OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

『失敗の本質』を語る なぜ戦史に学ぶのか (野中 郁次郎)

2023-02-13 08:55:18 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。

 野中郁次郎教授の著作は、今までも「失敗の本質」を皮切りに「知識創造企業」「戦略の本質」等々、何冊か読んでいます。

 本書は、数々の著作で語られた野中教授の戦略理論等を俯瞰するとともに、それらの研究の背景やプロセス等につき、野中教授自身が語ったものだということで大いに関心を持ちました。

 予想どおり興味を惹いたところは数多くありましたが、その中から特に印象に残った部分を書き留めておきます。

 まずは、名著「失敗の本質」誕生に至る防衛大での共同研究の様子です。

(p44より引用) 共同研究に取り組む過程で実感したのは、研究分野による作法の違いです。研究チームは歴史研究者と組織論の研究者に大別できました。歴史研究者は、歴史は個別の出来事の連なりであり、普遍化よりも、特殊性、独自性、個別性を強調するきらいがありました。個別事例の発掘と記述こそが大切であり、それ以上の説明は不要だと考えるのです。
 一方、私を含む組織論者は、個別の出来事の記述では満足せず、その背後にある構造をつかんで理論にしようとします。歴史研究者たちは反発しましたが、個々の事例を取り上げて丁寧に議論するうちに両者は歩み寄るようになりました。
 ・・・特殊と普遍がぶつかり合ううちに、両者のバランスが取れた研究活動になっていきました。

 そして、この共同研究の書籍化にあたっては、文章表現の統一という点で戸部良一氏が、理論一貫性の担保については野中氏が全体調整を行うというフォーメーションで取り運んだということです。

 もうひとつは、「失敗の本質」で説かれている「対米国連戦連敗の要因」について一言で語っているくだりです。

(p195より引用) 何よりも致命的な瑕疵は、緒戦の勝利に甘んじ、無敵艦隊と称して驕慢に陥り、作戦・戦闘の軌跡を謙虚かつ真摯に反省し学習する知的な努力を怠ったことです。日本軍は米軍に知的に敗れたのです。

 この点は、本書の中で繰り返し触れられているのですが、併せて、その要因は、戦後の日本企業や組織にも継承されていると指摘しています。

 まさに、今日の未曽有の危機に相対しての政治・行政の迷走状況を見るに、その構造的欠陥は旧態依然としたもので、野中教授の主張に大きく首肯するところです。さらに、今回のケースは“過去の成功体験”に根ざしていない分、大きく “知的劣化”しているとさえ言えるでしょう。

 さて、本書を読んでの感想です。

 タイトルだけみると野中教授の代表的著作「失敗の本質」を取り上げての回想録的イメージを抱きますが、実際は、「失敗の本質」から「知識創造企業」「戦略の本質」等、野中教授による主要著作での論考を辿った“野中教授の知的探究半生記”といった趣きのものでした。

 個々の著作を取り上げた各章では、その著作で展開した立論を概説していますが、さすがにエッセンスに絞っているので詳細を理解するには難しいところもありました。やはり、そこはそれぞれの著作そのものに当たるべきですね。

 私の場合は、本書で取り上げられた著作のそこそこのものは以前読んだことがあるだけに、かえって自らの理解力の至らなさを痛感した次第です。情けないことです・・・。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕テロリスト・ゲーム

2023-02-12 12:57:07 | 映画

 
 かなり“ショボい”印象だったのですが、やはり1993年のテレビ映画なんですね。
 
 テロリスト、ソ連、核爆弾、列車ジャックととても月並みな“ネタ”が並んだ、いわゆる“B級サスペンス”の典型です。
 ただ、単純なつくりだけに、誰でもある程度の満足感と物足りなさを感じながら素直に楽しめる作品だとも言えます。
 
 ちなみに、主演はピアース・ブロスナン。彼が “5代目ジェームズ・ボンド” として登場するのは1995年「ゴールデンアイ」ですから、本作品はその直前のタイミングです。
 
