(takekuraさんのブログに事業部運営の話題がアップされていたので、ちょっと雑感です)
事業部制のひとつのメリットとして通常「意思決定の迅速性」があげられます。
確かにそのとおりの面は否定しませんが、実際上の事業(企業)においては、乱暴な言い方をすると「迅速な意思決定」は「責任者や担当者のやる気の問題」でもあります。担当者に重要な施策であるという信念があり、関係者に納得性があれば組織の枠など関係なく(円滑にまた強引に)進めることはできるものです。(もちろん、そのための手間やエネルギーはある程度覚悟する必要はありますが)
「事業部制」の目的は、究極的には「企業の業績向上への貢献」であることは言うまでもありません。すなわち、「事業部をひとつのvirtual corporationと位置づけ、事業部個々の自主的・自立的活動の結果、総体としての企業業績の極大化を目指す」という合目的的な手段であるわけです。
この場合、「事業部制」は「社内管理会計制度」とセットになります。管理会計は「事業部の業績」を把握するための社内会計ルールですが、これは、各事業部のmissionの達成状況を数値であらわすことによる経営管理ツールです。したがって、管理会計ルールをどう作るか次第で「事業部の業績数値」にブレが生じ「事業部管理・評価」は大きく変動することになります。
特に企業内に異質のmissionを持つ複数事業部(たとえば、販売事業部・プロダクト事業部・設備事業部等(場合によってはCC(コストセンタ)やOH(オーバヘッド機能)も含む))が存在する場合は結構面倒です。
各事業部のmissionによって、それぞれの重点管理指標は「売上」であったり、「コスト」であったり、「利益」であったり、「キャッシュフロー」であったり、はたまた「資産回転率」であったりとバラバラになるのです。
企業総体としての業績は多くの場合「利益」(もしくは「キャッシュフロー」)で表されることが多いので、通常の管理会計でも各事業部の最終指標は「利益」としています。
が、上述のように種々の異なる性格の事業部が混在している企業体の場合は、管理会計としては、各事業部の管理数値をなんとかして「利益」の姿に収斂させる操作が必要になります。そのため、管理会計の仕組みは、様々な軸をもつ各種の社内取引ルール(固定的コストの分計・社内卸価格の設定等)の複合体になってしまいます。
その結果、各事業部での実行動にもとづく成果が直接的に管理会計数値に反映されにくくなります。
このことは、しばしば、自事業部の目標未達成の言い訳として「配賦コストが予想外に増えたため」とか「社内卸部門の効率化が不十分だったため」とかいった、他責の内部要因を「ことの元凶」と言わしめることにつながるのです。
これでは、事業部利益の良否が、自事業部の評価や自責としての改善アクションの動機付けになりません。
事業部制にもとづく事業運営を企業の全体最適化に真に寄与させるためには、自責のアクションをどれだけ管理指標(利益)に反映させることができるかという「事業部業績管理ツールとしての管理会計制度の出来」が非常に重要なものとなるのです。