放送作家村上信夫の不思議事件ファイル

Welcome! 放送作家で立教大大学院生の村上信夫のNOTEです。

属国化は今に始まったことではない

2010年10月30日 15時49分52秒 | 言葉
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

民主党政権100日の真相
朝日新聞政権取材センター 編
朝日新聞出版


18日の参院決算委員会で自民党の丸山和也氏は、事件で逮捕した船長の釈放には、来月横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)に影響することへの懸念があったとし、釈放直後に仙谷由人官房長官と電話で話した内容を“暴露”した。

丸山「判決まで拘置して強制送還すべきだった」
仙谷「APECが吹き飛んでしまう」
丸山「日本が中国の属国になる」
仙石「属国化は今に始まったことではない」

仙谷氏は答弁で「健忘症にかかったか、今暴露された会話の記憶は全くない」と否定。18日夕の記者会見では「何らかのことを友人関係で話したとすれば、国会で質問されるのは不本意だ」と不快感を示した。

(2010年10月18日20時18分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101018-OYT1T01000.htm
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民主党の言語感覚

2010年10月27日 00時54分02秒 | 言葉
世論〈上〉 (岩波文庫)
W.リップマン
岩波書店

世論 (下) (岩波文庫)
W.リップマン
岩波書店

会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社


 民主党の政治家の言語感覚が気になる。
 言葉が軽いと酷評された鳩山由紀夫内閣にもいえたことだが、政治家の発言をめぐって、釈明に釈明を積み重ねる光景が増えたように思う。
 産経新聞に掲載された「赤信号!「熟議の国会」が泣いている 政府首脳の言語感覚」を基に検証する。


●菅直人首相 目くそ耳くそ応酬

 代表質問で登壇した自民党の稲田朋美議員に対して答弁の冒頭、菅直人首相は表情を変えて「私も野党時代、かなり厳しい言葉を使ったが、これほど汚い言葉は使わなかった」。
「官僚が用意した原稿を読まないで」と求めたのにも「それならまず、原稿を読まないでご質問をされるのが筋だ」と応酬をはじめたのである。

●仙谷由人官房長官 はぐらかし系言語

 知りたいことへの質問に対する正面からの回答が乏しい。なんだか、はぐらかされているような気にさせられるのは、仙谷由人官房長官だ。例えば、こんなやりとりである。

西田「改めて官房長官に謝罪を求めます」
仙谷「ええ、質問通告をいただいていれば、精査致すわけでありますが、公式の会見の席で西田先生の名前を出して、そういうことを申し上げた記憶はありません。ただ非公式の席で私が西田先生の名前を出したかどうかは別にして、私に対して名誉棄損的な発言がいろいろなされているということを申し上げたかもしれない。そのことを面白がって書く新聞がありますので西田先生が自分のことだと思って気分を害されたとすれば、それは謝罪します」

「ただ非公式の席で私が西田先生の名前を出したかどうかは別にして」 別にしちゃいけないんですけどね。
その他にもこんなやりとりが・・・。

西田氏「またややこしいことおっしゃいましたね。8月5日の産経新聞の記事は誤報なのですか。誤報なら誤報だとちゃんと言ってくださいよ」
仙谷氏「さきほどから申し上げているようにひとつひとつの報道でそういうものを取り上げてお書きになった新聞記事について論評しないことにしています。今日の産経新聞の報道でも私は憤懣(ふんまん)やるかたない報道のされ方をしているけれどもそれについて私は論評致しません」
西田氏「憤懣やるかたないというのはまさに官房長官、貴方の論評ではないですか。官房長官、答弁を求めてもいないのに出てきたり、謝っているのか、開き直っているのか分からないような発言を繰り返して国会審議を妨害するのはやめてほしい」

さらには、天敵 西田氏とはこんなやりとりも

西田氏「改めて官房長官に謝罪を求めます」
仙谷氏「ええ、質問通告をいただいていれば、精査致すわけでありますが、公式の会見の席で西田先生の名前を出して、そういうことを申し上げた記憶はありません。ただ非公式の席で私が西田先生の名前を出したかどうかは別にして、私に対して名誉棄損的な発言がいろいろなされているということを申し上げたかもしれない。そのことを面白がって書く新聞がありますので西田先生が自分のことだと思って気分を害されたとすれば、それは謝罪します」

