金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

オープンセミナーで「相続学」を語ります。

2017年12月15日 | ライフプランニングファイル

来月(2018年1月)一般社団法人 日本相続学会のオープンセミナーで「相続学」のアウトラインを語ろうと思っています。

えっ、相続学なんて学問分野あったけ?と思われる人が多いと思います。「相続学」が学問分野として確立されているとは私も思いません。

しかし現在では〇〇学というのはちょっとしたブーム。研究・工夫という程度の意味で「学」という言葉が使われています。代表的なところでは「整理学」でしょう。「整理学」という言葉がいつ使われだしたかはっきりしたことは知りませんが、30年ほど前に外山滋比古氏が「思考の整理学」という名著を書いておられますので、これが整理学という言葉の走りかもしれませんね。

ということで「相続学」というのは「相続の研究・工夫」という程度の話だと考えて頂いてよいでしょう。

話のテーマは大きく分けて2つあります。一つは相続を「次世代への財産移転の手段」ととらえ、生前贈与などを組み合わせながら、効率よく計画的に財産の移転を考えるという話です。エステートプランニングの話です。エステートプランニングは日本語では「相続設計」と訳され、節税対策を手助けする会社のキャッチフレーズになっていることが多いと思います。

エステートプランニング発祥の地・アメリカでも節税は大きなトピックですが、エステートプランニングの目的は節税ではありません。

エステートプランイングの目的は「自分が残す財産に自分の志を引き継いで働いてもらう」を通じて「尊厳ある人生を全うする」ことにあると思います。このためエステートプランイングは「遺言」「効率的な遺言の方法である生前信託」「任意後見に関する委任状」「終末期医療に関する委任状」「自分の葬儀に関する指図書」を主な構成文書としています。

「尊厳ある人生を全うする」ということは平たく言うと「立つ鳥跡を濁さず」の心構えでしょうね。

もう一つは日本で効率的なエステートプランニングを達成するために、法改正を伴う制度変更が必要という提言です。

その一つは「パソコン作成の自筆証書遺言を有効として認める」ことです。現在パソコンで作成した遺言書を有効にする方法は「秘密証書遺言」だけです。自筆証書遺言については財産目録の部分についてパソコン作成を認める方向で法改正が検討されています。ただし法改正が行われたとしても、本文は手書きでなければ有効ではありません。本文のパソコン作成を認めない理由は「偽造される可能性がある」ということのようですが、これは全くおかしな理屈です。

恐らく世界の先進国の中で「手書きの遺言書しか認めない」というのは日本だけでしょう。日本以外の国では遺言書は偽造されていないのでしょうか?

遺言書のパソコン作成を認めると「テンプレートに穴埋め」方式で簡単に遺言書を作成することができます。テンプレートに色々な工夫を凝らすと「その遺産分割方法ですと〇〇さnの遺留分を侵害しますよ」といったアラームを出すことが可能です。

膨大な相続財産を持っている人や家族関係が複雑な人は専門家のアドバイスが必要ですが、それ以外の人ならパソコン作成の遺言書を認めることで随分遺言書は普及すると思います。

もう一つの提言は「民事信託の受託者に法律専門家やNPO法人を積極的に加える」という提案です。現在の法制度でも法律専門家等が受託者になることは可能ですが、報酬を受け取ることは信託業法違反になります。ということで実際には法律専門家が受託者になっているケースはまずないと思います。

しかしこれから高齢化が進み、受託者になってくれる家族がいない人も増えてくると思います。そのような方が民事信託を希望する場合に道を開いてはどうかというのが提言内容です。具体的には一定条件の民事信託の受託を信託業法の適応除外にするということでしょうか?

話の概要は固まりましたので後は肉付け作業です。

 

 

 

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