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個性を育てる徒弟制度 (木のいのち木のこころ 天(西岡 常一))

2006-10-20 00:45:36 | 本と雑誌

Hourinnzisannzyuunotousinn  西岡氏は、祖父を師匠に厳しい「徒弟制度」の中で育ちました。
 西岡氏には弟子はひとりしかいません。その弟子、小川三夫氏を取るにあたっても3回追い返したといいます。そして、弟子にすると決めるや、納得づくでとことん育てました。

(p88より引用) 徒弟制度は時間がかかります。大量生産がききませんのや。一人一人違うものを育てるんやからな。

 徒弟制度による育成は、まずは弟子の側に厳しい修行に耐えて「一人前になるという強い意志」がなければなりませんが、育成する側にも「一人前に育てるという覚悟と使命感」が不可欠です。
 その意味では、1対1の真剣な「教育」の実践です。

(p90より引用) 徒弟制度といいましたら古いもんといわれていますが、古いからすべてが悪いというもんやないやないですか。すべて同じ人間にしようという教育よりは、よっぽど人間的な育て方でっせ。
 私は長いこと法隆寺や薬師寺などの古代建築を見て不揃いの木を扱ってきましたが、自分が育てられて来た徒弟制がすべて悪いとは思いませんな。むしろこんな時代やから、個性を大事にして人を育てるという意味では、もっと見直されてもいいんと違いますか。

 職人としての技能は、本を読んで頭で理解しても決して身に付きません。また、他人に教わるだけでもだめです。本人自身が、地道な経験を重ねることで、感覚としてまた体で覚えるしかありません。

(p94より引用) 頭ごなしに「こうやるんだ」と教わってもできません。手取り足取り丁寧に事細かに教わってもできませんな。
 素直に、自分の癖を取って、自分で考え、工夫して、努力して初めて身につくんです。苦労して、考え考えしてやっているうちに、ふっと抜けるんですな。そしてこうやるのかと気がつくんです。こうして覚えたことは決して忘れませんで。

 こういう覚え方に至るのも、徒弟制度での師匠の指導の賜物です。

 師匠は、四六時中、弟子の様子を厳しくも温かい眼でつぶさに見ています。
 そして、遠まわしに、弟子が、自分の頭で考えそれにより自らの向上心が高まるような、そんな一言をかけるのです。

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