4月4日夜東京電力は福島第一原発の施設内に溜まっている低レベルの放射線物質に汚染された水を海に放出するという措置に踏み切った。
低レベルの汚染とはいえ、放出が予定されている汚染水は法律で規制されている放射能の100倍のレベルだ。
何故低レベルの汚染水を海に放出せざるを得なくなったか?というと、2号炉付近から流出する高レベルの放射能汚染水を貯える設備がないので、低レベルの汚染水を海に放流することとなった。高濃度の汚染水の放射能は、法定限度の10,000倍である。
放射能の汚染度が法定の100倍のレベルというのは、どれ位健康に影響があるのか?というと、その付近の魚を1年間毎日食べて、0.6ミリシーベルトの放射線物質を摂取することになる東電は発表している。これは1年間に放射能を浴びても差し支えないとされる1ミリシーベルト以下の水準ではある。
東電は汚染水を貯えるためにタンクの手配をしているが、プラントサイトに到着するのは4月中頃の見込みで喫緊の事態に間に合わない。
「悪貨は良貨を駆逐する」ではないが「高濃度汚染水は低濃度汚染水を駆逐する」ということなのだろう。だが一体汚染水の海への放出はどれ位続くのだろうか?日本政府は福島原発から漏れる放射線で汚染された水の流出を止めるには、数ヶ月かかる述べているが、まさかそれまで海への放出が続くとは思いたくないが・・・・
ニューヨーク・タイムズは東京海洋大学名誉教授・水口憲哉氏のコメントを紹介している。「海水中の放射能物質のレベルは増加している。このことは問題の悪化が続いていることを意味する」
放射能で汚染された魚や魚介類がどれ程人体に影響を持つか?ということになると今のレベルでは実害はそれ程高いとは思われない。だが漁業にはすでに深刻な影響がでている。
タイムズは千葉県の夷隅の漁連の責任者の話を紹介している。それによると漁連では収穫した魚の放射能を測定したが放射能は検知されなかった。しかしイナダの値段は半分以下に下落している。
漁連の責任者は「政府は健康上問題はないと言っているが、一般大衆が非常に警戒心を抱いていることは間違いない。我々は傷ついている」と述べる。
NHKも東電や国の説明責任を求めている。
低レベルとはいえ放射性物質を海に放出するという重大な決断が何の前触れもなく、急に発表されたうえ、そこまでせっぱ詰まった状況だったのか、国や東京電力も4日の記者会見で、十分に説明しきれていません。事故の発生から3週間余り、みずから放射性物質を海に放出するという異例な事態となっており、国や東京電力には、海への影響の監視の強化や、汚染された水の放出をできるだけ抑えるための対応が急がれるとともに、こうした措置を取ったことへの詳しい説明が求められます。
東電による放射能低汚染水の海への放出は、環境や海産物に対する実害よりも、日本の海産物全体ひいては海産物全体に対する消費者の忌避感を高めるという非常に大きな影響をもたらすことになるだろう。
昨夕唐突に「低濃度放射線汚染水の海洋投棄」が決定された旨のFlash newsを見て我が眼を疑いました。
大気中の放射線放出と海洋投棄のいづれを選択しなければならない状況が来て、その場合は後者を選ぶことになるだろう、、と友人と話していましたが、その通りになりました。
現場としては、切羽詰った判断だったのだろうと思いたいですが、海洋投棄(決定)の報道を東電が最初に行ったことには強い違和感を覚えたのは私だけではないと思います。 これは、政府発表にすべきでした。
福島以南の漁業への影響(福島、茨城漁連から抗議文が出された)と近隣諸国への影響(案の定、韓国、ロシアから事前通告がなく苦言が呈された)を政府は予測出来なかったとすれば、原発事故の収束の目途が全くなく、当事者能力の欠如を世界に示したものでしょうし、これまで支援してくれた各国の日本を見る眼も大きく変わると懸念します。
今からでも遅くないので、福島原発事故の記者会見、報告は一本化すべきでしょう。 昨日まで、東電を応援していましたが、非常に残念です。
ちなみに、情報が錯綜していて難しいのですが、低レベル汚染水は6.3から20ベクレル/cc、高濃度汚染水は1,1160,000ベクレル/ccという報道から計算すると、放射能の濃度の違いは100倍ではなく10万倍ということになります。
つまり、今まで漏れていた高濃度汚染水を止めるために、10万倍薄い低レベル汚染水を放出することにしたということですね。