著者たちは、本書のタイトル(邦名)にもあるように、トヨタを「知識創造経営」企業と位置づけています。
「知識創造」の根源的単位は従業員1人ひとりです。
その意味からトヨタは、従業員の創造性を最重要視しています。
その姿勢は、「顧客現地対応」に関する浦西徳一副社長のコメントにも表れています。
(p136より引用) まずは現地顧客対応です。・・・潜在的なマーケット・ニーズをすべて調査して、それに対して最適な解決策をひとつだけ選ぶようなグローバル企業は、たしかに効率はいいかもしれませんが、その方法ですと現地の従業員の創造性が犠牲になってしまいます。
グローバル・スタンダードを振りかざしたトップダウン的なマネジメントよりも、現地に根ざした現場の知恵を大事にしているのです。
(p214より引用) 上の人にいかにビジョンがあっても、何ができて何ができないかの情報をもっているのは下の人たちです。重要な情報をもっていて処理するのは現場で、前線にいる社員が現地の状況やトップの意見などを考慮しつつ、決めるわけです。
従業員重視の考え方は、トヨタの人的資源管理の価値観そのものです。
(p230より引用) アップ・アンド・インの人的資源管理は何に由来しているのだろうか。・・・これらの価値観は、「継続的改善」と「人間性尊重」というトヨタウェイの二本の柱に表現されている。その根底にあるのは、人間はチャンスを与えられればだれでも貢献できるという考え方である。「人間性尊重」という柱は、トヨタの人的資源管理が社員のどのような能力を育成しようとしているかに反映されている。
- 広い心をもち、長期的視野に立って、多様な視点から自律的に考えることができる
- 課題への取り組みを通じて自分の能力を発見する
- 組織を動かす行動を起こすことができる
こういった価値観にもとづく人事管理は、昨今のグローバル・スタンダードと言われている評価主義、アップ・オア・アウトの方向性とは逆のものです。
また、トヨタ自身も急速な国際化・海外展開により、人材の多様化が進んでいます。
こういう環境の大きな変化においても、トヨタの伝統的人的資源管理の価値観を堅持・継承できるのか。トヨタは、人材育成に多くの投資を振り向けていると言われますが、今後もそういう傾斜投資を継続し続けられるのか。
本書では、トヨタの「人間的経営モデル」は普遍的であると結論づけています。
トヨタの知識創造経営 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:2008-06-21 |
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
TREviewブログランキング