放送作家村上信夫の不思議事件ファイル

Welcome! 放送作家で立教大大学院生の村上信夫のNOTEです。

山頭火 45歳 秋 最後の旅に出た。

2008年11月30日 15時18分20秒 | Weblog
俳人種田山頭火は、本当の自分の句を作りあげること、あれこれと厄介をかけないで、ころりと死ぬことが願望でした。その生活は無一物の乞食であり、いつも死を考えながら、死を押さえ込むための活力として、放浪し、俳句を作りました。彼の俳句は、どうしようもなく自由で、やさしくて、さびしくて、かなしい。

 歩かない日はさみしい
 飲まない日はさみしい
 作らない日はさみしい
 ひとりでゐることはさみしいけれど、
 ひとりであるき、ひとりで飲み、ひとりで作ってゐることはさみしくない。

十二月十四日 晴。
藤岡さんを局に訪ねて郵便物をうけとる、いずれもうれしいたよりであるが、とりわけ健からのはうれしかった、さっそく飲む、食べる、――久しぶりに酔っぱらった。夕方帰宿すると、留守に高橋さんが来訪されたそうである、新居の吉報を齎らして、――すみませんでした。
ぐっすり寝る、夢も悔もなし、こんとんとしてぼうぼうばくばくなり

 十二月十五日 晴(重複するけれど改めて記述する)
とうとうその日――今日が来た、私はまさに転一歩するのである、そして新一歩しなければならないのである。一洵君に連れられて新居へ移って来た、御幸山麓御幸寺境内の隠宅である、高台で閑静で、家屋も土地も清らかである、山の景観も市街や山野の遠望も佳い。京間の六畳一室四畳半一室、厨房も便所もほどよくしてある、水は前の方十間ばかりのところに汲揚ポンプがある、水質は悪くない、焚物は裏山から勝手に採るがよろしい、東々北向だから、まともに太陽が昇る(この頃は右に偏っているが)、月見には申分なかろう。
新居第一夜のねむりはやすらかだった。
新“風来居”の記
“無事心頭情自寂
 無心事上境都如”(自警偈)

以後、山頭火は松山に腰を落ち着け、翌昭和15 年10月11日、脳溢血で亡くなった。59歳だった。


企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
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村上 信夫
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山頭火 45歳 秋 旅に出た。

2008年11月30日 15時14分11秒 | Weblog
 俳人山頭火は、45歳にして家族を捨て旅に出ます。行迄行脚といえば格好いいが、山頭火の旅は、煩悩と泥酔と反省の繰り返し。
呑んで人生を詠み、呑みすぎて翌朝、痛恨の思いに囚われる。人間の強さと弱さ ・・・
「T字路を左に曲がると、湯温山龍泉寺があり、寺に隣接して今にもくずれそうな四畳半一間きりのあばら家が建っていたという。それが「風来居」と呼ばれた山頭火の庵である。温泉三昧、酒三昧の湯田温泉での一浴一杯の極楽生活に分かれを告げ、死場所をさがす最後の旅に出るために、山頭火は「風来居」をあとにした。昭和十四年九月二十七日のことである」。

十一月一日 晴、行程七里、もみぢ屋という宿に泊る。
――有明月のうつくしさ。
今朝はいよいよ出発、更始一新、転一歩のたしかな一歩を踏み出さなければならない。七時出立、徳島へ向う(先夜の苦しさを考え味わいつつ)。
このあたりは水郷である、吉野川の支流がゆるやかに流れ、蘆荻が見わたすかぎり風に靡いている、水に沿うて水を眺めながら歩いて行く。

日が落ちてから、籏島(義経上陸地といわれる)のほとりの宿に泊った。今日は興亜奉公日、第二回目、恥ずかしいことだが、私はちょっぴりアルコールを摂取して旅情をまぎらした。同宿四人、修業遍路二人、巡礼母子二人、何だかごみごみごてごてして寝覚勝な夜であった。

(十一月一日)
旅空ほつかりと朝月がある
夜をこめておちつけない葦の葉ずれの
ちかづく山の、とほざかる山の雑木紅葉の
落葉吹きまくる風のよろよろあるく
秋の山山ひきずる地下足袋のやぶれ
お山のぼりくだり何かおとしたやうな


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年賀状の季節に 喪中葉書が2通

2008年11月30日 04時00分34秒 | Weblog
年賀状の季節になった。

「元朝の 見るものにせむ 富士の山」宗鑑
  (元朝・・・元旦の朝 せむ・・・せまる)

