放送作家村上信夫の不思議事件ファイル

Welcome! 放送作家で立教大大学院生の村上信夫のNOTEです。

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コメントを頂きました。ありがとうございます。

2010年12月20日 06時36分52秒 | 不祥事対応の専門家として
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社


Masayaさんから またコメントを頂きました。 
丁寧なコメントありがとうございます。
勉強になります。
年末の忙しさで、返信が遅れました。すみません。
長くなるので、こちらに書きます。

>まずは「抱える問題点」の洗い出しをして、その改善をする。組織全体で、“目的意識の共有”が図れる様にする――それが、早道では無いか、と思うのです。

ご指摘の通りだと思います。そのことでは、本書でも例えばトップの責任として、「知るべき体制を作ってこなかったことも含めトップの責任」p37「背景には・・・」p77など抱える問題点に向き合う視点は、再三、指摘しています。が、「会社をつぶす経営者の一言」(中公新書ラクレ)の趣旨は、第一に「起こったことにどう対応するか」という危機管理の事例を挙げることにあり、必ずしもご指摘の部分をカバーするものではありません。
その点は、物足りないとすればご指摘の通りだと思います。が、限られた紙面、お許しください。
組織全体でどう対応するか及びその具体的な手法の一部は、拙著「企業不祥事がとまらない理由」(芙蓉書房)などで触れています。お時間あればご覧ください。

ただ、同時に思うのは、Masayaさんが指摘される組織全体で、“目的意識の共有”の企業の目的は何かということです。
本来、企業の目的は、その生産、サービスをもって消費者に利便を提供することではないでしょうか?
菓子メーカーのF家はなぜ批判されたのか。
これは、安全安心の問題のように議論する向きもあり、マスコミの一方的バッシングと結論づける向きがあります。

・・・ もちろん一部に行き過ぎがあり不勉強な記者がいたことは大いに反省すべきです。その点は、同業者として悲しく思いがあります。

が、本質は「ママの味」を標榜している企業が、後に第3者会議の報告書でも認めているように不潔極な工場、自らが決めたルールを平気で破っていることにあり、そんな企業が作ったものを自分の手で我が子に食べさせたという母親の気持ちと向き合えるかということにあるのではないでしょうか?

そのことを、本書で「KY発言」として指摘していますが、実は、KYと呼ばれる発言は、その企業が、自分たちが何に依ってたつ会社なのか、本来の目的を忘れていることから出ているように思います。

ある大手ハムメーカーの井戸水汚染でも同様の問題が起こりました。汚染の程度は自然界にもたまにある程度。記者会見に臨んだ役員の発言にもそう考えている様子が見え隠れしました。その通りです。彼らの立場に立てば。
しかし、それを見た、たった今、自分の手で、そのハムを我が子に食べさせた母親はどう思うのでしょう・・・。
安全であることを根拠と共に伝えることと同時に、・・・それはマスコミの役割でもあります。事実、この時の報道ではその点、指摘した内容も多かった。・・・、そのメーカーは自分たちが、子供たちに安全・安心な食品を提供する企業として(これが、この企業の活動の目的だと思います。)、何が足りなかったか反省し、何をすべきか説明すべきだったのではないでしょうか。それがなかったため、世論は沸騰しました。

カネミ油症事件の現在をご存知でしょうか?
50年たっても今だ続くこの事件。直接、被害者となった方々の苦しみはもちろんですが、僕が苦しかったのは、その油で料理したものを我が子に食べさせた母たちの終わりのない贖罪です。
我が手で我が子に与えた・・・。
母たちに何の落ち度もないのですが、繰り返し、自分を責めていました。

本書を書くに、500事例の不祥事についてできるだけの資料に当たり、記者たちに話を聞きました。当事者となった企業の視点で書かれている資料も読み、報じられた企業の関係者にも会いました。
その中で感じるのは、不祥事と報じられケースで一番多いのは、実は、まじめな人たちだということです。まじめだということは、一生懸命、事実を組み立て答えようとしています。・・・そこに間違いはないのですが、その時、自分たちが「何に依って立つ企業なのか」本来の目的を忘れているケースが多いのです。まじめに自分たち側からの事実を組み立てているので、かい離していることに気づかいない。大変申し訳ない、意地悪な言い方をすれば、自分たちの都合でのみ話しているように聞こえる発言、そこから前述のKY発言が生まれます。

Masayaさんがご指摘になっている「目的意識」とは、繰り返しますが、【自分たちが何に依って立つ企業なのか】、その商品を食べる、利用する人たちはどんな場面でどんな風に食べているのかをしっかり意識するところから生まれるものであるべきではないかと思います。

僕の本を丁寧に読んでいただき ありがとうございます。

企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
グラフ社

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不祥事の対応はトップの人間力

2010年07月16日 08時28分57秒 | 不祥事対応の専門家として
ふじこ丸さんから こんなコメントを頂いた。
ふじこ丸さん ありがとうございます。


「経営者を、ひいては組織を守るには (ふじこ丸)」(2010-07-01 14:54:48)

 村上さんの『会社をつぶす経営者の一言』、拝読しました。現在の仕事の関係で京都教育大学の例など、身につまされる思いで読みました。
 単純な特効薬はないと思いますが(京教大の例で言うと、加害者が複数の場合は強姦が親告罪でないことなど、法令の知識も必要ですよね)、トップを支える事務方の力量というか、第三者をいかにして意識に上らせるか、難しいことだと思います。
 もし、私が日本相撲協会の広報スタッフだったとしたら、武蔵川理事長をどうやって救うだろうか。
「このまま撮り続けるなら、記者会見やめるよ」
 こういう意識とセンスをもったトップに対して、部下としてどう接すればいいのでしょうね。

 過去の不祥事を分析すると、結局、トップの人間力という答えに帰結します。その場合、広報の役割とすれば、「失職覚悟でトップを諌める」か、やっぱり「長いものにまかれる」の二者択一しかありません。
 あえて精神論で言えば、「君間違えるならば、臣、死を賭して諌めるべし」となる。
 守るべきは何か、それを思うしかない、そう思うのですが・・・。

会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

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企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
グラフ社

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記者会見でメッセージを伝えるためには

2010年06月30日 07時00分41秒 | 不祥事対応の専門家として
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

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 メッセージを伝えるために

メッセージの準備
 社長やスポークスパーソンは、事前に用意した文書だけではなく、“自分の言葉”で語るメッセージを準備するべきだ。緊張するのはわかるが、用意した文書をただ読み上げるだけだと、どうしても、誠意がない、反省がない、という印象を与えてしまう。これは、立場を代えて、自分たちが被害者やステークホルダーだったらどう思うか、考えればわかることだ。
 記者会見で説明するべきことは、①事実の説明②経過と現状③原因④再発防止策⑤責任表明の5つ。主張すべきことがあればハッキリ言うべきだし、誤解があれば解くべきだが、自分たちの視点ではなく「社会の視点」で語らなければ、その発言は、居直りとしか見えない。
船場吉兆のささやき女将が、食べ残し料理の使い回しという報道に抗議し、「残された『お料理』と言って欲しい」と発言したのは、料理に携わる者として、もしかしたらやむをえない発言だったかもしれないが、誰の目にも説得力はなかった。2008年7月、野球部員が起こした女子高生暴行事件で、記者会見に臨んだ桐生第一高校の高橋昇校長は、甲子園出場が決まった同校野球部をそのまま出場させたいと、「一年、頑張ってきた選手たちに道を全うさせてあげたい」、「一人のミスで、全員が責任を負うのは違っている」と発言する。この発言を奇異に感じた人は多く、直後に、筆者がとったアンケートでは、「あの高校に子どもを進学させたくない」という反応が多かった。
主張や誤解を解くための情報発信は、発信のタイミングと発言に工夫が必要となる。

[5W1Hの新聞記事]スタイルのスピーチ
記者会見での状況の説明・報告は、推測や未確認事項、個人の感想を交えるべきではない。この時のスピーチは、[起承転結]ではなく事実のみを伝える[5W1Hの新聞記事]ス
タイルで行うべきだ。[5W1Hの新聞記事]で語るスピーチの構成は、次のようになる。

 ■5W1Hの情報が入っている簡単なリードを先に持ってくる。
 ■その後に、細かい内容や背景を付け加える。
 ■リードと後の詳細は重複もある。

通常、人間は、人に何かを伝えるときに“起承転結”で話している。話し上手ほどその傾向があり、その話を聞くとよくわかるのだが、物語として起承転結で伝えようとする。だが、起承転結で話すということは、出来事に因果関係を与えることになる。そのために、推測や期待、未確認事項、感想などを交えることになる。
例を挙げる。「国王が亡くなり、一週間後、王妃も亡くなった」という事実がある。これ
が[5W1Hの新聞記事]スタイルである。だが、[起承転結]スタイルで語ると、「若き国王が亡くなり、悲しみのあまり、一週間後、後を追うように王妃も亡くなった」。となる。どちらがドラマチックで伝わり易いか一目りょう然、通常なら後者の方が評価されるのだが、記者会見ではこれがマイナスとなる。
なぜか?冷静に考えれば、後者には幾つかの疑問が生まれる。まず、悲しみだけで人は死ぬものだろうか、もしかしたら、死因は別にあるかもしれない。あるいは、この王妃は本当に「後を追う」ほど、国王を愛していたのだろうか。それを確かめるすべはない。すべては、伝える人間の推測、期待の域を出ない。曖昧な情報なのだ。
起承転結という構成は、長い年月を経て練られたものだが、事実を伝える記者会見では邪魔になる。場合によっては、記者たちをミスリードすることなり、それがわかった時には更に事態を紛糾させる。

想定問答の作成
あらかじめ、記者からの質問の想定とその答を作成する。これは、ポジションペーパーの項で述べたように、ポジションペーパーの作成と同時に行うと、伝えるべき情報や不足している情報の整理確認ができる。
「質問が浮かばない」
 そういう相談を受ける事がある。そう言う場合、企業の論理からしか見ていず、不祥事を起こした自社の立場・言い訳を全面的に肯定している。だが、問題は、自社が起こした事件・事故の被害者や関係者がどう思っているかだ。何に不安を感じているかだ。こういう相談に、筆者は、自分がよく見ている新聞、テレビのニュース番組の記者をイメージするようアドバイスしている。例えば、夜の経済ニュースの記者なら、例えば、主婦が多く視聴する夕方のニュースの記者なら、あるいは読売新聞の記者なら、記者になりきって、そのニュースで流すコメントを撮る。新聞紙面を埋める記事を書くことを想像すると、容易に質問が浮かぶ。

さらに、念を入れて、想定問答集をベースに記者会見の前にディスカッションを行うことを提案する。論理的な矛盾が確認されるからだ。時間的にそれが無理な場合でも、ぜひ想定問答の内容を声に出して読み上げることはすべきだ。
筆者は、不祥事記者会見に臨むある企業のトップに、この時も時間がなかったが、想定問答の音読をアドバイスした。質問と答えを声に出すことで、シミュレーションとなり、その記者会見は無事に終わった。
このように、想定問答集は、スポークスパーソンの心の準備となる。が、会場では、絶対に見てはいけない。見るのは、名前や数字の事実確認の部分だけとする。前述の船場吉兆の女将のような事態に陥り、その瞬間、当事者能力を疑われることになる。

企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
グラフ社

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一番、一番!真剣勝負
朝青龍 明徳
日本放送出版協会

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コメント (1)

偉い人はなぜ失言するのか

2010年06月18日 10時05分23秒 | 不祥事対応の専門家として
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

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しつ‐げん【失言】[名](スル)言うべきではないことを、うっかり言ってしまうこと。
       また、その言葉。「―を取り消す」「公の席で―する」(『大辞泉』)

 発言者は悪気ないのだが、本人の前で悪口を口走ってしまい、本人が「どういう意味だよ!?」と突っ込むシーンは漫画の定番だが、本書で紹介しているように、謝罪、報告する記者会見の場で、言うべきではない発言が繰り返される。
エンジニアに、失言の経験を尋ねたアンケートがある。その結果、なんと!約8割もの人が「常にある(12%)」「ときどきある(66%)」(リクナビNEXT Teck総研07年調べ」(25~39歳・300人対象)と失言の経験を回答している。高度な技術に冷静な判断力を持つと思われるエンジニアたちですら失言する。
では、どんなものを「失言」というのだろうか。
危機管理コンサルタントの田中辰巳氏は【不可抗力】、【認識不足】、【配慮不足】による失言の3つに大別できるとする。
緊張のあまりの言い間違いなどは【不可抗力】。これは、言い直せば済む。
次に【認識不足】、例えば、柳沢伯夫元厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」発
言(07)だ。「機械と言って申し訳ないけど」と詫びを振れば、どんな表現しても許されると思ったのか。あるいは、女性を生む機械に例える表現が気が利いていると思ったのだろうか。厚労相という立場にいながらの認識不足は、否定できない。

 「柳沢厚労相は年金や福祉、医療の展望について約30分間講演。その中で少子化問題についてふれた際、『機械と言って申し訳ないけど』『機械と言ってごめんなさいね』などの言葉を入れながら、『15~50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない』などと述べたという。」              (2007年1月28日付朝日朝刊)

差別発言にセクハラ発言、パワハラ発言など、言った本人の気持ちは関係ない。差別発言は“言われた側の心にどう突き刺さったか”が問われる。
さらに、【配慮不足】となると、神経が行き届かないわけで、発言する個人の資質や経験そのものが問われる。ビジネスシーンでも一番頻出しやすい失言パターンだ。
例えば、これも政治家の失言の例だが、久間元防衛相の「原爆しょうがない」(07)発言など、被爆地の長崎選出の代議士でありながら、被爆者の苦しみに想像力のない、配慮不足の発言だった。この場合、「そんなつもりは……」は言い訳にしか聞こえない

  「(久間防衛相は)太平洋戦争終結時に米国が広島、長崎に原爆を投下したことについて『米国はソ連が日本を占領しないよう原爆を落とした。無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったという頭の整理で、今しょうがないなと思っている』と述べた。(略)久間防衛相は同日夜、東京都内で記者団に、自身の発言が問題視されていることに『ソ連の意図を見抜けなかった日本の判断ミスについて言った。そのために、私の(選挙区の)長崎なども悲惨な目にあった。しょうがない点もあるが、相手の意図を見抜かなければならない。それで〈米国(のこと)はもう恨んでいない〉と(いう趣旨のことを言った)。原爆を是認したわけではない』と釈明した。」                      (7月1日付 毎日朝刊)

「まさかの一言」の心理

では、大事な場面で、しかも企業のトップともあろう人間がうっかり「言い過ぎ」「言い誤る」のかのだろうか。性格から類型すると次の5タイプに分けられるという。本書に登場する、トップを思い浮かべれば頷けるものがある。

  「1)自信過剰型 強引な自己主張で相手を傷つける。
   2)瞬間湯沸し器型 腹立ち紛れの一言が飛び出す。
   3)八方美人型 合わせすぎの反動から大胆な発言
   4)饒舌型 しゃべりすぎで調子に乗って余計なことをいう
   5)うっかり型 よく考えないで喋りだし相手を不快にさせる」
(福田健著『うかつな一言」で後悔しない話し方』 (成美文庫) 2005.9)

 同じく帝人広報部長などを歴任した萩原誠氏は、【油断】【傲慢】【激情】【弁解】【弁解】【本音】(07年9月24日付FujiSankei Business i.)をあげる。
本書で紹介したトップたちは、自信過剰から来る【油断】【傲慢】。瞬間湯沸かし器のような腹立ち紛れの【激情】。うっかり喋った【本音】。饒舌すぎる【弁解】。
そして、八方美人のような発言から帳尻が合わなくなり、言ってはならない一言を発し窮地に陥る。もちろん本当はその言葉に至るプロセスがあり、また、その言葉に象徴されるだけではない経営者の人間性、企業風土がある。だが、記者も社会もその一言に反応する。その瞬間、本質がわかると判断するからだ。衣の下に鎧ではないが、人は垣間見た姿こそ「本性」と見る傾向にある。
と、なれば、
「殴った痛みはすぐに忘れるが、殴られた痛みは忘れられない」
言葉でも文字でも、発信した側より受け止めた方がずっと鋭く感じ、傷つき、嫌な思いをする。そのことに対する“想像力”のなさ、受け手の痛みへの想いがなければ、失言は止まらない。

企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
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一番、一番!真剣勝負
朝青龍 明徳
日本放送出版協会

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記者会見のNGワード

2010年06月15日 06時08分21秒 | 不祥事対応の専門家として
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ)
村上 信夫
中央公論新社

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「記者会見で絶対言ってはいけないこと」

 6月に出した『会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学』 (中公新書ラクレ)で紹介した、言葉はちょっとした弾みに飛び出し一人歩きする。一旦、そうなったら、後は止めようがない。これが「失言」である。
 だが、本当はその言葉に至るプロセスがあり、また、その言葉に象徴されるだけではない経営者の人間性、企業の文化や風土があるのは事実だが、記者たちも社会もその一言に反応する。その瞬間、本質がわかると判断するからだ。
 衣の下に鎧ではないが、人は垣間見た姿こそ「本性」と見る傾向にある。
 だから、世論は不祥事企業の記者会見に注目し、失言に対し批判的になる。

「記者会見のNGワードはあるのか?」
 よく受ける質問である。
 その答えはNO。言葉はその文脈と言葉を発する状況により意味が変わる。同じ言葉でも反発を受けたり、説得力を持ったりする。そのため、画一的な「NGワード」集にあまり意味はなく、肝心なことは、とにかく誠意を持って一生懸命に説明することだ。
 しかし、記者たちに届く説明のあり方と、逆に、反発を受ける表現があることも事実だ。
記者会見で気になる言葉や表現を、50人以上の新聞やテレビ、週刊誌、フリー、インターネット報道の記者たちに質問した。結果、反発を感じる言葉には、幾つか傾向があった。例えば、次に紹介するような言葉である。
 だが、これを発した場合、必ず負のイメージを与えるわけではないし、逆にこれらの言葉を使わなければ、反発を受けないというものではない。
 しかし、多くの記者たちはこんな言葉に反発を感じるといい、別の言い方をすれば、これらの言葉を使う経営者の姿勢や状況は、記者たちが反発を感じる場面であることが多いのだ。

●決まり文句「お集まりくださいましてありがとうございます」
 会の始まりの決まり文句「本日はお忙しい中お集まりくださいましてありがとうございます」。つい挨拶の始めに言いがちだが、時と場合による。謝罪記者会見で、不祥事を起こした当事者からこの言葉が出た場合、どう聞こえるだろうか。
違和感を覚えるはずだ。だが、記者会見では、驚くほど多く聞く。
 北関東の某中学でのこと。いじめを苦に生徒が自殺を図り亡くなった時の記者会見でも、校長は、冒頭、この言葉から始めた。それを聞いた記者たちは、皆、一瞬、不快な表情を浮かべた。
 少年が選んだ死に方のあまりに悲惨さに、「(いじめは)どれだけ辛かったのか・・・」と記者たちが思っていたからだ。

●「私たちは被害者です」
 前述書の中でも多く紹介されている事例が、これ。事件などの種類によっては企業が被害者という側面があるものも確かにある。
 だが、いきなり「私たちは被害者です」と言うのはどうだろうか。
 落ち度なく巻き込まれた被害者から見れば、同じ穴のむじな。同じ岸に立って見える。
 例えば、事故米を安いからと言って購入し使った食品メーカー。本当に悪いのは、事
 故米を転売した三笠フーズをはじめとする業者だ。しかし、それを食わされた消費者から見れば、食品メーカーに対し『お前たちが安全性を確認していたら』という思いはぬぐえない。そんな人たちに向かって、被害者だと叫ぶことが共感を得られることか。
 先にこの言葉を発する経営者に対し、反省の態度が感じられない、責任回避、あるいはそういう冷静な判断もできない。と受け止められ、世論の批判を浴びることになる。
 まず、そのような事態を招いた責任の一端に対する反省があるべきではないだろうか。最初に、今回の事件についての謝罪を行い、最後に「弊社も被害者として刑事告訴も考えております」くらいの表現で、自社の言い分を表すべきではないかと思うのだ。
●責任逃れの常套句「知らなかった」「部下がやった」「秘書がやった」
 これも『経営者の一言』に多く、トップが責任逃れの言い訳に使う常套句だ。これを聞いた時、どう感じるだろうか?
 本当に、トップが知らないことはある。だが、知らないと言う時に、知るための努力の不足、大事なことを相談されない無能さを暴露している。己の器の小ささを告白しているようなものなのだが、不祥事の発覚の度に使われる。
●「法的には問題がない」「法律は守っている」
 長崎屋尼崎店火災(90)のように、度々、使われ、世間から反発を受ける表現だ。法律を守っているのは当たり前。社会が求めているのは、法律を守っていたかどうかではなく、企業として事件・事故を防ぐために、どれだけ事前の努力をしていたのかということだ。
 記者たちは、この言葉を聞くと『コンプライアンス(法令遵守)を縦に逃げようとする意識が透けてみえる』。
 カチン、『矛盾を暴いてやろう』と考えるという。
●「たいしたことない」「みんなやっている」
 それまで業界の慣例として当たり前に行っていたことや今まで問題になっていなかったこが、ある日、不祥事として指摘される。
「なぜ、自分だけが?」とつい出てしまうのも、わからなくない。
 だが、皆が行っているからと言って、問題ないわけではないことは言うまでもない。
 やっぱり事務所費の領収書に、マンガやキャミソールがあっては変なのだ。違法かどうかの問題ではない。
 この発言に、事態の重大性に気付かず軽く見る意識や当事者たちの幼児性を感じて、記者たちは「組み易し」と感じると言う。

それ以外にも、記者たちの心象を悪化させる、硬化させる表現・態度は、幾らでもある。
●ご承知のように」「先ほども申しあげたように」「言うまでもなく」
 このようなフレーズの繰り返す時、丁寧に説明することを放棄しようとする意志を感じるという。
 また、当事者意識が希薄な話し方はどの媒体の記者も、カチンとくるという。
 記者たちが疑問を感じるような表現、疑いを抱くような説明があった場合、それが報道内容に影響を与えないわけがなく、批判的な論調の報道が拡大することになる。

企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
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一番、一番!真剣勝負
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道後温泉は雨 今日から梅雨入り。

2010年06月13日 10時21分47秒 | 不祥事対応の専門家として
坊っちゃん 新装版 (講談社青い鳥文庫 69-4)
夏目 漱石
講談社

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昨日から愛媛・松山市に来ている。
「にほん風景遺産」(BS朝日)シリーズの仕上げである。
今回は、四万十川源流域、四国産地・四国カルストから四十万川上流から中流を、元朝日新聞論説委員、同志社大学教授の加藤千洋さんが旅をする。
源流域の開拓酪農家や「森の魚」をテーマに石の彫刻を掘り続ける芸術家、地獄と呼ぶ伝統漁法でウナギを捕る最後の川魚漁師。山で塩作りをする人など、日本一の清流は様々な人たちが暮らしていた。
(放送は、6月22日(火)21時~ BS朝日)
で、2日目の今日は朝から大雨。
早起きして、雨の合間を縫って道後温泉の朝風呂に行ったが、帰りは土砂降り。で、びしょ濡れになった。
とはいえ、道後の古い温泉街の町並みは、しっとり潤い綺麗だった。
四国・愛媛は、今日から梅雨入り。

会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ 351)
村上 信夫
中央公論新社

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企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
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一番、一番!真剣勝負
朝青龍 明徳
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内部告発の心理

2010年06月12日 01時40分09秒 | 不祥事対応の専門家として
会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ 351)
村上 信夫
中央公論新社

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不祥事発覚のきっかけの7~8割は、内部告発だといわれる。警察や行政、報道機関にしても、きっかけとなる情報がなければ調査も捜査も始まらない。
「内部告発」という言葉が一般化したのは1976年。ロッキード事件の最中、一部の新聞が関係者や公務員に対して、内部告発を呼びかけた。
2000年代になって、本書でも紹介している三菱自動車「リコール隠し」以後、雪印食品や日本ハムの「牛肉偽装」事件, 協和香料科学「無認可添加物使用」事件,など、消費者の安全・安心に直接影響を与えるものが、内部告発によって明らかにされた。「食品偽装」の吹き荒れた07年、偽装発覚の殆どは、内部告発だといわれている。
通報の方法は、従来の文書あるいは電話から 最近では、インターネットによる匿名通報、また、ネットの掲示板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への書き込みに報道機関や当局が注目し発覚するという間接的な告発も増加している。書き込みの場合、直接、告発するより心理的な障壁が軽いともいわれる。
04 年6 月成立した公益通報者保護法では, 通報対象範囲を刑罰法規に限定した上で, 外部通報に対する保護し、事業者自身に内部通報体制整備を働かせることで, 企業におけ
るコンプラアンスの促進を図ることをめざすものとなっている。

 とは言っても、告発内容は、自分の所属する組織に対する「反乱」と「裏切り」という2つの「罪悪感」を伴う。組織への忠誠心はなくなりつつあると言っても、社員にとって企業解体になった場合の生活不安がある。組織による報復も、十分予想できる。
組織の不正を目撃した場合、それを「許すか許さないか」。許さず、内部告発を行うかどうかの分岐点はどこにあるのだろうか?
フェスティンガーの「認知的不協和理論」によれば、集団の規範と自己の規範との間に乖離があれば, その乖離による不快感に対する反応は[集団への帰属性の強弱]による。そのため、実際に企業内の不正を知った時の行動は、 次の5つのタイプに分かれるといわれる。 

① 「抵抗するタイプ」
不正を止めることを主張し, 無視されると、周囲からどんなに説得・圧力を受けても応じず、外部に通報する・直接に法的手段によって、組織を糾弾する。
② 「妥協するタイプ」
はじめは不正に対しての批判を口にするが、結局、説得に従う。その後、不本意ながら自分も不正に手を染めることになる。多くの組織人の行動はこのタイプ。
③ 「積極的に同調するタイプ」
不正を知っても、組織の人間として当然のことと割り切り、むしろ積極的に不正行為に関与していく。不正を行っている人間に近い立場にいる場合に多い。
④ 「とりあえず口をつぐむタイプ」
批判を口にすることなく,表面は同調している。が、このタイプは、在職中に匿名告発にする,か、退職,・転職した後に告発を行う。
⑤ 「批判を共有する」タイプ
 同じ批判を共有する従業員がグループを結成し、社内での意見具申を行い、受け入れられなければ集団で外部へ告発するケースもある。
(新田健一『内部告発の社会心理学的考察』から要約)

 告発にいたる動機や経緯はともあれ、告発することによって、これまで自分がしてきた、あるいは業績そのものを全否定することになる。それでも、あえて内部告発に踏み切った、
背中を押す“きっかけ”は何だろうか?
ミートホープ社「食肉偽装」事件(07)を告発した元常務の場合、自分自身が相当苦しんだ挙句、「違法行為に悩み苦しむ従業員の心情」を思って腹を括って告発した。雪印食品「牛肉偽装」事件(02)を告発した倉庫会社の社長、自社の従業員に偽装工作を手伝わせようとした雪印食品幹部の行為が「許せなかった」という。など、激しく心を揺さぶる衝動の瞬間があるようだ。
内部告発者自身も不正行為に加担し無意識に良心を押さえて来ているだけに、何かのきっかけで押さえが外れると、その分、大きくバネが利いて大きな行動に出るのである。

企業不祥事が止まらない理由
村上 信夫,吉崎 誠二
芙蓉書房出版

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犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
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一番、一番!真剣勝負
朝青龍 明徳
日本放送出版協会

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食の安全と捨てれば、いいの?

2010年05月09日 06時23分27秒 | 不祥事対応の専門家として
食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点
中西 準子
日本評論社

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 また「食の偽装」が明らかになった。
 それもコープ生協で。
 消費期限切れのトンカツをカツ丼にして売って、「酸っぱい!」とクレームがついて判明したという。コープ内での伝票はどうなっていたのだろう。
 と、同時に、消費期限切れの多量の肉は、やはり捨てるべきか、それも悩む。
 毎日新聞の記事で、食の安全性に対する記事があったので転載する。

http://mainichi.jp/life/food/news/20100422ddm013100159000c.html?inb=yt

食品廃棄:安易な廃棄「待った」 消費者団体がガイドライン提案
 ちょっとした表示ミスなどで食品が捨てられる「食品ロス」が相変わらず多い。健康に害がなくおいしく食べられるのに捨ててしまったらさすがにもったいない。現状を見かねた消費者団体が回収・廃棄を減らす「食のリコールガイドライン」を提案している。捨てなくてすむものなら--。無駄な廃棄を減らす知恵はないだろうか。【小島正美】

 ◇健康危害の有無、基準に/国が目安示して
 企業による食品の自主回収・廃棄は、菓子や肉製品などの食品偽装が相次いだ2007年から急に増えた。農林水産消費安全技術センターの集計では、07年の自主回収件数は前年の3倍以上の770件に膨れ上がった。翌08年は845件とさらに増え、昨年は723件と減らない。内訳は、不適切表示が361件(約50%)で最も多く、品質不良96件、基準違反など87件、異物混入53件が続く。

 「廃棄は当然なのだろうか」。そんな疑問から、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事の古谷由紀子さんらは食品産業センターのホームページに載った531件(08年6月~09年10月)の自主回収について、健康危害と法律違反の有無の観点から、四つのグループに分けた。そのうえで、回収・廃棄の必要度を独自にチェックした。古谷さんらの分析では、異臭、液もれ、賞味期限切れ販売など「健康危害がなく、法律違反もない」ケースが176件(約33%)あった。

 また「健康危害は想定されないが法律違反」は185件あった。原材料の表示ミスや食品添加物の不適切な使用などだ。原材料の順番が間違って表示され、多い順の表示を義務づけたJAS法違反のチョコレートも回収され、古谷さんは「単純違反なら回収の必要はないのでは」と話す。

     *

 食品の残留農薬はどうだろう。日本では基準値を少しでも超えれば、食品衛生法違反で販売禁止となり、回収・廃棄となる。ドイツなど西欧では残留農薬が基準値を超えても、健康への影響がないと判断されれば、回収されていないという。

 米国では、ガラス破片のような異物が食品中に見つかると、米食品医薬品局(FDA)の規定で大きさが7ミリ以上だと回収義務が生じるが、それ以下なら回収されない。日本では、異物が見つかれば大半が自主回収され廃棄されている。

 古谷さんらは回収するかどうかの目安を定めた「食のリコールガイドライン」の試案を作成した。回収基準のポイントは健康への害が想定されるかどうかだ。資金力のない小企業は回収で大きな打撃を受けるが「食品リコール法を制定し国が回収目安を示すのが一番いい」と消費者庁に要望する。

     *

 単純な表示ミスでも流通業者が店頭から自主回収してしまうケースが多いが、全国消費者団体連絡会・食品安全担当の菅いずみさんは「単純な表示ミスなら買う、買わないは消費者の選択に任せてほしい」と話す。店頭で看板などを掲げ、その旨を知らせればよいという。長田三紀・東京都地域婦人団体連盟事務局次長は「消費者庁のホームページに載せることはできないか」と提案する。危険性だけでなく、回収不要なケースも分かるからだ。米国や欧州連合(EU)は事前登録者に携帯電話で配信している。「消費者庁もできるはずだ」(古谷さん)

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 ■食のリコールガイドラインの骨子

<1>回収の判断基準は健康危害があるかどうかで決める

<2>回収する判断の主体は事業者とする

<3>事業者は無駄な回収を防ぐため、情報開示に努め、説明責任を果たす

<4>事業者と行政はあらゆる手段を使って、消費者への情報伝達を心がけ、適切な行動を促す

<5>マスコミの活用など資金力のない企業でも回収できるような方法を考える

<6>適切な回収ができ、消費者が冷静に判断できる目安となるデータベースをつくる

 (日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の古谷由紀子さんらが提案)

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