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逆説の町 (日本の町(丸谷 才一・山崎 正和))

2008-09-28 11:58:36 | 本と雑誌

Nagasaki  丸谷氏・山崎氏の対談の面白さの源は、両氏の対象に対する切り口の多様さ・斬新さにあります。

 「長崎」の章で発揮された歴史的な切り口からのやりとりです。

 
(p114より引用) 丸谷 そう、長崎をうんと特殊な地域とすることによって、徳川三百年の封建体制がきちんと出来た。そこのところは、はっきり言えるような気がする。
山崎 つまり日本を閉じるために開いた町という逆説があるんですね。

 
 確かに、江戸時代、長崎出島に海外との接点を限定することにより、その他日本全体を覆う鎖国政策を維持したと言えるのでしょう。
 このあたりの考え方・発想には納得感を感じます。

 もうひとつ、長崎という町の特殊な性格についての山崎説です。

 
(p119より引用) 山崎 ですから、そんなふうに、外国文化をたえず受けいれていて、それが日常的になってしまうと、外国そのものが、刺戟として感じられなくなりますね。緊張感がなくなってしまう。ですから、長崎という特別の世界の中では、国際性は何もなかったという逆説が成り立つと思うんです。
丸谷 つまり、すべて日常のことだった。

 
 長崎といえば「国際的」という通念に対して、シンプルな切り口で異を唱える、こういう知的な刺激を発することは結構難しいことだと思います。
 私のような凡人は、なかなか割り切った立論ができないものですし、すぐ些細な例外を気にしてしまうものです。

 さて、対談集の中からの最後のご紹介は、 「弘前」をテーマにした章での山崎氏と丸谷氏とのやりとりです。

 
(p173より引用) 山崎 言葉の話にまた戻りますが東北の言葉は、もちろん私にはよくわかりませんけれども、だいたいにおいてしっかりした語源があって、いわゆる方言じゃなくて、むしろ昔の古典的な日本語が保存されているという感じですね。・・・さらにあえて論理を飛躍させますが、だいたい東北は地名がきれいですね。
丸谷 それは確かだ。それはね、また論理を飛躍させるけれど、(笑)結局、大和言葉とアイヌ語と出会ったときの衝突感なんです。それがすごいんだと思いますね、おそらく。

 
 民俗学・言語学・歴史学・・・、多様で豊富な知識を材料に、自分なりの新たなコンセプトを創発していく、そういうやりとりができることは素晴らしいものです。

  インプット→処理→アウトプット。私は、どのプロセスも全くもって未熟です。
 
 
日本の町 (文春文庫)
価格:¥ 459(税込)
発売日:1994-11

 
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