これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

神社効果? ◇ええじゃないか◇

2008年09月11日 20時22分33秒 | エッセイ
 ドドンパ → フジヤマ → ええじゃないか の順で乗ったのは失敗だった。
『ここから1時間45分待ち』
 10時30分にようやくたどり着いたアトラクション、ええじゃないかは一番待ち時間が長かった。果たして、小6の娘、ミキは根気強く待てるだろうか?
「大丈夫だよ、お母さん。早く並んで乗ろう!」
 そういえばディズニーランドでも、3時間待ちのビッグサンダーマウンテンでじっと我慢できたのだっけ。
 イカ焼きに目を奪われている夫を残し、私とミキは列の最後尾についた。

 並びながらレールを見ていると、青い車両がスタートし、坂を上昇していった。ほとんどの乗客が履物を脱ぎ、靴下や裸足で乗っている。床や囲いがない手足ブラブラ型のアトラクションなので、落下を防ぐためだろう。
「サンダル脱ぐのはわかるけど、靴も脱いだほうがいいのかなぁ?」
 私は素朴な疑問を感じた。
「絶対脱いだほうがいいよ。ホームページに、足が頭よりも上にくる回数が14回でギネス記録って書いてあったもん。なくなったら大変だよ」
 夫に似て心配性のミキに説得されてしまった。たしかに、コースターの動きは相当激しい。用心するに越したことはなさそうだ。
 そのとき、ミキが思い出し笑いをしながら言った。
「お母さん、今日は靴下、大丈夫?」

 話は正月にさかのぼる。
 毎年、私はミキを連れて、新年のご祈祷を受けに近場の神社に行く。特に神道を信仰しているわけではないけれど、あのタイムスリップしたような衣装は魅力的だ。気が向けば正月以外にもお祓いに行くので、神社からは祭典の案内状が定期的に届けられる。一応、お得意様らしい。
 ちなみに、ミキは5年間仏教保育を受けているし、私はキリスト教会の日曜学校に通っていた。我が家は宗教に公平で、かつ一貫性がない。
 畳張りのご神前で正座をしていると、なぜか足の裏がスースーする。振り返って足元を確認してみたら、靴下が今すぐにでも破れそうなくらい薄くなっているではないか。足の裏の真ん中あたりが擦り減って網のようになり、そこから皮膚が透けて見えた。

 やだぁー、こんなの履いてきちゃった!

 幸い、私たちの後ろには誰もいなかったから、恥ずかしい思いはしなかった。
 ちょうど、神主がご祈祷を受ける人たちの住所、氏名、生年月日を読み上げている頃だったろうか。
 隣のミキに軽く触れると、ミキは黙ってこちらを見た。私も無言でミキに目配せし、視線を背後に移動させて言いたいことを伝えた。

 お母さんの足、ちょっと見てごらん。

 ミキは私の視線をなぞり、足の裏にたどり着いた。刹那、目尻が急激に下がり、慌てて右手で口を抑えた。そのまま下を向き、肩を小刻みに揺らして、必死でこみ上げてくる笑いと戦っていた。
 子供ながらに、厳かな雰囲気の中では静かにしなければいけないと理解していたのだろう。
 ご祈祷が終わると、ミキの肘鉄が飛んできた。
「何で、そんな靴下履いてくるのよ~!! おかしくっておかしくって、鼻水出そうになっちゃったじゃないか!」

 たしか、今日はおろして間もない靴下だったはずだ。一応靴を脱いで確認してみた。
「うん、今日のは大丈夫だね」
 ニヤニヤしながらミキが覗き込んできた。私はむしろ、普通の靴下を履いてきたことを残念に思った。
「もし破けてたら、絶対ウケたのになぁ」
 
 富士急ハイランドの待ち時間は、さほど正確ではない。私たちの順番が回ってきたのは、実に2時間半後のことだ。シートに身を沈めたときの喜びといったらない。
「ええじゃないか、ええじゃないか♪」
 係員の、やや事務的な歌と手拍子が始まるとスタートだ。後ろ向きに動き出し、早速足が上になり体が回転する。坂を上りきったところまではよかったが、ファーストドロップ以降は上下左右に体を振り回され、自分がどんな格好をしているのかすらわからない。平衡感覚を徹底的に破壊するという触れ込みは本当だった。
 これでもかこれでもかという揺さぶりに、Tシャツの裾がめくれた。ついでにジーンズの裾も折り返された。決してスカートでは乗れないアトラクションである。
 視界を遮られた直後、逆さまで落下したので、頭上に地面が迫ってきた。
「ワァッ!!」
 ここ何年も絶叫マシーンでヒヤリしたことはなかったが、久しぶりに懐かしい感覚を味わった。
 なんと、不思議なコースター。周りが見えないのに、見えたらとんでもない状況になっているところが斬新だ。私はきっと、この四次元コースターのとりこになるだろう。

「なんか、フラフラするけど、楽しかったねぇ~」
 ミキは並び疲れも見せず、スキップしながら言った。
 ええじゃないかの入口には大きな鳥居がそびえ立っている。和と神社をテーマにしているんだそうな。
 しばらくお祓いに行かなくてもいいかな、と私は思った。
 あれだけブンブン振り回されれば、厄だって落ちるわな。



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2 コメント

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私、大のコースター好き (鹿島田の純)
2009-02-26 12:53:55
日本中のコースターに乗りました。一度、雑誌ぴあ のコースター特集に前の女房とコースターの先頭で手を上げてる写真が載りました。最初全然知らなくて友人から「お前と奥さん写真載ってんぞ」と連絡受けてぴあを買ってみたら確かに私達。もうビックリ!

新しいコースターがあるとわざわざ車で乗りに行くコースター馬鹿でした。なんせ気持ちがいい!

でも最近は行ってません
今の奥さんは大のコースター嫌い!残念!
反対なんですね (砂希)
2009-02-26 21:24:47
純さん、コースターに乗りたいときは、昔の奥さんを思い出すんですね。
たしか、ドドンパもええじゃないかも年齢制限があり、54歳までだった気がします。
今の奥さんが付き合ってくれなくても、乗れるうちにガンガン楽しんでください!!

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