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口伝の心構え (木のいのち木のこころ 天(西岡 常一))

2006-10-18 00:31:49 | 本と雑誌

Yakushiji  西岡氏が、直接には師匠である祖父から、そして源ははるか昔の飛鳥の工人から受け継いだ「口伝」です。
 細かくは100を越える数あるそうですが、その中で氏が特に重きを置いているものを紹介しています。

(p52より引用) 口伝にも木の扱いに関してはいろいろ教えております。
「堂塔建立の用材は木を買わず山を買え」
「木は生育の方位のままに使え」
「堂塔の木組みは木の癖で組め」
 いずれも木の使い方の心構えを説いたものですな。要は自然の教えるままにしなさいと言うているわけです。その自然に対する心構えというのがどうしても大事になりますな。ものを扱うのも技術も、心構えなしには育たんもんですわ。

 西岡氏にとって「口伝」は、自分の思考そのものと化しています。氏の姿勢は、そのまま、まさに「口伝」の具現と言えます。

(p54より引用) やっぱりたった一本の木でも、それがどんなふうにして種が播かれ、時期が来て仲間と競争して大きくなった、そこはどんな山やったんやろ、風は強かったやろか、お日さんはどっちから当たったんやろ、私ならそんなことを考えますもんな。
 それで、その木の生きてきた環境、その木の持っている特質を生かしてやらな、たとえ名材といえども無駄になってしまいますわ。ちょっとした気配りのなさが、これまで生きてきた木の命を無駄にしてしまうことになるんやから、われわれは十分に考えななりませんわ。

 そういう西岡氏の言は重厚です。名人の年輪を感じさせます。
 以下は「木の風格」に関する西岡氏の言葉ですが、まさに「人」にも当てはまる卓見です。

(p34より引用) 年を取っている木で大きなものでも、中が空洞やウロができているもんは一見若々しいですな。こういう木は周囲だけが生きていますのや。栄養が全体に達しんと、葉のところだけが若々しいんやけど、年を取って中がしっかり詰まっとるのは栄養が回りきらんから黄ばんだような、くすんだ感じがしますんですな。これも弱って黄ばんどるのとは違いまっせ。こういう木は材にしても風格がありますな。

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