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日本流作戦譚 (失敗の本質-日本軍の組織論的研究 (戸部良一・野中郁次郎他)

2008-06-15 13:35:41 | 本と雑誌

Pearl_harbor  この本を読むのは、これで3回目だと思います。例のセミナーの課題図書に指定されたので、久しぶりに読んでみました。

 大東亜戦争における6つの作戦(ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)をケースに、日本軍という組織が失敗(敗北)に至った要因を分析した内容です。

 
(p23より引用) 大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することが、本書の最も大きなねらいである。

 
 本の前半で紹介した6つの作戦に共通にみられる失敗の要因を、「戦略上の要因」「組織上の要因」に分けて分析を進めます。
 その「戦略上の要因」で指摘されている点、いわゆる「ビジョンの欠如」です。

 
(p274より引用) 結局、日本軍は六つの作戦のすべてにおいて、作戦目的に関する全軍的一致を確立することに失敗している。・・・
 作戦目的の多義性、不明確性を生む最大の要因は、個々の作戦を有機的に結合し、戦争全体をできるだけ有利なうちに終結させるグランド・デザインが欠如していたことにあるのはいうまでもないことであろう。その結果、日本軍の戦略目的は相対的に見てあいまいになった。この点で、日本軍の失敗の過程は、主観と独善から希望的観測に依存する戦略目的が戦争の現実と合理的論理によって漸次破壊されてきたプロセスであったということができる。

 
 そしてこのグランド・デザインの欠如が、戦略の「短期志向」に結びついていきます。

 
(p278より引用) 日本軍の戦略志向が短期志向だというのは、・・・長期の見通しを欠いたなかで、日米開戦に踏み切ったというその近視眼的な考え方をさしているのである。

 
 さらに、戦略遂行の基本的基盤であるバックヤードの軽視につながるのです。

 
(p280より引用) 短期決戦志向の戦略は、・・・一面で攻撃重視、決戦重視の考え方と結びついているが、他方で防禦、情報、諜報に対する関心の低さ、兵力補充、補給・兵站の軽視となって表われるのである

 
 ミッドウェー作戦では、戦略遂行にあたっての柔軟な対応力が問われる「不断の錯誤」が生じました。

 
(p97より引用) 戦闘は組織としての戦闘部隊の主体的意思である作戦目的(戦略)と、その遂行(組織過程)の競い合いにほかならない。戦場において不断の錯誤に直面する戦闘部隊は、どのようなコンティンジェンシー・プランを持っているかということ、ならびにその作戦遂行に際して当初の企図(計画)と実際のパフォーマンスとのギャップをどこまで小さくすることができるかということによって、成否が分かれる。

 
 ミッドウェー海戦においては、日米双方に生じた錯誤に対する指揮官の判断力・組織としての即応力の差が勝敗を分かつ分水嶺になったようです。
 その判断力や即応力は、ビジョン理解を基礎とした応用力です。

 

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価格:¥ 800(税込)
発売日:1991-08

 

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