 ほぼ同時期のピアース・ブロスナンですが、“ジェームズ・ボンド” という役は「役者としての存在感」自体を一変させてしまうようです。“007シリーズ”という “映画の格” のなせる業かもしれません。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕リピーテッド

2023-02-11 11:51:55 | 映画

 
 「一日だけの記憶で、一晩眠ると前日の記憶がなくなってしまう」というのは、ドリュー・バリモアの「50回目のファースト・キス」での設定と同じですが、あちらは“ロマンティック・コメディ”、こちらは“サスペンス・スリラー”です。
 
 ストーリー的には、犯行に至る動機や人物のバックグラウンドが不明瞭なので、今ひとつ “雑”な印象が拭えません。
 他方、キャスティングについていえば、ニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロングとなかなか豪華な面々が並んでいます。
 
 結局のところ、この3人で物語は進んでいくわけで、このクラスの役者さんが揃うとそれなりのレベルの見応えは担保できてしまうんですね。
 とりわけ、ニコール・キッドマンはさすがの “存在感” でした。 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平家伝説殺人事件 (内田 康夫)

2023-02-10 09:13:24 | 本と雑誌

 

 このところ、かなり以前に読んだ内田康夫さんの“浅見光彦シリーズ”の中から私の出張先が舞台となった作品を読んでいます。

 その流れでシリーズ第一作目となる「後鳥羽伝説札事件」を読んだのですが、まだ少々尖がっていたころの内田さんの筆致を目にし、その後の変化の道程が気になりました。

 ということで、「出張先フォロー」から外れますが、第二作目ではどんな感じかと手に取った次第です。

 ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、私の印象は、正直なところこの二作目、内田さんの作品にしては極めて“凡庸”に感じました。

 保険金目当ての偽装結婚というプロット自体からして全く目新しさはありませんし、大災害を背景にしたエピソードや密室トリックの謎解き等は過去にも多くの(先人の)作品で使い古されたものです。
 敢えて辛辣な言い方をお許しいただけるのであれば、本作のウリは「シリーズを代表するヒロイン稲田佐和さんが初めて登場した作品」というだけですね。

 第一作目を書いたときにはシリーズ化は想定していなかったそうです。それが出版してみると思いの外?好評だったので「第二作目」を執筆したとのことですが、現実は、この二作目の出来を踏まえて「さらに次作も」と本格的なシリーズ化に進んだのですね。
 そして、結果的には「大ヒットシリーズ」となったわけですから、編集者の慧眼は素晴らしいものだと思います。

 それに引き換え “私の作品を見る目は全くあてにならない” ということが見事に暴露されてしまいました・・・。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト

2023-02-09 19:47:20 | 映画

 
 このところちょっと「ルパン三世」づいています。
 
 本作品は2002年放映のTVスペシャルシリーズの中のひとつとのこと。
 ルパン三世とその仲間たちとの最初の出会いのエピソードがモチーフですが、それまでのアニメシリーズとの整合性はとれていませんから、これはこれで“単独作品”として観るべきですね。
 
 で、観終えた印象ですが、最後のどんでん返しも含めて、しっかりと楽しめました。
 いまから20年以上前の作品ですから、個々のキャラクタも初期のルパンシリーズのテイストに近く、私のような年代のものには素直にフィットします。
 
 ともかく、出演した声優のみなさんがレジェンドのオールスターで超豪華。
 小林清志さん、井上真樹夫さん、納谷悟朗さん、増山江威子さん、森山周一郎さん、永井一郎さん・・・、ルパンは栗田貫一さんですが、これが山田康夫さんだったら、もうお宝作品ですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水のない川 暗渠でたどる東京案内 (本田 創)

2023-02-08 13:27:13 | 本と雑誌

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 こういう感じの“街歩き”本は、今から15年以上前に読んだ中沢新一さんの「アースダイバー 」
最近では、高橋源一郎さんの「失われたTOKIOを求めて」等を読んだことがありますが、本書は「暗渠」をテーマに東京を巡ります。

