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破茶滅茶総理(3)…「コロナウイルス問題」(d)

2020年05月24日 | 政治・経済
破茶滅茶総理(3)…「コロナウイルス問題」(d) 
破茶滅茶総理終わりの始まり…(5)

ケーキやチーズをよく食べるのにフランス女性にスリムな人が多い矛盾を指してフレンチ・パラドックスと呼ぶが、狭い国土に1億3千万弱の人間が犇めく超過密国家、それが集約される東京都に於いてさえ、新型コロナ感染者の死亡率が圧倒的に低いことから半ば畏敬の念と疑念をない交ぜ「ジャパン・パラドックス」と呼ばれている。
感染症対策として特段世界に誇れる施策が無いにも拘らず、このような低い数字は統計やカウントの方法に問題があるのではないかとの疑問の声も根強い。米外交誌フォーリン・ポリシー電子版は14日、東京発の論評記事として、日本の新型コロナウイルス感染対策は生ぬるく悉く見当違いの様に見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「奇妙にもうまくいっている様で不思議だ」と伝えている。
 ウイルス検査を受けた人は人口の0・185%、ソーシャル・ディスタンシングも中途半端。国民の過半数が、政府の対応に批判的だ。日本のPCR検査実施数は国際水準を大きく下回る。5月14日までに実施された検査数は約23万件、アメリカの2・2%だ。外国人女性が検査を行えるまで日本の病院をたらい回しにされた体験談が外国メディアによって報じられると、国際社会は震え上がった。だが日本は、感染死亡率が世界で最も低い部類だ。直接死者数は5月14日現在で687人。100万人あたりの死者数は、日本が5人、アメリカは258人、スペインは584人。防疫政策が評価されたドイツでさえ94人だ。(但しアジアの中では最悪のフィリピンに次ぐ悪さだ。)超過死亡数(コロナウイルスによって生じた医療崩壊が原因の死亡者)を含めても、左程膨れ上がるとは思えない。これは日本がラッキーなだけなのか、奇妙と言うほかは無い。外出制限も緩い、緊急事態宣言が発令されても、明治憲法下の苦い経験から現行憲法では、国家権力が制限されており、政府が自宅待機を強制したり、企業や店舗に閉鎖命令を発令したりすることはできない(強制していないので補償の義務もないと言う逃げ口実に使われている面もある)。結局の所、日本は公衆衛生の意識が高い社会、又相手を気遣い、人との距離を取り、握手を避け、清潔を心掛ける日本の文化は、感染者数を抑える上で大きな役割を果たしたようだ、と結論付けている。
この問題については色々な仮説が述べられている。日本では手洗い・洗顔・うがい・マスク着用等はコロナ問題発生以前から普通に行われ、生活習慣化されて来たし、土足禁止・入浴好き、ハグ・握手の習慣もなく、口角泡を飛ばす様な喋りや議論は下品とされる等、文化や生活習慣もプラスに働いてきた可能性がある。又子供の時からラジオ体操に接し、長じても健康オタクと呼ばれる程、メデイアや公的機関までが懇切丁寧な健康情報を提供し、巷には健康食品・健康グッズが氾濫している。更には日本の医療水準の高さと、様々な問題を内包していながらも、其の公的な医療保険制度のお陰で、受けられる医療の質に対して貧富の差が影響する度合いが、比較的低いと言うことが幸いしているのも事実であろう。