謝罪の前に「それは」 この人、人を怒らす言語使いとしては 流石だ。


●麻生並 言葉の誤用

 言葉に関するケアレスミスも多い。麻生太郎元首相を馬鹿にはできない。

 例えば、与党の外交姿勢を評して自ら言ったという「柳腰外交」。

 やなぎ‐ごし【柳腰】
 《「柳腰(りゅうよう)」を訓読みにした語》細くしなやかな腰つき。また、細腰の美人。(「大辞泉」)

 明らかに御用ですよね。
 菅首相の「大風呂敷」発言もそうである。

 おお‐ぶろしき【大風呂敷】
 1 大きなふろしき。2 現実性に乏しい大げさな話や計画。「彼一流の―だよ」
 大風呂敷(おおぶろしき)を広・げる
 現実に合わないような大げさなことを言ったり、計画したりする。(「大辞泉」)

 菅直人首相の「私のイメージする高杉晋作は、かなり大風呂敷を広げた人だ」とか「大風呂敷というのは私はそう簡単にはできないけれども、やりたい、やらなければ駄目だ、というのが私は大風呂敷だと思いますが(質問した自民の)石原(伸晃)氏のお考えはそうではない。残念であります」など。

 ということは、高杉晋作は大言壮語する・ほらを吹くということになり、菅直人首相も実際にはできそうにないことを言ったり計画したりしたい、いや、やらなければならないと思っていることになる。
 いえいえ、民主党は、昨年、充分、大風呂敷を広げたもんだと思いますよ。

●今だ 野党気分の抜けない「評論家的述語」
 
 テレビに出てくる民主党議員の多くは、今だ、批判をしていればよかった時代の癖が抜けないのか、「やるべきだと思いますよ」「そこが問題なんですね」「・・・ができてない」
 与党の議員なら、やるべきなのはあなた!「やろうと思います」「その問題をこう解決したい」「・・・を・・・に修正する方向で」と主語は自分自身だと思う。
 女子高生、女子大生ですら、「この人、自分の立場、わかっていない」と言っている。
 KY(空気読めない)で、YS(自分の役割 知らない)あるいはJK(自分、気付いていない)なのだ。

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ジェームス・ディーンの言葉

2010年10月22日 07時59分03秒 | 言葉
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

ジェームス・ディーン
ジョージ・ペリィ
バジリコ


 昨日、ジェームス・ディーンの言葉を教えてもらった。

「永遠の命と思って夢を持ち、今日限りの命と思って生きるんだ」

 今も人気のあるハリウッドの伝説的な俳優 ジェームス・ディーン。
 ディーンはアカデミー賞の最優秀主演男優賞に2度ノミネートされ、24歳という若さでこの世を去った。
 人の価値は生きた時間ではない。
 
 ドキッとする言葉だ。
 ジェームス・ディーンは、まるで自分の運命を知っていたかのようだ。

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村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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村上 信夫
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開高健の名言

2010年10月19日 23時15分08秒 | 言葉
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

輝ける闇 (新潮文庫)
開高 健
新潮社


 開高健の言葉を幾つか紹介する。

「明日世界が滅ぶとも、今日君は林檎の木を植える」

 関ヶ原の戦いに敗れ捕えられた石田三成は、刑場に引かれていく途中、柿を差し出された。一瞬、食べようとして止める。
 「大望ある者は身をいとう」
 死刑のその寸前まで、リベンジを信じる三成の美学である。

「1日幸せになりたかったら酒を飲みなさい。 3日幸せになりたかったら結婚しなさい。 1週間幸せになりたかったら豚をつぶして食べなさい。 そして、一生幸せになりたかったら、釣りをしなさい。」

 釣り師として名高い開高健らしい。
 釣りにまつわる開高健の名言をもう一つ。

「釣りの話をするときは両手を縛っておけ」

 ほらいるでしょう。両手で「これくらい!」と釣った魚の大きさを表現する人。毎回、話す度に大きくなるんだから。


「酒飲めない人は人生の半分ほども生きていない」

 酒豪でグルメの開高健らしい。


「無駄をおそれてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ」

 仕事の出来ない人ほど、まとめて効率的にやるって言って、大事なことを後回しにしてチャンスを失う。
 そして、無駄と思われることが、ワインも人も成長させる。


「成熟するためには遠回りをしなければならない」

 人生に無駄がないように、植物学者だった昭和天皇は、日ごろからこんなことを言っていたという。
 「雑草という名の草はない」
 僕もあなたも、やがて大きな花が咲く。
 そして、コピーライター出身の開高健らしい豪快なこの言葉。

「3文字足りないの?『そして』って入れといて」


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芙蓉書房出版

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悠々として急げ

2010年10月18日 03時10分17秒 | 言葉
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社


河は眠らない
開高 健,青柳 陽一
文藝春秋


悠々として急げ―開高健対談集 (角川文庫 緑)
開高 健
角川書店


 開高健のことをもう少し書く。 
「悠々として急げ」 
 この言葉は、開高健の口癖だったという。
 ラテン語で、「Festina Lenteフェスティナ・レンテ」。
 焦るな!だが、今、始めなければ何もならない。とでも言うのだろうか。
 人生は長いが、何かを成し遂げるにはあまりにも短い。と言ったら、急げに重きを置き過ぎだろうか。

 1964年、開高健は戦争中のベトナムへ朝日新聞の特派員として乗り込んだ。アメリカ軍の従軍記者として赴いた最前線で、200人中17人しか生き残らなかった戦闘に遭遇し、九死に一生を得る。

 開高健にはふたつの命日がある。遺された者の胸に刻まれている命日(1989年12月9日−食道癌に肺炎を併発して死去。享年58歳)と、逝ってしまった小説家が自らの胸に刻み込んだ命日(1965年2月14日)とである
 65年2月14日。この日、朝日新聞社の特派員として前年の11月からベトナムで取材活動を行っていた小説家と秋元啓一(朝日新聞社出版局出版写真部・当時)の2人はベトナム政府軍と行動をともにしていた。
 午前5時。3個大隊兵員約500名のベトナム政府軍にまじってサイゴン(現ホーチミン)の北西52キロにあるベン・キャット砦を出発。目指すは砦から北へ16キロ、フォク・チャン県北部に広がるジャングルの中の1点−−動力工場や兵器工場、病院や保養施設などまで備えたベトコン第303大隊(兵員約500人)の拠点。これを3晩4日がかりで攻略し、陥落せしめようという大作戦に従軍した。
 午前6時。広大なゴム林を抜けたところで1大隊ずつにわかれ、三方からジャングルをめざす。小説家と秋元キャパ(“戦場カメラマン”としてつとに有名なロバート・キャパの名をとって小説家はこう呼んだ)は主力の第1大隊(兵員200名)に入った。
 午前12時。ブッシュを抜け、広大な葦の沼地をわたり、ジャングルに浸透し、六時間歩いたのち昼食。ベトナム米のおにぎりを食べる。午前12時半。ベトコンの服や食糧や手榴弾などの補給庫を発見。その5分後−−。
『とつぜん木漏れ陽の斑点と午後の白熱と汗の匂いにみちた森のなかで銃音がひびいた。マシン・ガンと、ライフル銃と、カービン銃である。正面と右から浴びせてきたのだ。』(『ベトナム戦記』朝日文庫)
 これから数時間、ジャングルの中で孤立無援となった第1大隊はベトコンの猛射、乱射にさらされ続けることになる。アリ塚の陰に回り込み、倒木の陰に身を伏せ、走り、逃げまどいながら小説家は血なまぐさい戦闘シーンをその目に焼き付けた。秋元キャパはひたすらシャッターを押し続けた。
 ふと気がつくと兵員200人の第1大隊はわずか17人になっていた。小説家が確認できたのは、自分と秋元キャパを含めてたったそれだけだった。死を覚悟した。
『私たちはたがいの写真をとりあった。シャッターをおしたあと、ふたたび枯葉に体をよこたえた。』(『ベトナム戦記』) 口にこそ出さなかったが、互いに“遺影”を撮りあっていることは「痛烈な透明さの中でわかっていた」と小説家は後に記している。
 午後6時。脱出。命からがらジャングルから生還した。生き延びることができた。
 この日から2月14日が2人の命日になった。(ラピタ04年4月号「小説家の“命日”」より)

 文字通り身も心もボロボロになった開高は、「戦争に勝者も敗者もいない」という米軍のある曹長から聞いた言葉を。『輝ける闇』『夏の闇』『花終わる闇(未完)』のベトナム3部作、『ベトナム戦記』にまとめる。
 開高健は、58歳で世を去る。 

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河は眠らない

2010年10月18日 01時53分41秒 | 言葉
奥只見物語―イヌワシ舞う渓谷
足立 倫行,秋月 岩魚
世界文化社


夏の闇―直筆原稿縮刷版
開高 健
新潮社


 作家・開高健が愛した奥只見湖へ行っていた。
 上越新幹線浦佐駅から車で一時間。奥只見ダムが作ったダム湖「奥只見湖」へは、日本最大級のダムを作るために掘られたトンネルシルバーラインを通って向かう。
 このトンネルがなんとも渋い。ダム工事のために掘られた当時そのまま、織田裕二主演の映画「ホワイトアウト」の撮影に使われたというが、車が通れるギリギリの大きさ、工期優先のためだろう、運転手の生理を無視した長い長い単調なトンネルだ。
 それを過ぎると、今年の猛暑でも、最高29.8度にしかならなかったという別天地「銀山平」に辿り着く。

 江戸時代、銀山が開発され、一時は人口一万を越え、3つの大伽藍、遊廓まであったという。が、今は、ロッジや民宿が10軒ほど、後はダムに沈んだ村である。
 この湖に、体調50センチ級の岩魚や桜鱒が、悠々と泳ぐ。元々、湖に流れ込む川には、これらの魚がいたのだが、奥只見湖が出たことで餌の小魚が繁殖し、それを食して成長した。
 既に紅葉が始まり、シルバーラインで何台もの観光バスとギリギリすれ違った。
 
 開高健は、ベトナム戦争の従軍記「夏の闇」を書きあげるため、ひと夏、ここに逗留する。
 大の釣り好きとしても有名な開高健は、この地が気に入り、
「銀山湖畔の水は水の味がし、木は木であり、雨は雨であった」
と奥只見湖を表現した。
 大物が釣れる湖として有名だった奥只見湖での乱獲を憂い、そこに注ぐ川の全面禁漁など、環境保護の概念が定着する前の日本で、自然を守る活動を地元の人たちと一緒に始めた。

 先に、この夏の猛暑も及ばない別天地と書いたが、それでもジワリ影響はあったようで、いつもなら岩魚や桜鱒の遡上が見られるこの時期に、全く見られない。
 水温が3~4℃高いのだという。環境の変化は、日本のここ各地に現れている。


 湖の傍に立つ、「河は眠らない」という開高健の文学碑に立ち、今日の様を開高が知ったら何というのだろうかと思った。

 
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
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大失言 政治家たちのこのコトバ

2010年06月09日 22時34分57秒 | 言葉
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ 351)
村上 信夫
中央公論新社

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コラム「大失言 政治家たちのこのコトバ」

政治家の発言が失言となるかならないかは、次の要素によって決まるという説がある。①発言内容 ②国内の政治的要因 ③外交問題に発展するか否か ④マスコミが注目す
るかどうか。(川野徳幸『閣僚失言の政治学』から要約)。
少し説明を加えると、川野説は、閣僚の発言に限っての説で、②は発言段階の政権の存立基盤と与野党の勢力関係。で、政権が連立政権などではなく、盤石の基盤があれば多少の発言は問題なくなる。あるいは、与野党拮抗の政治情勢の場合、ちょっとした発言も政局に結びつく大きな発言になるという。
この要素は、不祥事発生時の記者会見でも同様で、トップの一言が失言となり、その企業を危うくするのは、①発言内容 ②起こした不正の悪質度 ③社会へ与えた不安・不信がどの程度か ④マスコミの注目度 の掛け算とみることができる。
次に、牧野武文氏の『大失言』から、政治家の有名な、ある意味、政治の動きを変えた失言をあげる。

「我が国の防衛ができないという場合は、その基地を侵略してもよい」
鳩山一郎首相(昭和31年)
「憲法九条を破棄するときがきた」岸信介首相(昭和33年)
「現行憲法は他力本願。やはり軍艦や大砲がなければだめだ」
倉石忠雄農林大臣(昭和43年)
「国旗、国歌を法制化するときがきた」        田中角栄首相(昭和49年)「戦後の平等教育には誤りがあった。教育勅語を全て否定したのは誤り」
砂田重民文部大臣(昭和53年)
「軍隊も持てないような憲法を作られて、もがいている」
中村正三郎法務大臣(99年・平成11年)「日本も核武装したほうがいい」        西村慎吾防衛庁政務次官(99年)「日本は天皇を中心とした神の国」           森喜朗首相(2000年)

 自民党の森喜朗元首相(在任00-01)は、優勝の報告に来た横綱貴乃花に「今日は痩せて見えるだろう」(00)IT革命を「イット」(00)など失言が多く、その度に視聴率が下がり、とうとう1ケタになった。
最後は、えひめ丸が米原潜と衝突し沈没した事故(01)の後、ゴルフを続行していたことを問われ「連絡をとりやすいと言われ、ゴルフを続行した」と発言し、世論の批判を浴びた。本来は30分以内に危機管理センターに着く必要があるのだが、百歩譲って言い分を認めても、「ゴルフをやる必要はないだろう」は普通の感覚だ。
08年9月1日、福田康夫元首相(在任07-08)が、突然辞意を表明した記者会見で、他人事に聞こえると批判した記者に切れ発した、「あなたとは違うんです」発言は、歴史に残る失言となった。
その福田元首相の後を継いだ麻生太郎前首相(在任08-09)は、自分の内閣の官房長官から「オウンゴールだけはしないで」と言われるほどに失言の多い首相だった。
 就任直後にカップ麺の値段を問われ、「いま400円くらいします?そんなにしない?私、最近自分で買ったことないので」 (08)失言とは言えないが、庶民感覚がないことがバレた。その他、漢字の読み違えも多く「未曾有」を「みぞうゆう」と読み、時ならぬ漢字ブームを巻き起こした。
政権を失うこととなった09年の衆院選でも、学生との対話集会に出て「金がないなら結婚するな」(09)と発言、会場を凍りつかせた。
同年、政権を自民党から奪取した民主党の鳩山由紀夫首相も、宇宙人といわれる感覚が失言を呼ぶのか、高齢者たちを訪ねその前で、「元気な高齢者をいかに使うか。この人たちは皆さんと違い働くことしか才能がないと思って下さい。」(10)に、加えて「80過ぎて遊びを覚えても遅い」とか「60過ぎて、80過ぎて、手習いなんて遅い」とも述べる。
少子高齢化の時代への励ましのつもりのようが、鳩山首相の言葉には、高齢者はやることがないから「使う」べき。あるいは、「使ってやる」の響きが感じられる。
外交問題でも、10年5月までに決着すると内外に公言した沖縄の普天間基地問題を「普天間なんて(地名は)知らなかったでしょう」(10)。国会内で後援者らと懇談し、自身の「政治とカネ」問題について「来週あたりに決着する」と検察へ圧力発言(10)。発展と言うべきところを「日米同盟を「持続的に撤回」(10)と失言の連続。
 その度に、首相も官房長官も釈明に追われたが、もちろん社会の理解を得るには至らず、支持率は下がる一方。
「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」という言葉がある。
君主の言葉は一度出た汗が体内に戻らないように、一度発せられたら取り消すことができないという意味である。
 失言と言う言葉にはうっかりというニュアンスがないわけではないが、政治家も、そして企業のトップも、自分の一言の重みを感じる必要がある。
 そう言えば、記者会見で「今のはなかったことに」と発言、失笑をかった大企業トップもいた。

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一番、一番!真剣勝負
朝青龍 明徳
日本放送出版協会

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