参院選が始まった。最大の争点は物価高対策だ。与党は国民一人一人への給付を打ち出し、野党は消費税減税で足並みをそろえている。
総務省統計局が発表している5月の総合物価指数は前年同月比3.5%上昇。2020年を100として111.8となっている。
変動率の高い生鮮食料品及びエネルギーを除く総合物価指数いわゆるコア・インフレ率でみると前年同月比3.3%の上昇で2020年を100とすると110.0に上昇している。
生活実感として物価高は感じるが、少し冷静に考えてみると5年間で100の物価が110になるというのは、実は政府や日銀が従来から目標にしていたインフレ率が達成されたに過ぎないということもできる。
5年間で100の物価が110になるというコア・インフレ率は、年率で計算すると1.92%の上昇である。また総合物価指数ベースではインフレ目標率2%を少し上回る2.27%になる。
政府や日銀がインフレ率2%を目指して、いわゆるアベノミクスを実施したのは20131月のことだった。
だが政策は実施したものの、政府はインフレ率が2%になればどうなるか?どのような対策を立てる必要があるのか?ということを真剣に考えていなったのだろうと私は考えている。
だがコロナ後の世界的なサプライチェーンの綻び、ロシアのウクライナ侵攻、世界的な異常気象など政府が想定していない原因によりインフレ率2%は達成されてしまった。
しかし政府はインフレ率が2%になればどのような対策が必要か?ということを「実現性の高いシナリオ」として考えてこなかったので、今回の選挙公約のような論理的に破綻している政策を掲げざるを得ない状況になっているのだ。
「論理的に破綻している」というのは、自民・公明の「子どもや住民税非課税世帯の大人に1人4万円、その他の人に1人2万円を給付する」という公約と石破首相(自民党総裁)がいう「ばらまきではない。本当に困っている人に重点化する」という説明とどう考えても整合しないからである。1人2万円を配ることをバラマキといわなければ、何がバラマキだろうか?
私は本当に困っている人に給付を行うことに反対している訳ではない。むしろ大賛成だ。物価上昇が困っている層によりシビアな影響を及ぼすことは間違いない。問題は「困っている人」を公平に抽出する方法を編み出してこなかったことにある。
その問題を含めて、インフレ率が2%になったときの対応を考えてこなかったことが、政府の、そして多くの企業の、あるいはかなりの家計の問題なのだ。家計ベースでいうと、インフレヘッジ力のある資産構成を積極的に作るべきだったのだ。
ところで火中にいると冷静に聞くことが難しいが日銀は「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025年度に2%前半となったあと、2026年度は1%台後半、2027年度は2%程度となると予想される」と述べている(経済・物価情勢の展望)。
まるまる信じる積もりは毛頭ないが、政策というものはこの瞬間だけにとらわれて議論すると間違うと思う。もちろん緊急事態には緊急的な対応が必要だ。
もし食料品を中心とする今の物価高を困っている人にとって緊急事態だと判断するのであれば、本当に困っている人にだけ給付を行う政策の可否を国民に問うべきである。「バラマキではありません」と言いながら1人2万円を配るのは、論理破綻以外のなにものでもない。
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