この様な国民性等に基づく社会力の他に、注目される仮説としてBCGワクチン接種の効用について、毎日のように世界中で論文が発表されている。今の段階で確証はないが、BCG接種を義務づけている国の新型コロナ死亡率が低いという相関関係は統計的に有意だという結果が多い。G20諸国で、人口100万人あたりの死亡率を計算してみると、最上位のイタリア・アメリカ・カナダはBCG接種を義務化したことがない国であり、下位の日本・韓国・中国・インドは今も全国民に接種している国だということが分かる。特にインドのように医療サービスが潤沢ではなく、公衆衛生も遅れている国でさえ大規模な感染爆発が起きていない。又2003~04年東北大学・老年内科による臨床研究の結果BCG接種は免疫反応性の低下した寝たきり高齢者において、肺炎発症の予防効果を有することが明らかにされている。しかし一方イスラエルではBCGは有効ではないとの研究も発表されており、これがコロナにも適用し得るかどうかは今後の研究に待たねばならないが、一つの手掛かりであることは間違いない。
又、東大・阪大等7大学の研究者が中心となってこの現象は生活様式や医療格差だけでは説明し切れない。人種の遺伝子の違いにより免疫反応に差が有るのではないかと言う仮説を基に、ウイルスの遺伝子だけではなく,宿主である人間側の遺伝子も調べる必要があるとして研究を開始したとも伝わっている。
この様な疑問に対しノーベル賞学者山中伸弥教授はどのような因子が作用しているのか、その因子を「Factor・ⅹ」と名付け、それを突き止めることはコロナ対策にも極めて有意義・価値あることだとし、注力したいと述べておられる。

扨て、この強力なウイルスに対する対処法として4つの方法が考えられる。
「一つは集団免疫の獲得」である。
コロナウイルスは1人の感染者が2-3人に感染を伝搬させると言われている(再生産数2-3)。この流行を終息させるために、もし人口の60-70%の人にコロナウイルスの免疫力があれば、1人の人から1人しか感染者を出すことができないため、やがて流行が終息すると言う考えに基づくものである。北欧諸国も含むヨーロッパの多くの国が全国的な封鎖措置を取り、厳しい移動規制を敷いているが、こうした中、スウェーデンは全国的な移動規制や外出制限をしないという独自路線を貫いており、ストックホルムの通りの人でもカフェの客入りも一見、普段通りだ。その「緩い」対策は、自己隔離・社会的距離の推奨・イベント禁止・休校措置程度で世界的にも論議を呼んできた。感染を防ぐため気分の優れない人、70歳以上の高齢者には自己隔離が勧告されているが、50人以上の集会が禁止されたのは3月29日からと遅かった。可能な範囲で在宅勤務と在宅学習が促され、バーやレストランは濃厚接触を避けるための座席があれば接客が認められている。この様なスウェーデン独自の対策は、ウイルスにさらされる人の数を増やすことで「集団免疫」を形成し、感染拡大の第2波を防ぐという作戦の一環だとされている。スウェーデン公衆衛生局の疫学者であるテグネル氏は4月下旬にBBCラジオの番組に出演し、「我が国の死者のうち少なくとも半数は、高齢者施設の中で集団感染した人々だ。封鎖をすれば感染拡大を阻止できる、という考え方は理解しがたい」と主張。スウェーデンの方法は「ある意味で功を奏している。私たちの医療システムが崩壊に追い込まれていないことがその証拠だ」と述べている。スウェーデンの社会契約は歴史的に「市民の国家への信頼、国家の市民への信頼、市民間の信頼」に基づくとされている。単身世帯の割合はスウェーデン50%超、日本は35%。イタリアやスペインは大家族の世帯も少なくなく人間関係の距離が近いが、スウェーデンはその対極にあり、信頼関係と共に集団感染戦略を選択し易い理由の一つであると考えられる。しかし3月末時点で、最大100万人が感染している恐れがあり、最大4月末には総人口の半分、500万人が感染している可能性がある」(ブリトン・ストックホルム大学教授)という警告も出ている。スウェーデン公衆衛生局はワクチンができるまではゆっくり感染を広げて、抗体を持っている人が壁となって感染を抑制する集団免疫を獲得しようと考えていたが、感染ペースが速く集団免疫を獲得するまでに何人の人が犠牲になるか分からないとして2000人以上の医師、科学者らがより厳しい措置を講じるよう求める請願書を政府に提出した。人の接触回数を減らせば感染は制御されるものの、経済は深刻な打撃を受ける。感染制御と個人の自由意思に基づく経済とは完全なトレード・オフの関係にある。当局者は「経済を守り、可能な限り店舗閉鎖や従業員の解雇を回避することも重要だ。そうしなければ、ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)がもたらす二次的なダメージによって多くの人が死ぬことになるか、医療に必要なリソースが減ってしまう可能性がある」と述べ、ソーシャル・ディスタンシングが守られないレストランには閉鎖を命じる可能性があり、50人以上の集会は禁止したと述べている。「壮大なる人体実験」との非難の中で政府関係者の確固たる信念とこれをサポートする国民。このウイルスに勝つには集団免疫しかない以上、2波、3波が到来した時の結果まで見定めないと成否を論ずることは出来ない。唯、スウェーデンが集団免疫を獲得する「国民の60%が感染者」に近づきつつあることは確かだ。

