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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「老後資金、細く長く使い続けるための処方箋」を読んで

2016年12月15日 | ライフプランニングファイル

日経新聞をネット購読しているので、時々色々な記事の案内がメールで届く。

今日届いたのはマネー研究所の「老後資金、細く長く使い続けるための処方箋」という記事(著者はファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん)。

処方箋の骨子は「少しでも長く働く」「生活費を抑える」「貯蓄を取り崩すタイミングを計画する」というごく当たり前のものだ。いわば健康のためには適度な運動が良いというアドバイスのようなものである。

恐ら健康と運動に関するく多くの人の悩みは「健康のために運動が良いことは分かっているが長続きしない」というものではないだろうか?このことはスポーツクラブの会員のターンオーバーが非常に多いことからも推測される。

運動に関する処方箋は「どうすれば長続きする運動を行えるか?」ということが本筋であり、老後資金に関する処方箋の本筋は「どうすれば長く働くことができるか?」と「老後資金の貯蓄をどう考えるか?」という点にある。ただしこれらの点について万人向けの処方箋は実は役に立たない。

何故ならシニアライフは現役時代よりもはるかに多様だからだ。どうのように多様か?ということを少し考えてみよう。

まず健康状態が違う。働き盛りの頃は少数の例外を除いて皆それぞれ元気であまり体の不調を感じることは少ないだろう。だが年とともにそれぞれの持病のようなものが顕在化してくる。持病の内ある部分は遺伝的なものであり、恐らく個人の努力で避けることができないと私は考えている。

次に人生の目標や価値観が違う。

シニアになって働き続けるということについていうと、スキルや人脈が違う。スキルというとパソコン・語学・専門分野における特殊技能が頭に浮かぶと思うが私は一番大事なものは、コミュニケーションスキルのようなヒューマンスキルではないか?と考えている。平たくいうと新しい職場などで誰とでも付き合っていけるという気安さのようなものが長く働く上でのポイントになるだろうと私は考えている。

貯蓄を取り崩すタイミングについては、サラリーマンの場合を退職金を一時金で受け取るか?年金で受け取るか?という分岐点における選択が大きい(選択制度がある場合の話だが)。

また子どもと同居するかしないかなどという家族構成の問題や持ち家の築年数、終の棲家に対する思い入れなどによっても変わってくる。

また資産運用力の違いも大きい。

サラリーマン時代というのは、かなりの人のベクトルが同じ方向を向ていただろう。無論極端な会社人間や趣味人間もいたと思うが、概ね会社・家族・趣味などのバランスにおいてそれぞれの会社や組織には共通するフレームワークがあったはずだ。共通のフレームワークがあるから組織は回っていったのだ。

だがシニアになるとそのようなフレームワークはない。フレームワークとまり人生の目標や価値観は自分で見出していかなければならないのだ。

しっかりしたフレームワークなしに老後資金を細く長く使うことを第一の目標にすることについて私は「馬の前に馬車をつなぐ」ような違和感を感じる。

無論目標や価値観は資金的な裏付けなしに実現できるものではない。夢は資金と健康という現実に拘束されているのだ。その制約要因を考慮しながら、自分の価値観を大事にして、価値観から外れるものを切り捨てていくというのがあるべき姿ではないだろうか?

以上のように考えてくるとライフプランは自分自身で作成するしかないのである。

この問題について私は以前電子本(アマゾン)で「インフレ時代の人生設計術~自立する人生の持続のために」という本を出版した。

本を書いた時はアベノミクスがスタートした時で物価上昇の兆しがあった。物価が上昇する中で年金の給付額がマクロ経済スライド制により抑制されることにシニア世代はどう対応するべきか?ということが大きな論点だが、その手法として自分でかなり細かい生涯収支予想を作成する具体的手法について論究した。

ただしその後日本ではインフレの兆しは消えたので全くアピール力のないタイトルになってしまったが(笑)。

 

 

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連銀金利引き上げは米銀株買いの好機

2016年12月15日 | 投資

昨日(12月14日)米連銀は政策金利の0.25%引き上げを決定した。これは既定路線上の話なので驚くには値しないが、来年3回の追加利上げが見込まれるという情報は想定外で株式相場・為替相場とも機敏に反応した。

ダウは118.68ポイント(-0.6%)、ナスダックは27.16ポイント(-0.50%)下落し、ドル円為替は117円台までドル高が進んだ。

連邦準備制度理事会の向こう3年間の金利予想の中央値を見ると2017年末が1.4%、2018年末が2.1%、2019年末が2.9%になっている。先のことは甚だ不確定だがもしこの予想が正しいとすれば、連銀は今後3年間政策金利を毎年3回づつ引き上げていくことになる。

政策金利の引き上げは企業や家計の借り入れコストを上昇させ、投資や消費が減速するだろうが、それが連銀の狙いである訳だ。

景気が減速するので金利引き上げは一般的に株式投資に逆風と考えられる。

しかし政策金利の引き上げでメリットを受ける業種もある。

その代表は銀行だ。何故銀行が政策金利引き上げのメリットを受けるかというと、政策金利が引き上げられると銀行は企業や家計に対する貸出金利は直ちに引き上げるが、預金金利は中々引き上げないので、利ざやが拡大するのである。

下のグラフは昨年12月政策金利0.25%引き上げ以降の預金金利の推移を示したものだ。

ウエルスファーゴとJ.P.モルガンは若干預金金利を引き上げているが、バンカメは全く引き上げていない。

バンカメのCEOモイニハン氏は先週の投資家カンファレンスで「今後の連銀の金利引き上げに対して昨年と同じ対応をとる」と述べている。

つまり預金金利は簡単には引き上げないということだ。

それでは機敏な預金者は預金金利の高い銀行に預金を預け替えするのではないか?という懸念もありそうだが、必ずしも総ての米国の消費者が金利に敏感でもなさそうだ。

実際金利の面では銀行預金より短期国債の方が有利だが、多くの消費者は資金を銀行に置いている。これは支店網の多い銀行に預金しておく方が支払面で使い易いからだ。

WSJによると今年の9月までの3年間で米国の国内預金は約19%増加している。

ということで米国の政策金利上昇で大きなメリットを得るのは米銀であることは間違いない。不確かなことが多い中(たとえば連銀が今後どれだけ利上げするかなどは景気と雇用にかかわってる)で、米銀の利ザヤ改善は最も確実視して良いことだろう。

増益銘柄を買うという点で「米銀株は買い」だといえる。大統領選挙以降バンカメの株は既に35%程度上昇しているが、まだなお大きな上昇余地を持っていると私は考えている。因みにバンカメ株は東証に上場しているので、日本の投資家が一番簡単に買える米銀株である。

ただし一部の大手証券会社では同銘柄をネット取引から外している(まったく怪しからん!と思う)が、簡単に買うことができる証券会社もある。

金利引き上げ効果を消費者に転嫁しないのは、せこいが我々消費者にとってできることはそれを逆手にとって銀行株を買うこと位だろう。

 

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