 まず、序章「暗渠スケープと景観・空間・時間」で本田創さんはこう語っています。

(p17より引用) とくに大部分の川が暗渠となり、川を介した土地のつながりが見えなくなってしまっている東京では、暗渠をひもいていくことで、今、目の前に見える東京とはまったく異なる都市の相貌が立ち現れてくる。いったんそれに気がついてしまうと、あなたはもう、今までのまなざしで東京のまちをとらえることはできなくなるだろう。

 時代を追ったその街・土地の変化の様はとても重層的で興味深いものがありますね。「水」は、まさにそこに暮らす人々の生活に密着しています。

(p197より引用) そして、人と川との関係も変化していく。かつては生活や産業に必要な水を取り入れるためのインプット源の存在であった川や水路は、都市の発展につれて不要な水、やっかいな水を排出するア ウトプット先へとシフトしていく。
 これに伴い、人々の川に対する意識もありがたいもの、不可欠な存在から邪魔なもの、迷惑な存在へと変わっていく。
 その帰結として、大正時代半ば以降、川や水路の暗渠化がはじまっていく。

 生活水を得るために人は「水路」を作る。そして、その地の生活様式の変遷に応じて「水の扱い」が変わり、それに伴い「水路の位置づけ」も変わっていきます。

 東京の場合は、こういった流れです。

(p198より引用) 川の暗渠化は東京のまちの拡大に連動している。江戸時代から、明治から、関東大震災後、高度経済成長期、その後の都市拡張と、東京のまちは拡大し続けてきた。 そして川の暗渠化は、その歴史の裏返しでもある。

 そして現在では、多くの水路は人々の視界から消えていきました。ただ、中には、その土地の地形や風景、遺構といった手がかりのあるところもわずかに残っています。
 本書はそれらを辿る貴重なガイドブックなのです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ピエロがお前を嘲笑う

2023-02-07 16:40:42 | 映画

 
 2014年のドイツ映画です。
 
 変わったタイトルに惹かれて観てみましたが、原題は「Who Am I」。「Kein System ist sicher」という副題がついていて、翻訳によると「安全なシステムはない」という何とも味気ないタイトルでした。
 
 ハッキング犯罪がモチーフになっているので、作品のテイストは想像できますし、実際のところそのとおりでした。
 
 やはりこの手の映画は私には合いませんね。入り組んだストーリーであったとしても、もっと明るくて軽みがある展開であればいいのですが、どうにも沈み込んだ感じになってしまいます。
 
 当然のことながら、ラストを迎えても私の頭の中はスッキリには程遠い状態でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ファイナル・カウントダウン

2023-02-06 14:14:13 | 映画

 
 1980年のアメリカ映画です。
 もう何度も観ていますが、また久しぶりに観たくなりました。
 
 タイムトリップものの戦争映画としては草分け的作品ですね。ストーリーは当然ながら“御都合主義”的ですが、そもそも論理的な辻褄が合うわけではないので観る方も織り込み済みです。
 
 ともかく、この作品、真珠湾攻撃直前という場の設定と最高にシンプルなプロットが成功の鍵でしたね。映像としても、CGが普及する前なので実際の艦船や艦載機が使われていてリアリティも十分でした。
 
 愛犬を伏線にしたエンディングも、観客はほとんど想定していただろうと思いますが、やはり心が躍りますね。いいシーンです。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米朝らくごの舞台裏 (小佐田 定雄)

2023-02-05 14:53:10 | 本と雑誌

 

 SNSで紹介されていたので目に付いた本です。

 私は「落語」は結構好きな方で、その中でも「三代目桂米朝」師匠はお気に入りの噺家さんの一人です。もちろん“人間国宝”でいらっしゃるので言うまでもありませんが、その上品な芸風は他の噺家さんとは一線を画していましたね。

 本書は、米朝師匠にまつわる数々のエピソードを記したものですが、著者が落語作家として米朝師匠、枝雀師匠の近くで活躍されていた小佐田定雄さんだけあって、とても興味深い話が満載でした。

