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スパイラル・アップ (トヨタの知識創造経営(大薗恵美・清水紀彦・竹内弘高)

2008-08-26 10:00:22 | 本と雑誌

 トヨタの強さについては、最近出版された井上久男氏による「トヨタ 愚直なる人づくり‐知られざる究極の「強み」を探る」という本でも、「人づくり(人材育成)」の面が指摘されています。

 本書でも、そういったマネジメントのソフトウェア面の指摘が数多くありました。
 それらのいくつかをご紹介します。

 まずは、本書のサブタイトルにもある「矛盾と衝突の経営モデル」の肝である「矛盾の昇華」についてです。

 
(p34より引用) 人間関係のなかで起きる矛盾や対立を発展的に昇華させることができれば、そこから生まれる創造性を生産プロセスに落とし込むのも可能なのである。

 
 こういった矛盾や衝突は、強力なトップダウン式の明瞭なマネジメントスタイルの場合は発生しにくいものです。
 トヨタは、あえて目標に「あいまいさ」を残すことによって矛盾の発生・それを解決する社員の創造性を喚起させています。

 
(p100より引用) 安田善次元専務取締役は、トヨタの目標は、方向性を示すが限定的ではないので、社員は自分が正しいと思う方向に向かって創造的エネルギーを発揮することができると言う。

 
 著者たちは、こういったトヨタ流のマネジメントを6つの力の不安定な動的相関関係としてモデル化し、その総合力が「トヨタの進化」の源泉だと説いています。

 
(p55より引用) この六つの力は相互依存的に作用しあい、互いに強化しあう。その影響で、トヨタの組織は不均衡な状態に置かれる。そこには根本的な矛盾が並存し、組織内に健全な緊張と不安定な状況が生み出される。六つの力のいずれの優位性が変化してもこの状態はダイナミックに揺れ動き、組織を安定状態から新たな軌道へと向かわせる。軌道は六つの力のバランスにより時間とともに変化していく。このような変化はどの組織にも見られるものだが、トヨタが他社と異なるのは、継続的な変化が介在し、不安定が継続する状態を自ら推進していることだ。

 
 こういったトヨタの強みは、「カイゼンを支える危機意識」を指摘した浦西副社長のコメントの中にみられるように、トップマネジメントレベルで経営哲学として根づいている点にもあるように思います。

 
(p177より引用) カイゼンを支えるため、トヨタはある種の危機感を組織内に創り出す。浦西はこう説明する。
 現状に満足しない。満足したとたんにおかしくなる。それを防ぐには、危機意識を持たねばなりません。・・・だが、本当の危機に立ち至らないと、危機意識の共有は難しい。トヨタは危機意識が比較的うまく共有できています。それが、マネジメントの一番大事な仕事だと思っています。

 
 

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価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2008-06-21

 
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