2つ目は「中国の国家統制型フル・ロックダウン」…中国共産党の威信を守るためなら情報操作や経済的な損失も厭わない強硬手段、「欧州の段階的ロックダウン」…欧州各国とも当初は自己隔離・社会的距離の推奨・イベント禁止・休校措置・都市封鎖を段階的に導入していく方針だったが、新型コロナウイルスの猛威の前に瞬く間に都市封鎖に追い込まれた。強制力はないが日本もこれに含まれる。

3つ目は「韓国・台湾やドイツのPCR検査のローラー作戦」、和歌山方式もこれに該当する。
都市封鎖に加え、PCR検査のローラー作戦を実施して見えない感染者をあぶり出し、隔離して感染を封じ込める。PCR検査のキャパシティーのない国には迅速検査キットを作る必要がある。韓国は欧州諸国とは違って個人のプライバシーを犠牲にして感染経路を虱(しらみ)潰しにしている。
結局この方法が「最も効果的に感染者抑数抑制をはかる事に成功し、早期経済活動再開に漕ぎつけ」、結果として「経済損失を低く抑えることに成功」したと言える。

4つ目はPCRローラー作戦を発展させたものである。抗体検査を行い(擬陽性回避の為2回以上)、抗体保持者かどうかを調べる。PCR検査を全員に実施し感染者を隔離する(擬陽性、偽陰性のリスクを減らすため数回の検査が必要である。重傷者は入院、無症状・軽症者は簡易隔離病棟へ)。この二つの検査によって隔離されなかった人は感染させる可能性が無いと考えられるので通常通り社会・経済活動を行うことが出来るし、感染者も回復すれば、短期間で社会復帰が可能である。「抗体検査・抗原検査・PCR検査」の検査コスト及び簡易隔離施設のコスト等財政負担は非常に大きいが、ロックダウン等による経済損失や国民の不安感払拭のメリットの大きさに比べれば極めて小さいと考えられる。
今後2波・3波で感染者が増える度に社会経済活動を抑制することは社会を大きく混乱させる。国民の不安・混乱を避けるには、この方式こそ20世紀型感染症対策であるとも考えられる。但しPCR検査後の感染を如何に防ぐか等技術的課題も多い。
更に経済活性化の為、インバウンド対策として「免疫パスポート」の検討も必要だろう。唯これについてWHOは「感染者は抗体反応を持つようになり、これが一定の防御につながることはあるだろう。ただし、その防御の程度や、その効果がいつまで続くかはまだ分かっていない」と指摘し警鐘を鳴らしているし検査の精度、更には国による精度のばらつき問題もあり、悪用対策等検討課題も多い。
何れにせよ日本の様にPCR検査を抑制した為、誰が感染者か分からない、サイレントキャリアーが家庭内感染、施設での感染、更には院内感染を招き治療も受けられず死亡する等、国民を不安に陥れるような事は絶対に避けるべきだろう。

初期段階で、政府や専門家会議は経済やオリンピック開催を重視するあまり、事態を軽視し思い切った対策を取らなかった。これがの日本の新型コロナ死者数(5月15日現在100万人当り)は5.6人、東南アジアの中ではフィリピンの7.5人に次いで多い結果を招いた。(韓国5.1人、中国3.2人)
専門家会議は基本に立ち返り徹底した検査重点策,人命尊重策に注力すべきだ。其の為には検査ができない理由を並べたてるのではなく、出来るように提言する方向に切り替えた方が良い。
台湾に倣って、モノづくり日本を誇る経済界の協力を得て緊急に必要な検査装置や材料、マスクや消毒薬、防護服、更には隔離用のテントやプレハブ住宅を早急に生産し政府が備蓄する。初期段階でまずこれをすべきだった。政府・専門家会議に残された課題は山ほどある。
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