世界史の教科書にも必ず登場する「カンタベリー物語」。
作者のチョーサー(Geoffrey Chaucer 1343?~1400)は中世イギリスを代表する詩人といわれています。
手元の百科事典をみても、
14世紀イギリスの詩人ジェフリー・チョーサーの傑作「カンタベリー物語」(1387~1400執筆)は、聖地カンタベリーへの巡礼にむかう人々が旅のつれづれに順番に物語を披露するという形式をとった枠物語であり、物語と物語の合間の会話は、次の物語への橋渡しとなっている。・・・チョーサーの「カンタベリー物語」は、高貴な愛、寓話、教訓話など中世の文学ジャンルの集大成であり、中世物語文学の最高傑作といえる・・・
と紹介されていますし、本書の解説でも次のように称賛されています。
(p203より引用) 今日われわれがこれを読んで、その描写のあまりに精細で軽妙なのをみて、このような作品が今から五百年以上も前に出ているのを思うとき、まことに異様な感にうたれるのである。ましてこれが純粋な散文であるならまだしも、韻律でなんの苦もなく描かれたというにおいては、ただただ作者の非凡な才能に驚かざるを得ない。
私が読んだ角川文庫版は、完訳ではなく主な部分を採録したダイジェスト版です。
こういった古典文学を読むためには、その当時の社会状況についての理解や文学史に関する最低限の常識がないとダメですね。
私の場合、当時の原語の知識は全くありませんから、残念ながら解説にあるような韻律についても、その素晴らしさを味わうことができません。
また、当時のイギリス社会を構成する様々な階級・職業の人物が登場して、絡み合いながら物語っていくのですが、どの部分が風刺や社会批判なのか、どこがウィットやユーモアなのか・・・についてもなかなか判別がつきません。(スウィフトのガリバー旅行記あたりまで時代がくだってくると、風刺もある程度は理解できてくるのですが・・・)
もちろん、ひとつひとつの物語は、それぞれの階層・立場の人々の生活観がリアルに感じられてそれなりには楽しめました。
当時ならではというエピソードもあれば、いつの時代でも何処も同じという思いをいだくところもあります。個人的には「郷士の物語」とかは好みです。
チョーサの時代は、日本ではちょうど足利義満の時代、北山文化華やかななりしころのようです。
当時の日本の文学はといえば「五山文学」でした。京や鎌倉の五山派の禅僧によってつくられた「四六駢儷体」の漢文学。
日本の文学ですら無案内なわけですから、英文学の古典が理解できないのは当然でしょうね。
カンタベリー物語 (角川文庫 赤 347-1) 価格:¥ 441(税込) 発売日:1973-01 |
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