さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

根室2日目の夜もBar Rayに 花咲ガニの歴史

2022年10月06日 | 北海道シリーズ


ここは昨夜飲んだBar Ray。開店は20時なので、まだ閉まっている。


その路地裏の「居酒屋味話」を勧められたのだ。すごく狭い路地だぞ。


そしてドアがしっかり閉まっていて中は見えない。こりゃあ紹介でもされないと
入れないぞー。しかもご主人は人見知りで最初はそっけないという。でもいい人
なので、「Bar Rayのママさんに紹介された、と必ず言ってね。そうすればきっと
よくしてくれるから」と言われていた。さあどうでしょう~。


挨拶をして中に入ると、「あーきたー!」とRayのママさん。自分の店の開店前に
来ていたのでした。というわけで味話の御主人に紹介されてママの隣に座りました。
たしかにご主人は人見知りっぽいはにかんだ様子。映画「深夜食堂」のマスターに
雰囲気が似ています。粋な作務衣も似合ってるし。


昨夜話題に出たオヒョウが出されました。準備していてくれた様子です。恐縮。
もし気まぐれな旅行者が来なかったら傷ついちゃうよねーw


ここの御主人、いろいろな修行の経験があるようで、路地裏の小さな酒場とはいえ
きちんとした料理を出してくれるのでした。


そして根室の名物「エスカロップ」も作ってくれました^^
だんだん打ち解けてきて3人で楽しく過ごしました。もうバーの開店時間はとうに
過ぎちゃったぞー。そのへんはテキトーらしい^^;

御主人はRayのママさんに「ここの店が終わったら、バーに飲みに来てね!」と
誘われる。まんざらでもなさそうにニッコリw


というわけでバーに移動。今回は時間制の飲み放題ではなく、ゆっくりじっくり
飲むことに。だんだんと大人な会話で盛り上がる。

そうこうするうちに味話のマスターがやってきた。あちらの店は閉店したらしい。
なにやらもじもじと挨拶だけしにきたような感じだったが、ママさんに「飲んで
行ってよ!」と誘われると、笑顔になって「じゃあビール3杯くらい飲んでくかな!」
と嬉しそう。

たしかにマスターは打ち解けるのに少し時間がかかるタイプでしたが、2軒目だし
酒も入ってだんだんと饒舌になり、カラオケで歌も歌うし、根室の歴史、そして
自分が経験した花咲ガニ密猟の話もしてくれました。

マスターが根室の歴史を語るとき、「あそこの店の2階はやくざのたまり場だった。
あのレストランはやくざのたまり場」などと、やくざが沢山出てくる。それは、
根室が花咲ガニの密猟で潤っていたときに、やくざがからんでいたからだ。

ソ連領になっている歯舞諸島方面に向かう密漁船にはやくざ、カニのいるところを
良く知っている船頭、そして若いのを2人、4人で行く。カニというのは決まった
通り道があり、それは歯舞諸島の向こう側や、色丹島のほうだという。

当然大変危険な漁であり、見張っているソ連船に追われることになる。私が知って
いたのは、普通はひとつのモーターを3つにして、それでフルスピードで逃げてくる
という話だったが、マスターによればモーターは4つ付けるので、3つだと捕まるとか。

「水の上を進むんじゃない。飛ぶんだよ」という。4つもモーターをつけて、全速力で
走る鹿のように、跳ねて飛んで進むのである。

燃料は重油ではなくハイオクで、60本のポリタンクを積んで行くらしい。4つがフル
スロットルだから、ものすごい量のガソリンを消費するわけだ。

根室のとあるガソリンスタンドはそれで日本一の売り上げだったという。やくざ相手
だから現金のみで掛売はしない。すごい札束でガソリン、それもハイオクが売れたそうだ。

密漁船はソ連船につかまったら大変なことになる。だから必死の逃亡。いざとなると
日本海域に入るまでのガソリンを残して海にポリタンクを捨てる。とにかく軽くして
逃げるのである。最後にはカニも捨てるとか。ソ連船は日本の海域には入ってこない。
なのでそこまでが勝負。

カニを獲るカゴを沈めておき、目印にブイをつけておくのだが、ソ連船がそれを見つけると
切ってしまうという。なので密漁船は衛星を使った高性能の位置探知機を利用するように
なった。カニの密猟者はみんな買ったそうだ。しかし密猟が出来なくなってからはその
探知機もパタリと売れなくなったとか。ガソリンスタンドも閉店。ちなみに稼ぎまくった
密猟関係者が遊ぶ歓楽街の店もみ~んななくなるわけですが。

さてカニをトラックに載せて運ぶとき、警察が網を張っているのでトラックの前後に
やくざが運転する車を走らせる。警察の検問があったり向こうからやってくると、先頭の
車がわざとぶつけてその間にトラックを逃がす作戦。

パトカーに尾行されたときはとにかくあちこち走り回り、ついには路地に入ったり自宅に
戻ったり、友人の家にカニを配ったりして誤魔化したそうです。

密猟に携わった給料は、札束が立ったそうである。月給何百万円?!

ガソリンスタンドや位置探知機の電子機器を売る店だけでなく、カニ関係の工場、
運送業などあらゆる関係企業が潤ったわけだから、町全体が豊かになり、根室には6軒の
映画館があったそうである。いまはスナックはあってもバーやクラブがなくなった。
以前はキャバレーなどもあったとか。


この店のある通りは、最盛期には48軒の店があったけれど、いまは17軒になって
しまったそうです。キャバレーとか入ってみたかった気もしますが、こうやって
寂れてしまった町の酒場で飲むのも味わいがありました。



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