金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

インターネットのお蔭で休みが取り難くなったアメリカ

2016年06月15日 | デジタル・インターネット

昔アメリカに勤務していた頃、アメリカ人のスタッフが徹底的に有給休暇を使うのに驚いたり感心したことがある。

そのアメリカで有給休暇の取得率が低下しているという記事をWSJで読んだ。米国の長期的(1976年~2000年)な平均有給取得日数は20.3日だったが、2000年頃から取得日数が減り始め、昨年は16.2日になったということだ。

記事によると「55%の人は有給休暇を残した」ということだ。これを読むと多くの日本人は45%の人は有給休暇を完全に取れたから良いんじゃないか?と思うだろうが、経済的には大きなインパクトがあるようだ。有給休暇を取って旅行したり日曜大工に励む人が減ったことで、米国経済から23兆円(2,230億ドル)の消費が奪われたと記事は述べている。

その犯人は誰かというと、スマートフォンやインターネットが主犯ということだ。つまり常に会社や顧客と繋がっていることで休暇が取り難いと感じる人が増えているという。また職場に戻ってきた時、仕事の山が待っているのが嫌だと感じて休みを敬遠する人もいるのだろうと記事は述べている。

ところでエクスペディアが世界26か国の「有給消化率」を調査したサイトがある。https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2015/

それによると日本の有給消化率は2年連続下から2位だった(最下位は韓国)。エクスペディアの調査によると、有給取得に罪悪感を感じる人の割合は日本は18%でダントツに高い(韓国・米国などは10%)。

そもそも「有給消化」という言葉がいけないと私は思う。消化というと「在庫消化」のように、不要なものを無理やり処分するというマイナスのイメージがつきまとう。有給は消化するものではなく、利用するものなのだろう。本来は。

エクスペディア調査は日本人が有給休暇を取る時後ろめたく感じる理由として1位「人手不足」2位「お金がない」3位「自営業で時間がない」という理由を挙げている。WSJの調査と切り口が違うので単純比較はできないが、もし米国で全従業員がフルに有給休暇を取得すると、その穴埋めのために160万人の雇用が生まれるだろうと調査結果を紹介しているから、米国でも正社員の人手不足が有給取得率の低下に影響を与えているのではないか?と私は推測している。それと正社員の仕事が高度化・細分化して休みの間の代替が効き難くなっていることもあるのだろう。

悩ましい問題だ。だがここは「米国でも有給取得率が低下しているので日本の有給取得率が低いのも正当化される」などという考え方を持つべきではないだろう。

個人消費の低迷に悩む日本の一つの解決策が有給取得率を高めることにあると私は考えている。

日本の場合はもう少し正社員の比率を高めて、人手不足感を緩和する余地があると思う。賃金全体の水準が上がるし、有給休暇も取得しやすくなる。

休暇を取ってリフレッシュする・・・という有給休暇の有効活用(消化ではない!)が進めば、創造性が高まり、企業の生産性も高まると思うのだが、この手の話は「総論賛成・各論反対」で終わるのが残念だとかねがね思っているのである。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 苔むす霧ヶ峰・観音沢を歩いた | トップ | 定期がないという楽しみ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

デジタル・インターネット」カテゴリの最新記事