「三椀の雑煮かゆるや長者ぶり」蕪村

「薄墨のたよりなき色や懸想文」村上鬼城

「初夢や金も拾はず死にもせず」夏目漱石

などと正月の俳句を読み直してみたりしていた。住所の整理に、喪中葉書が何通か、その中に、学生時代の友人の名前が2人ほど。大学を卒業してから、会うことも殆どなくなって、年賀の挨拶だけだったが、ショックだった。
年賀状は、書く前から喜びと悲しみを与えてくれる。

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今日11月25日(火)「新・温故知人」(柳家花緑)は、俳優・峰岸徹さん。

2008年11月25日 04時55分17秒 | Weblog
おはようございます。今日11月25日(火)9時25分頃~の「トクだね」(小倉智昭、佐々木恭子、笠井信輔)「新・温故知人」(柳家花緑)は、俳優・峰岸徹さん。渋い演技の名脇役で、大林宣彦監督の映画には欠かさない俳優でした。峰岸山は、56歳で、突然、トライアスロンを始め、晩年は、トライアスロンに夢中になります。50代半ばに、身体を鍛え抜くことで、リセットのようなものを考えたようです。来週は、X-JAPANのhideさんです。
放送が終わったが、11月23日(日)午後、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で松本幸四郎・市川染五郎が、今、国立劇場でやっている明智小五郎原作「人間豹」の歌舞伎作りの舞台裏を放送した。人間豹を演じる市川染五郎さんが、本当に素晴らしかった。ちなみにナレーションは、貫地谷しほりさんです。
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総額2兆円の給付金論争。

2008年11月16日 08時39分43秒 | Weblog
 おはようございます。
 総額2兆円の給付金について数日、テレビのニュースも新聞も「反対!」との報道が続いている。

 そもそも、この案は、公明党の定額減税から始まり、福田赳夫の退陣を経て混迷している。数ヶ月前は生活支援が目的だった政策が、その後の金融危機を経て、今、求められるのは景気対策。その変化にも関わらず、提案者の公明党が実施に固執しているせいでもあるのだ。
 この混乱、第一は政府与党だが、第二は連立与党の公明党の責任も大きい。先の地域振興券と同じ道であり、それに対する評価の違いともなる。
 当時、地域振興券は、ウィキペディアでも触れているように、与党である自由民主党からも「ばら撒き政策」だと強い批判が挙がったが、公明党の強い要望により導入された。当時、当時の堺屋太一経企庁長官は、「高度に政治問題であり、経済政策とは思っていない」と語ったように、公明党とりこむ政治的思惑の産物だった。また、内閣官房長官であった野中広務は、「地域振興券は公明党を与党に入れるための国会対策費だった」と後に話したともいわれている。

 そして、この政策を実行した内閣は、1月14日、自民党と小沢一郎が代表の自由党の連立による小渕第一次改造内閣が発足し、そのもとで実施された。10月5日にはは公明党がくわわり、自自公連立政権が発足した。
この時、「世界一の借金王」と自ら公言したように公共事業の乱発しのも小渕・小沢政権である。わずか一代で100兆円を超える借金をつくった。経済ブレーンは、リチャード・クー氏で、今の麻生太郎の経済の師匠である。ちなみに亀井静香氏など、小泉政権と袂をわかった人たちもまたクー氏を講師に勉強会をしていた。
 小沢民主党は、給付金を「選挙目当てのばらまき」と批判しているが、過去の反省はどこにあるのだろうか・・・。それは、北朝鮮政策への反省のない、社会民主党や、二代続けて政権放り投げに反省しない自民党も同じなのだが。
 給付金の賛否両論、参考まで引用する。

(参考)松山市議 八木健冶氏のHPから
http://yagi.typepad.jp/413/2008/11/post-d4cb.html

定額減税の実施が、なぜ場当たり的で人気取りなのかについては、投稿者が論及していないのでよくわからないのだが、ただ投稿の論旨から判断すると、国家財政が潤沢ではない時期に実施するのはいかがなものか、だから場当たり的で人気取りということらしい。定額減税は、赤字国債を発行して実施するのではなく、財源もはっきりしている。
 財政が厳しいことだけを理由にして、定額減税のような国民の生活を下支えし、消費を喚起する政策について、場当たり的で人気取りというのであれば、民主党がマニフェストに掲げている、1人月額2万6000円のこども手当、農業の「戸別所得補償制度」、はては、高速道路の全線無料化は、将来への見通しのない人気取りの最たるものではないだろうか。
 もう一点、99年の地域振興券については、、<今回の定額減税は、かつての地域振興券と同じ>と言っている。そこで公明党が提唱した地域振興券について、マスコミは「ばらまき」批判を展開し、「世紀の愚策」とまで言ったことは記憶に新しい。しかし、全国三千百二十万人を対象に総額七千億円が投じられた地域振興券の効果について、当時の経済企画庁は、約九千世帯を対象に実施したアンケート調査を基に、使用額の三二・七%が新たな消費を呼び起こした。これは、GDPの個人消費を○・一%押し上げ、波及効果を含めるとGDPを年率○・一%も押し上げた。そのことからも地域振興券が個人消費を呼び起こすとともに、商店街の再生など地域活性化にも一定の役割を果たしたことは間違いない。
 地域振興券は総額七千億円だったが、今回の定額給付は、国民の全世帯が対象であり、総額は二兆円と、前回の地域振興券と比べても、桁違いに大きい。金額も単純計算で四人家族で六万円超、年度内に実施され、支給は現金かクーポン券にするか、さらに子ども、高齢者加算も検討されているという。キーワードは即効性。GDPの六割が個人消費で占められていることをからも、疲弊しつつある地域の商店街をよみがえらせ、経済に活力を取り戻す起爆剤として期待したい。


(参考)「日本共産党の知りたい聞きたい」2000.1.24http://www.jcp.or.jp/faq_box/001/200124_faq.html

公明党が消費喚起に力があったと宣伝してきた地域振興券(商品券)は、もともと消費刺激・地域振興の効果が疑問視されて「天下の愚策」といわれ、”自民党は、公明党をとりこむ思惑から、公明党の「商品券」構想を受け入れた”と指摘されたものでした。地域振興券は、九八年の臨時国会で七千億円の予算がつけられ、九九年一月から四月にかけ、十五歳以下の子どものいる世帯、老齢福祉年金などを受給する六十五歳以上の高齢者を対象に、一人二万円分が配られました。
 昨年八月、経済企画庁は、地域振興券の消費喚起効果を試算し、「消費の押し上げ額は二千二十五億円程度」で、GDP=国内総生産の個人消費を〇・一%程度押し上げると推定されるとのべました。これは、消費刺激効果が小幅でしかなかったことを政府自身が裏付けるものでした。
 昨年十二月に発表された、経済企画庁の九九年版『経済の回顧と課題』(通称・ミニ経済白書)では、個人消費を〇・一%程度押し上げるという推計も消え、むしろ交付金額の多くが貯蓄に回されたことを強調するものになっています。年金者世帯では「地域振興券で受け取った額の六五%をとりあえずは貯蓄に回し」、子ども世帯も「年収が多いほど貯蓄に回った比率が高いが…年収が四百万円未満の世帯でも、六八%を貯蓄に回し」たとのべています。

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11月18日の)「新・温故知人」(柳家花緑)は「酒と泪と男と女」の河島英五さん。

2008年11月15日 15時39分28秒 | Weblog
早いもので、あっという間の一週間。来週11月18日(火)9時25分頃~の「トクだね」(小倉智昭、佐々木恭子、笠井信輔)「新・温故知人」(柳家花緑)は、「酒と泪と男と女」「野風増」「時代おくれ」「生きてりゃいいさ」などの中間管理職応援ソングの河島英五さん。
♪ 忘れてしまいたいことやどうしようもない寂しさに という人生の苦渋に満ちた歌詞を、河島英五さんが書いたのは高校生の時、18歳の時だった。東大阪の町工場を経営する両親のもとに生まれた河島さんの周囲には、呑んだくれの男、どうしようもない女、悲しい男と女が沢山いた。河島さんの家も倒産している。それを見ながら、書いた詩なのだ。しかし、この歌が売れるまで6年かかる。やっと歌に年齢に追いついたのだ。そんな名曲誕生の背景を紹介する。
夕刊フジのコラムでも掲載する。

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「よみがえれ緑の大地 ~中国・黄土植林プロジェクト17年目の挑戦」(ナビゲーター:宍戸開)

2008年11月12日 08時50分17秒 | Weblog
おはようございます。

昨日は、「トクだね」(小倉智昭、佐々木恭子、笠井信輔)「新・温故知人」(柳家花緑)で巨匠市川崑監督の本番。

11時30分から3時30分、汐留のレストランで、静岡の制作会社のPDと台本の打ち合わせ。

16時30分からは、BS朝日(衛星5チャンネル)で11月29日(土)19:00~20:55に
放送する「よみがえれ緑の大地 ~中国・黄土植林プロジェクト17年目の挑戦」(宍戸開さんがナビゲーター)のオフラインプレビュー。これは、砂漠化が進む中国・黄土高原で、17年間緑化活動を行っているNGO「緑の地球ネットワーク」の高見邦雄さんの活動を、一年間追った2時間のドキュメンタリー。

家に帰ったのは24時近く、三毛猫の実有が寝ぼけながら、玄関まで出迎えに来た。猫なりに、主人に気をつかうのだろうか。と、喜んだ瞬間、お帰りの一声、ミューと鳴いて義理を果たすと、自分のベッドに帰ってしまった。(おい!そりゃ、ないだろ)
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今日の「トクだね」「新・温故知人」(柳家花緑)は、市川崑監督。

2008年11月11日 05時17分10秒 | Weblog
今日の「トクだね」(小倉智昭、佐々木恭子、笠井信輔)「新・温故知人」(柳家花緑)は、先週、小室哲哉の逮捕で、急遽、延期となった巨匠市川崑監督。
明智小五郎シリーズなどの横溝正史シリーズや「細雪」「ビルマの竪琴」「炎上」「東京オリンピック」など、生涯に76本の映画を撮った市川崑監督の半数近くを書いた市川崑監督の半数近くを書いた作家、和田夏十さんは、実は市川崑監督の奥様で、夫婦二人三脚の映画作りを紹介する。
ちなみに、次回11月18日は、河島英五さん。

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松本幸四郎「勧進帳千回公演」kaguraさんからのコメントへ

2008年11月11日 05時09分07秒 | Weblog
おはようございます。

kaguraさんから、松本幸四郎さんの東大寺奉納勧進帳千回公演に書いた記事へのコメントを頂いた。ありがとうございます。
松本幸四郎さんの「勧進帳千回公演」に向けた旅を取材し始めたのは、秋田県で行われた900回公演から。もちろん全公演を追いかけられたわけではないが、何度も取材し、また、その代わり、齋ちゃんのお目見得や、「ラ・マンチャの男」、「連獅子」なども取材した。改めて膨大な素材を見直し、同じ役を千回続けるというのは、大変なことだと思った。自分がやりたい、やれるだけではなく、まず、なんと言っても客がもとめなければ続けられない。求められ続けなければ、千回など達成できないのだ。その重圧はどれほどか・・・。

今、まさに仕上げの真っ最中。放送は、12月21日(日)14時からの予定。
ご期待ください。

以下は、頂いたコメント。


【涙がとまりませんでした (kagura)】 2008-10-30 23:15:30

プログラムに特番ありとあったので
いろいろ調べていて日記を拝見いたしました。
私、15日東大寺で勧進帳を観劇しました。
あまり良いお席ではなかったので、992回目の
勧進帳を五反田で3列目で事前チェック
歌舞伎の小屋ではないので花道もなく
まるでカーテンコールのように飛六法をした
幸四郎さん、東大寺を前に気合いを感じました。
東大寺の勧進帳ですが、同じ演者、地方さんで
五反田と両方見た甲斐がありました。
多分、あの日は八百万の神々が東大寺に集まったのではないでしょうか
素敵な舞台でした。お月さまも綺麗でした。
勧進帳は何十回も観ておりますが最高の舞台でした。
最後は涙が止りませんでした。
歌舞伎では珍しいカーテンコールに
思わずスタンディング-オベーションをしてしまったのですが
独りだけでちょっと寂しかったです。
特番すごい楽しみです。
失礼いたしました。

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『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』を見た・・・。その2

2008年11月10日 08時27分27秒 | Weblog
おはようございます。

 阿佐ヶ谷のライブ居酒屋「阿佐ヶ谷ロフトA」で、東海テレビが今年5月30日に放送した『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』を見たことは、前回、書いた。08年日本民間放送連盟賞報道番組部門「最優秀」賞を受賞している。
 この作品を見て思ったことをもう少し、書こうと思う。作品は、「光市母子殺害事件」をあの悪名高い、安田好弘弁護士などの弁護団側から撮ったドキュメンタリーで、森達也さんのドキュメンタリー映画『A』『A2』に通じる手法である。
 同じ場面でも、弁護士側から見るか、被害者側から見るかでは、驚くほどその景色は違う。前述の『A』で森達也監督が見せてくれたのは、ストイックな求道者たちをよってたかって弾圧する“恐怖の世界”である。どんな「微罪でもオウム信者を押さえろ」という検察の方針は、警官をどけようとしただけの信者を公務執行妨害で逮捕したり、オウムと言うだけで町から追い出そうとする人々の集団ヒステリーぶり。・・・ 同様のことが、『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』でも感じられる。できるだけ抑制して構成、編集してはいるが、何がなんでも、被告を死刑にしたい、復讐に燃える被害者家族、それに乗じて報じるメディア、世論と、例えは不謹慎だが、黒人の犯罪者にリンチを叫ぶアメリカ南部のKKKと白人群集を描いた映画のワンシーンを連想させた。それは、しょうがない。弁護士側から撮影すると言うスタンスを採用した以上、「被告寄り」という批判、それは甘受せざるをえない。

 別の資料には、斉藤潤一ディレクターは、「悪い奴を弁護するのはけしからん、という世論に、違和感があった」。と振り返るように、吹き荒れるバッシングの嵐への反発もあった。全国から21人が集まって新弁護団は、被告が「殺意はなかった」と告白したとということで、それを懸命に検証する。世論は「死刑回避の荒唐無稽な言い逃れ」と非難し、弁護団にまで「鬼畜」「悪魔」の言葉が浴びせられる。事務所の看板が壊され、脅迫の手紙が届いた。それでも、弁護士たちは広島に通い、「被告の言葉が本当なのか、どうか」、被害者の首に残った指の跡から、犯行時の心理を推測する。事件当時の足取りも丹念に辿り、被告が体験した父親からの虐待と母親の自殺。それにより、精神年齢が幼くして止ったという鑑定を集め、多くの材料を突き合わせ、被告の告白は事実ではないかというストーリーにいたる。
 ここで、この作品の是非を問うつもりはないが、2点ほど指摘すると、この作品の主人公は、あの安田好弘弁護士ではなく、名古屋法律事務所所属の村上満宏弁護士であり、冒頭、本人紹介の狙いではあるだろうが、村上満宏弁護士が以前に担当した1994年の『長良川・木曽川リンチ殺人事件』を紹介している。被告は、19才の少年。一審は無期懲役。名古屋高裁での二審では、死刑判決。村上満宏弁護士は、被告に被害者遺族に手紙を書く事を勧め、被害者遺族と加害者の少年を接見させ、被害者遺族が、『○○ちゃんの分まで生きて』という言葉をかけられたということを、今回の弁護を引き受けた理由として伝える。
 ここに既に、意図か結果かは別にして、幾つかの制作者の施した伏線がうかんでくる。
 さらに、被告である元少年(*これも変な言葉だと思うのだが)は、父親のDVが事件の背景にあるとし、母親に暴力を振るい続ける父親に日々怯えながら暮らしていたことを伝える。暴力は少年にも向けられ、母親も精神に異常をきたすようになった。少年が12才になったある日、ガレージで首を吊って死んでいる母親を見つけてしまい、以後、彼の成長はここで止まった。精神鑑定も行い、その結果は、12才程度の精神年齢だというのだ。
 弁護団を追う以上、彼らの論理、仮設と検証が、作品のストーリーにならざるをえない。

 だが、僕は途中から、違和感を覚えていく。理由は2つある。やむをえないことだが、冤罪の被害者となろうとする可愛そうな元少年を救う、正義の人として弁護士たち自身が思い、描かれていること。そして、それにつれ、2人の被害者の死が軽ろんじられていることだった。
 後者に関していえば、被害者の死に対し、弁護士とどんな言い方をしようと、この元少年が何の関係もない他人の家を突然、訪ね、勝手な妄想(・・・弁護団が言うように母親に甘えたかったとしても、それは一方的で勝手な思いである)で、2人の人間を死なせてしまったことは事実である。その事実に対する弁護士、作品は真摯に向き合っているのだろうか?という疑問である。

 僕は冤罪被告のドキュメンタリーを何本か作っている。それは、社会的な意義があり、冤罪によって失われた被告・その家族の時間を訴えるものである。だが、その時にさえ、ふいに被害者の死とその遺族について、彼らの失い、止まったままの時間を思った。それは、冤罪の被告とはまったく関係のないことだけど、この被告を恨む事で生きてきた被害者遺族は、明日からどうするればいいのか。殺された人の魂は何に祟ればいいのか?僕は、被害者家族に話を聞くことを主張し、取材にいったときに、残された娘さんが、「それでも、父は殺されたんですよね」と語った言葉に衝撃を受けた。これは、冤罪被害という事件ではなく、本来は、XXX殺人事件である。という事実が、ともすれば忘れ去られることの怖さだった。
 だからこそ、冤罪は許されないということなのだが、冤罪告発報道や弁護団の多くは、事件そのものの被害者・遺族を忘れ去っていることに対して感じた違和感である。
『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』を見て、このことを思った。
 
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