![]() | 会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学 (中公新書ラクレ) |
村上 信夫 | |
中央公論新社 |
Masayaさんから またコメントを頂きました。
丁寧なコメントありがとうございます。
勉強になります。
年末の忙しさで、返信が遅れました。すみません。
長くなるので、こちらに書きます。
>まずは「抱える問題点」の洗い出しをして、その改善をする。組織全体で、“目的意識の共有”が図れる様にする――それが、早道では無いか、と思うのです。
ご指摘の通りだと思います。そのことでは、本書でも例えばトップの責任として、「知るべき体制を作ってこなかったことも含めトップの責任」p37「背景には・・・」p77など抱える問題点に向き合う視点は、再三、指摘しています。が、「会社をつぶす経営者の一言」(中公新書ラクレ)の趣旨は、第一に「起こったことにどう対応するか」という危機管理の事例を挙げることにあり、必ずしもご指摘の部分をカバーするものではありません。
その点は、物足りないとすればご指摘の通りだと思います。が、限られた紙面、お許しください。
組織全体でどう対応するか及びその具体的な手法の一部は、拙著「企業不祥事がとまらない理由」(芙蓉書房)などで触れています。お時間あればご覧ください。
ただ、同時に思うのは、Masayaさんが指摘される組織全体で、“目的意識の共有”の企業の目的は何かということです。
本来、企業の目的は、その生産、サービスをもって消費者に利便を提供することではないでしょうか?
菓子メーカーのF家はなぜ批判されたのか。
これは、安全安心の問題のように議論する向きもあり、マスコミの一方的バッシングと結論づける向きがあります。
・・・ もちろん一部に行き過ぎがあり不勉強な記者がいたことは大いに反省すべきです。その点は、同業者として悲しく思いがあります。
が、本質は「ママの味」を標榜している企業が、後に第3者会議の報告書でも認めているように不潔極な工場、自らが決めたルールを平気で破っていることにあり、そんな企業が作ったものを自分の手で我が子に食べさせたという母親の気持ちと向き合えるかということにあるのではないでしょうか?
そのことを、本書で「KY発言」として指摘していますが、実は、KYと呼ばれる発言は、その企業が、自分たちが何に依ってたつ会社なのか、本来の目的を忘れていることから出ているように思います。
ある大手ハムメーカーの井戸水汚染でも同様の問題が起こりました。汚染の程度は自然界にもたまにある程度。記者会見に臨んだ役員の発言にもそう考えている様子が見え隠れしました。その通りです。彼らの立場に立てば。
しかし、それを見た、たった今、自分の手で、そのハムを我が子に食べさせた母親はどう思うのでしょう・・・。
安全であることを根拠と共に伝えることと同時に、・・・それはマスコミの役割でもあります。事実、この時の報道ではその点、指摘した内容も多かった。・・・、そのメーカーは自分たちが、子供たちに安全・安心な食品を提供する企業として(これが、この企業の活動の目的だと思います。)、何が足りなかったか反省し、何をすべきか説明すべきだったのではないでしょうか。それがなかったため、世論は沸騰しました。
カネミ油症事件の現在をご存知でしょうか?
50年たっても今だ続くこの事件。直接、被害者となった方々の苦しみはもちろんですが、僕が苦しかったのは、その油で料理したものを我が子に食べさせた母たちの終わりのない贖罪です。
我が手で我が子に与えた・・・。
母たちに何の落ち度もないのですが、繰り返し、自分を責めていました。
本書を書くに、500事例の不祥事についてできるだけの資料に当たり、記者たちに話を聞きました。当事者となった企業の視点で書かれている資料も読み、報じられた企業の関係者にも会いました。
その中で感じるのは、不祥事と報じられケースで一番多いのは、実は、まじめな人たちだということです。まじめだということは、一生懸命、事実を組み立て答えようとしています。・・・そこに間違いはないのですが、その時、自分たちが「何に依って立つ企業なのか」本来の目的を忘れているケースが多いのです。まじめに自分たち側からの事実を組み立てているので、かい離していることに気づかいない。大変申し訳ない、意地悪な言い方をすれば、自分たちの都合でのみ話しているように聞こえる発言、そこから前述のKY発言が生まれます。
Masayaさんがご指摘になっている「目的意識」とは、繰り返しますが、【自分たちが何に依って立つ企業なのか】、その商品を食べる、利用する人たちはどんな場面でどんな風に食べているのかをしっかり意識するところから生まれるものであるべきではないかと思います。
僕の本を丁寧に読んでいただき ありがとうございます。
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