 そのいくつかを覚えとして書き留めておきます。

 まずは、「小倉船」に登場する長唄「浦島」を踊るシーンの稽古。
 米朝師匠は四代目三遊亭圓馬師匠に習ったとのこと。その際のやり取りです。

(p96より引用) 「できるだけ手数の少ない簡単な振りをお願いします」と頼むと、圓馬師は、
 「なにを言ってんだ。手数の多いほうが簡単なんだ」

 なるほど、芸の世界の話なので感覚でしかないのですが、分かる気がします。

 次は、愛弟子枝雀師匠との間のエピソードです。
 米朝師匠が演じた上方落語の名作「たちぎれ線香」を聞いて、大いに感激した枝雀師匠と話し終えて楽屋に戻った米朝師匠。

(p166より引用) それだけ惚れ込んでいたために、別のときに『たちぎれ』で感動し、泣きながら楽屋に入って来ると、衣装を脱ぎ捨てた米朝師が大きな声で、
「わしの親子丼、どこにあんねん!」と叫んでいる現場に出会わしてしまい、
「この人、なんちゅう薄情な人や。さっきの涙を返してほしいわ」とも思ったという。嘶の中に入り込んでしまう枝雀さんと、一定の距離を置いて演じる米朝師の違いである。

 こういうパーソナリティの対比は、さもありなんと納得感がありますね。

 さらに、枝雀師匠の述懐です。
 上方落語が復活する前、米朝師匠もいろいろなところで落語を演じました。キャバレーの酔客の前でお色気小咄を語ったこともありました。

(p195より引用) それをステージの横で見ていた小米時代の枝雀さんは、まだ朝丸といっていたざこばさんに、
「なあ、朝丸。ちゃーちゃん、こんなことしはらいでもええのになあ」と訴えたことがあるそうだ。後になって枝雀さんは、
「今の若手はちゃーちゃんが若いころから独演会で『たちぎれ線香』とか『百年目』ばっかりしてはったように思うて、自分らも古典落語さえやり続けてたらあないなれると思うてるようですけど、全く聞く気のないお客さんの前で脂汗かいて小咄やってはったことを知りませんねん。そういう修羅場をくぐってない芸は詰めが甘いように思います

 人間国宝への道も“一日にしてならず”、決して順風満帆であるはずがありません。枝雀師匠の言葉だけに重いものがあります。

 さて、本書を読み通しての感想です。
 本書に記された米朝師匠の様々なエピソードに触れて、素人の私が思っていた「落語観」は大きく変わりましたね。改めてですが、“ここまで考えてのあの言い回しだったのか” と落語を演じることの深淵さに驚かされました。

 本書の「まくら」でも紹介されている「米朝落語研究会」

(p4より引用) 一門の落語を高座から数メートルしか離れていない舞台ソデで米朝師が聞き、チェックして終演後の反省会で注意をしてもらう。門弟たちにとっては、すばらしくありがたい、その反面、とても辛く厳しい勉強会 だった。

 ここでの細かな指導をはじめてとして、小佐田さんが本書の随所で紹介している米朝師匠の演出の密度は、その背景となっている知識量のみならず、ひとつひとつの噺に向き合う米朝師匠の真摯さの顕れだったのでしょう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕柘榴坂の仇討

2023-02-04 12:14:52 | 映画

 
 浅田次郎さんによる短編小説が原作の映画です。
 
 浅田作品を原作にした映画は今までも「鉄道員(ぽっぽや)」「壬生義士伝」「地下鉄(メトロ)に乗って」あたりを見ていますが、それらに比べて本作はかなり“あっさり” していますね。もっとストレートに言えば、圧倒的に物足りない印象です。
 
 主人公二人の人物像の作り込みが甘いのが致命的ですね。なので、なぜ忍従していたのか、そして、なぜそれが氷解したのかというプロットに納得感や共感が生まれないのだと思います。
 
