。国内で農林中金はその優れた資産運用能力を活かし、田舎の小さな預金者に年約0.8%の預金金利を提供している。0.8%というと低い様に響くが、デフレ経済下の日本ではこの金利は他の商業銀行の金利の約25倍である。
  • しかし今農林中金は最大の挑戦すべき局面に面している。それは日本が農業システムを変革中だからである。それは農林中金の主な顧客である小規模の農家が持つ農地を集合化するシステム~農業生産法人化~が進んでいるからだ。他の銀行はこれをビジネスチャンスと見て農業ビジネスに対する融資を始めている。最近まで商業銀行は農業への貸付をリスクが高く、低収益のビジネスと考えていたので、この分野は農林中金の独壇場だったが、今農林中金にとって新しい競争相手が現れた訳だ。
  • 今のところ農林中金はバブル期と同様再び他行と反対の戦略をとろうとしていると見受けられる。商業銀行は農業ビジネスへの融資に動き出したが、農林中金はフォーカスを変えている。農林中金は現在金利リスクより信用リスクを取っている。例えば米国の資産担保債券に12兆円の投資を行なって米国への投資を倍にした。また単独主義を捨てみずほ証券と提携したり、三菱UFJに出資してカードビジネスの改善と拡大を図っている。
  • 農林中金は賢い農夫の様に畠が混んできたので鋤の方向を転換しようとしている。

農業法人のことを調べようと思って社団法人 日本農業法人協会のホームページを見てみた。http://www.hojin.or.jp/ そうすると三菱東京UFJのバナー広告が目に入ったのでまずそちらを見る。http://www.bk.mufg.jp/chusho/info/050819.html これは同行が農業法人協会と提携して一法人当たり最大5千万円、最長5年、金利は2.55%以上で融資を行なうというものだ。なるほどエコノミスト誌が言うように大手都市銀行が農業ビジネス融資に積極的になっている。

さて農業法人だが法人形態から「農事組合法人」と「会社法人」に区分され、事業のために農地の取得が可能かどうかで「農業生産法人」と「一般農業法人」に区分される。農業法人の数は平成13年現在6,213法人で、形態は有限会社が一番多い(約4分の3の4,628社)。

資金需要の市場規模だが仮に全農業法人に5千万円の融資が発生するとして、5千万円の6千倍で約3千億円となる。また平成17年に農業法人協会が会員に行なった調査で約360法人の回答者から平均的な年間設備投資額が5.5千万円程度という回答を得ている。従って今のところ3千億円程度の規模の市場と見ておいて良いのかもしれない。また同調査によれば畜産業従事者の景況感は明るいが稲作等は暗く、農業全体の景況感は先行きに少し明るさがあるものの、足元は曇りというところだ。この市場で数十兆円の資金を有する大手銀行が貸出競争でもすればたちまち儲からなくなるというのが農林中金の読みなのかもしれない。

ところで先程のエコノミスト誌の記事の中で農林中金がバブル期に上手く行ったのは長期的思考と良いタイミングと幾らかの幸運の混合物だったというくだりがあった。金融ビジネスも中々難しいものなのかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本は美しい~ブロガー冥利

2006年02月22日 | うんちく・小ネタ

昨日私のブログ「冬の西沢渓谷を撮る」にある人から「日本は地球上一番美しい国ですね」というコメントを頂いた。大した写真力のない私だが、私の写真が少しでも日本の美しさを伝えることが出来ていたとしたらブロガーとして冥利に尽きると思う。

南北に長い列島、複雑な地形の山岳地帯、豊かなな植生、冬の豪雪、これらが相まって日本の美しい山と渓谷を形作る。その美しさのホンの一部でも私の写真を見る人に伝えたいと思う。

自然を大切にし、自然の中に生きる喜びを持つ人達と日本の美しさを共感しそれを守るために何かができれば本当に幸せだと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大量保有報告ルール変更に反対の声

2006年02月21日 | 株式

ライブドアや村上ファンドの問題に端を発して株式の大量保有報告ルールを変更しようという動きがある。これに対して外人投資家等が大反対をしていると記事をウオール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。大量保有報告ルールの変更は外人投資家の日本株買いにブレーキをかける可能性があるだけに注目しておきたい話題だ。

まず大量保有報告ルールとは何か?現在証券取引法第27条の規定で「上場又は店頭登録している会社の株券等を保有する者については、株券等保有割合が5%を超える場合に、大量保有報告書の提出が必要になる」というもので頻繁・大量に株式を売買する証券会社・銀行・信託会社等については特例報告ということで3ヶ月毎の報告となっている。今回金融庁が考えている変更案はこれを2週間程度に短縮しようというものだ。これは一見証券市場の透明性を高めるため有効な策とも見えるが機関投資家側から強い反対がある。以下ウオール・ストリート・ジャーナル紙の主旨を紹介しよう。

  • 報告ルールの変更提案の背景は、日本企業が敵対的買収やアクティビストのファンドに対する懸念を増加させているからだ。幾つかの企業の経営陣は村上ファンドから警告を受けている。変更提案の支持者は村上ファンドのようなファンドは大量報告の特例措置を利用し、油断している会社の株を3ヶ月間の間に買い上げていると言う。
  • しかし改正提案は金融サービス業の経営層に大きな騒ぎを起こした。彼等はこれは数少ない特徴的な買収ファンドに対する反射的な対応だと考える。株を購入しても発行会社の経営を意図しない機関投資家にとって事務作業が増えるからである。更に機関投資家は新しいルールがポートフォリオの中身を異常に早い段階で開示することで運用成績を悪化させる懸念を表明する。というのは機関投資家が売買等のポートフォリオの中身や手口を早い段階で開示すると手口を真似る投機家が出てきてその結果運用成績が落ちるからである。これは特に流動性が低い中小型株の場合顕著である。
  • 野村資本市場研究所の大崎氏は「日本企業は近年企業統治面で大きな改革を行なってきたが、このルール変更は少し後戻りだと言わざるを得ない」「この変更は他の投資家のコストにおいて株式発行企業が敵対的買収を抑えようというものだ」と言う。
  • ルール改正に対する批判者は、新ルールが海外の大型ファンドの日本株投資を抑制する可能性があると言う。外国ファンドが日本から撤退することはないにしろ、彼等は所有株を発行株数の5%以下に留めようとするかもしれないがこれは全体として取引量を低めることになる。
  • 近年の日本株ブームの最大の牽引車が外人投資家であるので、外国勢の投資が減少することは大きな影響を与える可能性がある。因みに昨年の国内3取引市場のおける外国勢の取引高は45.1%を占めた。
  • 特に米国の投資家が声を大にして新しいルールに反対している。彼等は日本の現在の開示規則が既に他の国の規則よりはるかに厳しいものだと言う。米国では機関投資家は年1回開示をすれば良く、欧州では10%を越える株式を所有する場合のみ開示すれば良い。
  • 当該法案については通過することが広く予想されているが、在日米商工会議所を含む強い批判がある。同会議所は最近の紙面で新しいルールは「不幸にして不必要な」結果を生むだろうと述べた。また同商工会議所は「報告期間の短縮は日本に対するポートフォリオ投資を減少させ日本企業にとって重要な長期資本の資源を減らす可能性が高い」とも述べている。また日本の投資顧問業界も新ルールに反対している。

さて私の関心事は2つある。私は大量保有報告の短縮は不要という考えに立っているが、日本の政治家やマスコミがこの問題の本質をどこまで理解した上で正しい判断を下せるかどうか?ということが一つ。つまり当局が資本市場のメカニズムを理解しているかそれとも一部の買収ファンドの飛び跳ねた動きを過大に問題視するかどうかという踏み絵にもなる。

次に法律改正となった場合の株式市場に対する影響である。簡単にいうと発行残高の少ない中小型株や新興市場への資金流入は細ると考えても良いのではないか?また金融機関の株もかなり外国ファンドが保有している。これからは外人投資家比率の推移は注目点だ。

それにしても米国は「金融立国」を標榜している訳だが、この一連の動きを見ても資産運用会社等の金融機関と商工会議所や政府それとジャーナリズムの連携は見事である。米国の主張の良し悪し~今回私は良いと思うが~は別として日本も見習うべきところがあるのではないか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の西沢渓谷を撮る

2006年02月19日 | 

18日土曜日は晴れていたので撮影道具を担いで西沢渓谷に入った。西沢渓谷の手前のダム湖広瀬湖に立ち寄る。

Kobusidake 広瀬湖は全面氷結してその向こうに甲武信岳が見える。ところで甲武信岳はワードにかな入力しても自動変換しない。100名山の一つであるが地味な山の故だろうか?

さて西沢渓谷入り口には10台弱の自家用車が留まっている。沢の散策か又は凍った滝登りの人がいるのだろう。快晴の道を西沢渓谷を目指してゆっくりと歩く。二股のつり橋を渡りながら昔ルートを間違えながら遡行した「釜の沢」のことなど思い出す。一人の山歩きはさまざまなことを考えながらゆっくり歩けるので楽しいものだ。コガラが木の皮をついばんでいるの写真を撮ろうとカメラを出すがその前に飛び去ってしまった。道が急傾斜の階段に変わると最初のビューポイント 大久保の滝が見える。

Ookubotaki_1  夏は地味な滝だが氷結すると中々見ごたえがある。

次に竜神の滝で写真を撮る。色温度を5300k(太陽光)にして少し青みを出してみた。

Ryuujinn_1

しばらく歩くと母胎淵という甌穴の中に雪玉が溜まって浮かんでいる珍しい光景があった。Yukiwanntan

全体の様子は次の写真のとおり。

Yukiwantan2_1

かえる岩を過ぎてしばらく行くと谷が大きく左に曲がるところがある。ここで流木に着いた氷が綺麗なので何枚か写真を撮る。

Ryuuboku1_1

さてこの辺りから登山道に氷結しているところが出てくるので12爪アイゼンを着ける。12本爪アイゼンはこの程度の山道ではオーバースペックなのだが、これをつけると山屋の気分になり足元からピンとしてくるので私は好きだ。基本的に私は軽アイゼンというものをほとんど使用したことがない。軽アイゼンで歩ける様なところはビブラム底で歩き、バランスを鍛えるというのが私の考え方だ。

さてしばらく歩くと方丈橋に着く。ここは七つ釜五段の滝が落下しているところ。西沢渓谷随一の景勝だ。急な坂を登り切ったところが今日の終点。ここに柵があり冬季はここから先の入山を禁止している。柵の手前から五段の滝の下部を写真に撮って引き返すことにする。

Hudoudaki1

Hudoudaki3

帰路は雪と氷が作り出す造形の妙を写真に収めながら静かな谷を下る。

下の写真は水中の石にかかるしぶきでつららが出来たものだ。

Kourinoha

次に水面ぎりぎりの雪の縁からぶら下がった小さなつらら。目を凝らせば谷には小さな芸術が溢れている。

Yukinoasobi

つららをホワイトバランスを操作して撮ってみた。この写真は色温度を4000Kに設定して撮影したがやや幻想的な雰囲気が出ていると思う。

Turara2

写真を撮りながら一人のご年配の写真愛好家と声を交わした。その人が言うには先週も来たが雪が減っているということだ。恐らく西沢渓谷には頻繁に通う写真愛好家が沢山いるのだろう。こういう人達にとって冬の西沢渓谷は春秋の喧騒がなく落ち着いて写真がとれる良い場所である。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党は無恥の集まりか!

2006年02月17日 | 政治

民主党の永田某議員が「ライブドアの堀江前社長が自民党の武部幹事長の次男に送金を指示した」と指摘した問題がある。これに対し武部幹事長も堀江前社長も否定している。小泉首相は民主党に根拠があるなら証拠を出せと言っているが民主党の前原代表も永田議員も証拠は提示できないという。

無論私は送金指示があったかどうか知る由もないし特に武部幹事長の肩を持つ立場にもない。しかし証拠を示すことなくかかる問題を国会の場に持ち出すことは余りにも不見識ではないか?このようなことが国会議員の特権として許されるものだろうか?

もし永田議員が証拠らしきものを得ているなら司直の捜査を求め警察か検察へ告発すれば良いのである。これなら確証でなくても構わないだろう。しかし国政の場に持ち出す以上は確たる証拠が要るのは当然だ。挙証責任を何と考えているのか。滅多にこんな口調でブログは書かないのだけれど、民主党の余りのレベルの低さに憤懣やるかたない。たまたま前原代表というのは私の高校の後輩(年が離れているので面識はない)だが、真面目にこんな議論に巻き込まれているとしたら後輩としてShameというしかない。

もしこれが誣告であれば永田議員は当然のこと前原代表も責任を取って直ちに議員を辞職するべきである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする