ブルンバーグは、著名なコンサル会社マッキンゼーが、世界の銀行の過半は脆弱すぎて次の不況を乗り越えられないだろうと昨日発表した産業レポートで述べていると報じた。
マッキンゼーは、現在世界は景気サイクルの最終局面にあり、企業基盤の弱い銀行は不況の影響をもろに受けると見ている。
リーマンショック以降銀行業界には、フィンテック系の新規参入者やアマゾンなど巨大IT企業の参入が目立っている。
これらの新規参入者は預貸業務のような伝統的な業務を目指すよりは、クレジットカードビジネスのように収益性の高い業務を伸ばすことに注力している。
また現在の金融業は情報産業化し、システム投資の多寡が将来の勢力地図を大きく変える可能性がある。
しかしフィンテック系の新規参入者がイノベーションのためにシステム予算の70%を投下しているのに比べ、既存の銀行はその
半分の35%しか投入できないとマッキンゼーはいう。
従来の銀行業には儲からなくてもやらざるを得ないことが多過ぎるのだ。
この逆境を乗り越えるにどうすれば良いか?
マッキンゼーは2つの方法を示唆する。一つはノンコア業務のアウトソーシングによるコスト削減であり、もう一つは合併により企業規模を拡大することである。
銀行を取り巻く環境は厳しい。一つは日本や欧州の場合、マイナス金利が常態化し、銀行は金利差で基礎的な収益を上げることができなくなったことだ。また日本の場合は消費税引き上げを起因にキャッシュレス決済が加速しつつあるが、そのメリットは銀行よりもクレジットカード会社や物販会社・JR等に行きそうである。
銀行はキャッシュレス化のメリットをあまり受けることはできないとしても、キャッシュレス社会に向けて各種のシステム投資は求められる。銀行業自体が決済インフラのコストセンターになりつつあるというところだろうか?
日本の銀行は投資信託などのリスク商品の販売による手数料収入で一息ついてきたが、この分野でも逆風が目立ち始めている。
世界的に運用報酬や有価証券売買の委託手数料を引き下げる動きは強まっている中で、日本にもじわじわと影響が及んでくるだろう。
とネガティブなことを書き綴ったが、私なりに一つの処方箋も提案したいと思う。
それは何か?というとコンサル力で勝負することである。キャッシュレスなど決済の世界は、規模とテクノロジーの世界だ。覇権を取るのは企業規模とユーザ数の多い会社であり、IT資源(人材・資金など)が潤沢な会社だ。
多くの銀行にとってこの分野で覇権を取るのは難しい。銀行が活路を見出す余地があるとすれば、コンサル特に超富裕層未満の個人客に対するコンサル業務である。超富裕層は外資系証券会社等に取り込まれており、邦銀の金融知識レベルで太刀打ちするのは難しい。よってそれ以下の富裕層がターゲットになるが、これとて生易しい話ではない。
どれだけ現状に危機感を持っているか?が問われる時代が続くだろう。