 共演者の印象はといえば、真飛聖さんはうまく役柄にマッチしていましたが、広末涼子さんの方はせっかくの彼女の魅力を活かしきれていなかったようです。ところどころの “ちょっとした表情” だけではもったいないですね。
 
 とても残念な出来の作品でした。
 
 あと、そういえば、今から25年ほど前には「柘榴坂」を上がり切ったあたりの社宅に住んでいたことがあります。もうその社宅もなくなったようですが。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ルパン三世 THE FIRST

2023-02-03 10:03:07 | 映画

 
 2019年12月に公開された作品です。
 
 ストーリー的には、ルパン三世の劇場版にありがちなプロットでインパクトはなかったのですが、3Dアニメーションの出来はかなり上等だと思います。立体感も自然で映像も綺麗でした。
 
 登場キャラクタはいつもの面々、声優のみなさんも小林清志さんを除いては“第二世代”以降の安定のメンバーで、素直に楽しめましたね。
 
 最後の“予定調和”的エンディングもお決まりのパターンで評価は分かれるかもしれませんが、私はこういった心優しいHappy endが好みです。
 
 あと、原作のモンキー・パンチさん、楽しみにしていた本作品の完成を見ることはかなわなかったとのこと、残念です。
 長年にわたり素晴らしい作品の数々を本当にありがとうございました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遺譜 浅見光彦最後の事件 上・下 (内田 康夫)

2023-02-02 18:42:57 | 本と雑誌

 このところ、かなり以前に読んだ内田康夫さんの“浅見光彦シリーズ”の中から私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみているのですが、図書館でそれに該当する本を探していたおり、目についた作品です。

 ともかく“浅見光彦最後の事件”という副題はインパクト十分ですね。まんまと内田さんの餌に食らいついてしまった気分です。

 ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、主な舞台は浅見光彦シリーズの締め括りということもあり、ダイナミックにドイツ、オーストリアにも足を伸ばし、その地の観光案内にも匹敵するような風景や街並みの詳細な描写が印象に残ります。(ということで、残念ながら「出張先」とは全く無縁です)

 また、登場人物はお馴染みの浅見家の面々はもとより、過去の事件で関わりのあったヒロインたちも数多く顔を出し、そのうちの主だったキャラクタはこの物語の中でも大切な役回りを演じていました。

 肝心のストーリーも完結版に相応しく“正統派の構成”だったと思います。こういうセリフで浅見光彦へのエールを語らせるのも完結版ならではですね。

(下 p350より引用) 「何を考え何をしようと、浅見はんらしく生きなはれ。・・・ 浅見はんの立派なのは融通無碍や。囚われず、縛られず、自由闊達に動いて、しかも踏み外すことがない。ほんまにあんたは誰をも愛し、誰にも愛されるお人やなあ。それは時にはしんどいかもしれまへんが、天命やと思うて、こらえてください。誰もがそう願うとりますよ」

 「あとがき」で内田さんは今後の“復活”についてもちょっと言及していましたが、私としては、内田さんのみの筆として完結させた最後の作品である本作を区切りとして、またそれに至るまでの作品を辿っていこうと思います。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕犬も食わねどチャーリーは笑う

2023-02-01 15:24:23 | 映画

 
 オリジナル脚本の最近の作品です。
 
 最近ちょっと気になっている女優さん、岸井ゆきのさんの出演作ということで観てみました。
 
 感想はといえば、正直なところ “今ひとつ” でした。
 最近のネット社会でありそうなエピソードをモチーフにしているのですが、取り上げられたテーマ自体が旧態依然としたメンタリティなので、まったく響かなかったです。ラスト近くのドタバタのシーンもどうでしょう・・・、ちょっと無理筋感が漂います。
 
 香取慎吾さんもこのキャラクタでは少々マンネリですね、とても残念。
 
 そう、ひとつだけ気になったのが作品の「ロケ地」。あのモノレールは「多摩モノレール」ですね。ご近所さんです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする