放送作家村上信夫の不思議事件ファイル

Welcome! 放送作家で立教大大学院生の村上信夫のNOTEです。

カーブはなぜ曲がる?

2009年07月21日 04時48分28秒 | Weblog
「カーブはなぜ曲がるのだろうか?」

力学的に変化球の定義は、「重力以外の力が球に働き、球の軌道が放物線からずれるもの」をいう。
カーブは、手首を体の外側から内側にひねり、手のひらを内側に向けるようにして、主に中指と親指によって、大きな回転を与える変化球である。
投手は縫い目に指をかけ、球を離す瞬間に手首のスナッ
プを利かせて投げる。球は指で下向きにこすられるので後ろ向きの回転、バックスピンがかかる。
さて、回転しながら飛ぶ球は、周囲の空気から上向きにボールを押し上げる力「マグナス力」を受ける。個のマグナス効果によって、ボールは曲がるのである。

しかし、マグナス効果で40cmコースを曲げるためには、ボール自体の回転数(後ろ向きの回転、バックスピン)が毎秒80回以上必要である。通常、プロ野球のトップ投手でも回転数は40回転。人間の力では存在しない回転数、ここに流体力学でとけない、カーブの謎があった。
1950年、東京大学の谷一郎教授は一つの論文を発表した。
「野球のカーブについて」(「科学」岩波書店)と題したこの論文で、谷教授はボールの縫い目に注目した。縫い目の影響で小さな回転でも大きな横力が発生し、40cmコースを曲げるために必要な回転数は、40回転で十分なことを指摘したのである。
この回転数とマグナス効果、そして、その力が働く方向によって、すべての変化球は生まれるのである。

主な変化球
・シュート(スクリューボール)
・スライダー
・スピリットフィンガー・ファーストボール
・シンカー
・ナックル
・パームボール
・フォークボール
このうち、ナックルボール、パームボール、フォークボールは、回転を意識的に殺し、マグナス力を抑えることで変化を与えている。
いや、フォークボールは変化していない、そう主張する科学者も多い。VTRによる軌道分析の結果、かつて、野茂や佐々木の投げているたフォークボールは、再度スピンし、毎秒10~20回転と報告されている。このため、変化量は少なく、放物線を描いて落ちているだけである。それでは、なぜ、フォークボールが大きく落ちて見えるのだろうか。・・・それは、直球と組み合わされて見せられるからである。

「つまり、変化球は、握り方、回転・マグナス力、そして、直球との組み合わせなのである」。


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カーブは本当に曲がっているか?<カーブ論争>

2009年07月21日 04時42分50秒 | Weblog
野球史最初の変化球は、1860年、大リーグのウィリアム・A・カミングスが投げたカーブというのが、定説になっている。カミングスは、身長175cm、体重54kgという小柄な身体にもかかわらず、カーブを使って、引退するまで毎年28勝以上を上げるという快挙を成し遂げて、1939年、野球殿堂入りをしている。
カミングは、1863年、14歳の時、ニューイングランドの海岸で貝殻を投げていて、カーブを思いついたという。

しかし、これが1世紀にも及ぶ論争の始まりでもあった。
当時の人気雑誌や科学者まで参加して展開した大リーグ史上名高いその論争は、カーブは本当に曲がっているのではなく、幻覚だという「カーブは幻」論争である。

1870年、同じく大リーグのゴールドスミスが公開実験を行い、カーブが曲がることを実証する。しかし、ゴールドスミスのカーブは、カミングスとは対照的に、人をだます卑怯な手だといわれ、ゴールドスミスは不遇のまま死んで行った。
小柄なカミングスが魔球を操って大男たちに立ち向かうのは評価されても、大柄のゴールドスミスがカーブを投げるのはアンフェアだとされたのである。

しかし、その後も論争は続き、1877年、シンシナチで、物理学者が参加して調査研究が行われた。この実験は、投手と捕手の間に、カーブが本当に曲がらなければ捕手のミットに届かない間隔で、2本の棒を立てて行った。
この時、投手は全球、ミットに投げたと記録されている。だが、この時、これを目撃したシンシナチ大の学者たちは、「野球ボールが曲がることはありえない、目の錯覚」だと言ったという。

その後も論争は続き、1940代には、カーブを目の錯覚と断じた写真誌ライフと曲がると主張したルック誌の人気雑誌を巻き込んだ論争まで起り、1953年、ライフが、カーブは曲がると認めるまで、この論争は続いた。

