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皇帝の資質 (ローマ人の物語 29/30/31(塩野七生))

2008-09-08 16:19:48 | 本と雑誌

Marcus_aurelius  哲人皇帝といわれたマルクス・アウレリウスですが、その治世の多く期間、彼の居場所は、決して得意とはいえない不慣れな戦場でした。
 度重なる戦役を経験し、マルクスは、軍事活動における自らの役割を確立していきました。

 
(中p112より引用) 指揮者たちは、いずれも軍事のベテランである。ただし、ベテランでありプロであるだけに、何をしたら自分の能力を最高に発揮できるかを知っている。しかし、戦争とは集団行動だ。・・・わたしが心せねばならなかったことは、国家にとっての利益を最優先したうえで、誰をどの分野で活用するかを決めることであった。その際に注意したのは、託された分野でその人物が、彼の能力を充分に発揮できるための条件を、最高司令官であるわたしが整えてやることだったのである。

 
 この姿勢は決して哲学者のものではありません。マルクスは、実践により、現実社会のリーダーとしての資質を備えていったのです。

 とはいえ、歴史は、マルクスを五賢帝の「最後の皇帝」としています。
 マルクスは賢帝の時代を後世に引き継ぐことには失敗したのです。自らの子を後継者に選び、その結果、ローマ社会を悪政と内乱に導くこととなったのです。

 この失敗について、塩野氏はこう指摘しています。

 
(中p177より引用) マルクスが傾倒していた哲学は、いかに良く正しく生きるか、への問題には答えてくれるかもしれないが、人間とは、崇高な動機によって行動することもあれば、下劣な動機によって行動に駆られる生き物でもあるという、人間社会の現実までは教えてくれない。それを教えてくれるのは、歴史である。

 
 その時々で善意で行なったことが結果として報われない・・・。
 本書のあちらこちらで感じられる塩野氏の歴史観について、自らこう語ります。

 
(下p108より引用) もしかしたら人類の歴史は、悪意とも言える冷徹さで実行した場合の成功例と、善意あふれる動機ではじめられたことの失敗例で、おおかた埋まっていると言ってもよいのかもしれない。

 
 

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