9月の3連休の中日は高山にいた。前日乗鞍山麓五色ケ原を歩き、この日は高山を散策して帰京した。私にとって高山の町は約30年振りである。正確に言うと前回高山に来た時宿屋でモハメッド・アリとジョージ・フォアマンのボクシングの試合を見ていたことを今でも覚えている。調べてみると試合があったのは1974年10月のこと。実は私はこの時手強い岩壁を連ねる滝谷を遡行するため新穂高に向かうところだった。滝谷の記憶は遠くなってしまったが、高山のことはアリの記念すべき試合とともに心に残っていた。高山の街並みが昔と変わらないたたずまいを保っていることがすぐ分かり僕は本当に嬉しかった。
高山で目に付くものの一つは朝顔である。家の軒先を飾る朝顔はどれも立派で美しい。高山陣屋の脇に咲く朝顔も美しいので一枚写真に収めた。
秋はそこまで近づいているが満開の朝顔は晩夏を惜しむかの様に鮮やかだ。
高山の街並みは美しい。その美しさの原因の一つは僕は幾何学的なバランスの良さにあると思う。造り酒屋の軒先にぶら下がった杉玉の円と古い門構えの四角の好対照もある種の緊張した美観を生んでいる。玄関前を流れるきれいで勢いのある水流も凛としていて良い。
高山の古い街並を歩くと余り買い物好きではない僕でも1,2時間はウインドーショッピングで過ごせそうだ。店先を覗いて歩くのが好きな娘や家内を帯同すれば大変なことになってしまうだろう。
ところで昼飯はある人のアレンジで料亭「須さき」http://www.ryoutei-susaki.com/index.htmlで頂いた。この「須さき」は第二代高山藩主金森可重の長男、金森宗和が始めた茶道宗和流の流れをくむ料理を出すとのこと。詳しいことは分からないがとにかく吟味され尽くした材料と手のこんだ調理方法には感心するほかない。
昼食後列車までの僅かな時間を利用して日下部民藝館に行く。古くてしっかりした建物や立派な什器備品には飛騨の豊かさを象徴している。
この民藝館の入り口に近いところで秋の高山祭のため屋台の準備がされていた。町の名前からすると、屋台は豊明台か鳳凰台だろうと思うのだが確かなことはわからない。
秋の高山祭は10月9,10日である。秋はもうそこまで来ていると思いながら短い高山の旅を終え僕らは名古屋に向かう列車に乗った。