今では、常識とされるカーブが認められるまでに、80年以上の年月がかかったのである。約1世紀に渡るカーブ論争は、今までの常識を覆す現象と出合ったときに、人はどんな反応をするかを示している。

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大リーグボールの投げ方

2009年07月21日 03時56分52秒 | Weblog
父と子、ライバル、そして、恋人。野球漫画の古典『巨人の星』。原作梶原一騎、作画川崎のぼるのこの作品は、元巨人軍選手だった父・星一徹の鬼の指導で、主人公星飛雄馬は、抜群のコントロールと速球を身につけ、念願の巨人軍入りを果たし、数々の困難に打ち勝っていくスポ根漫画の古典中の古典。

・・・ 僕はあの根性主義にどうしても馴染めなかったが。


「大リーグボール」は、主人公星飛雄馬が操る変化球である。最初は、父・星一徹の特訓で身につけた抜群のコントロールと豪速球で打者をバッタバッタとなで斬りにする。しかし、体の小ささから来る球の軽さを見抜かれ、速球を打たれるようになった飛雄馬が、その欠点を補うために完成させた超変化球・魔球が、大リーグボールである。

●大リーグボール1号・・・本来、変化球はバットをよけて通るが、これは、逆にぶつかりにいく変化球。

●大リーグボール2号・・・消える魔球。消える打者の直前で、ボールはいきなり消え、再び、ホームベース上で再び浮上、姿を現すのである。

●大リーグボール3号・・・打てない魔球。飛雄馬が、アンダースローから投げる超スローボール。ところが、このスローボールはバットをよけて通るのである。

3種類の大リーグボールを引っさげ、巨人の星としてプロ野球を駆け抜けた星飛雄馬。我々の人生でも、一度や二度、この大リーグボールを投げる必要に迫られることがあるかもしれない。その日のために、大リーグボール1号の投げ方を考えると・・・。

「バットにぶつかりに行く魔球」大リーグボール1号。
大リーグボール1号は、バッターが構えたバットにわざとあてて、凡打にしてアウトにとるという魔球である。
そのために、バッターがバットをどのように構えてもその動きをとらえ、確実にボールを当てる技術。つまり、神業のような読心術と抜群のコントロールが求められる。

■抜群のコントロールの養成

抜群のコントロールを身に付けるために、飛雄馬がやった訓練は
①ボール1個が通る穴を通し その先の壁にボールをぶつけ、再び 穴を通して ボールが返ってくるまで繰り返す。
②揺れる小船の上で、糸で吊るした50円玉にボールを命中させる。
③抜群のコントロールを可能にする筋肉作り。・・・そのために、この漫画の中で、父一徹が作った肉体改造用のギブスが、「大リーグボール養成ギブス」。形はスプリングで編んだベストの様なもので、自分が動かそうとする筋肉にスプリングが負荷となるようになっている。
最初、負荷の大きさに飛雄馬は腕を上げることさせできなかった。(・・・どんだけ!)だが、このギブス、架空のものではなく、実際にあった。
鎌倉市で金型製作所を経営する清水直道さんが開発した「投球マジックリング」がそれ。形は、まさに大リーグボール養成ギブス。少年野球の指導者だった清水さんは、ひじを痛める子供たちが増えているのが気になり、正しい投球フォームを身につけるための器具を開発したものだ。どれだけ効果があるのかは不明だが。

■神業のような読心術

と、いうことで、筋肉を鍛え、抜群のコントロールがあっても足りない。もう一つ必要な能力がある。相手の狙い・気持ち・動きを完璧に予想する「神業のような読心術」である。
そのために 飛雄馬は、ボクシングをやり、剣道をやり、警察の射撃訓練を見る。どれも相手の筋肉や視線の微妙な動きから次の行動を予測する能力が要求されるスポーツであり、これらを通じて、飛雄馬は、ディコーディング(解読)能力を身につける。
それ以外にも、ディコーディング(解読)能力の養成は可能で、日常生活から相手の些細な仕草に気を配る訓練をすることで、高める事ができるという。

さて、以上の特訓で大リーグボール1号を投げる事が出来るようになったら、松坂のリリーフを依頼されるようなことが、もしかしたらあるかもしれない。一生に一度くらい・・・。

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