今から20年以上前の学生時代に読んだ本です。今までも何度か読み直したいと思っていたのですが、ようやくリバイバルです。
(p19より引用) 自分のためにする事はすなわち人のためにすることだ。・・・それをちょっと数学的に言い現わしますと、己のためにする仕事の分量はひとのためにする仕事の分量と同じであるという方程式が立つのであります。・・・人のためになる仕事を余計すればするほど、それだけ己のためになるのもまた明らかな因縁であります。
漱石によると「職業」とは「人のためにやる仕事」ということになります。
そうすっきりと割り切ってしまえば、日々の仕事も楽になるかもしれません。仕事を「自己実現の場」と考えると、思い通りにいかずフラストレーションがたまったり幻滅したりするのです。仕事は人のためにやるものだ、だから自分の思い通りにいくとは限らないんだと思えばいいのです。
「職業」の対極は「道楽」で、これは「己のためにする仕事」です。
科学者・哲学者・芸術家がその代表で、「自己本位でなければ到底成功できない」と論じています。これは漱石一流の「近代個人主義思想」と軌を一にするものです。