会津娘の蔵から2020

『土産土法』。

米からはじまる酒造り

2008-09-21 21:19:08 | aizu

以下、私の盟友であり大切な友人、「はりきり企画部」さんからご依頼うけて
先方のブログに投稿させていただいた内容の転載です。

なにを伝えたいのか自分でも分かりにくい文章ですが。。
↓以下↓

日本酒は、お米と水から作られます。

よく目にする日本酒のコピーといえば
『厳選した(あるいは良質の)酒米と○○の名水で仕込んだ・・・』という
文句が浮かぶ方も多いかと思います。

日本酒の面白いところのひとつは、造り手によって酒質が決まるところであり、
誰が何処で、どんなオモイをもってお酒を仕込むのかが、そのお酒にとって
大切なアイデンティティとなります。

とはいえ、その酒質の基幹となるのはやはり原料である『米』『水』。

どのような酒を、自分たちは造りたいのか。どのように呑んで頂きたいのか。
水との相性、蔵人の技量、蔵の方向性によって、米を選択します(酵母も然り)。

現在50種を超える数の酒造好適米が国内では栽培され、酒造用原料として用いられており、新しい品種も年々開発されています。
かつての『山田錦絶対』といった価値観は過去のものとなりつつあり、全国で、その土地々々、蔵々にあった米を選択し、米の特質を生かした、多様な味わいの酒が造られるようになりました。

もちろん、その中には酒造好適米だけではなく、ササニシキコシヒカリ日本晴等々、いわゆる一般米も選択肢として当然あることでしょう。

酒造好適米の市場流通価格は品種によりますが
1俵14,000~19,000円前後が相場で(2007全農実績)、
より良質の酒米を求めれば当然入手も困難が増し価格も前述の限りではありません。

そんななかで中小の酒蔵が進むべき方向性は・・・という問いに全国の酒蔵は今も
それぞれ自分たちの信じる道を自分たちの信じる方法でもってひた進んでいます。
そのひとつの成果が、先述した百花繚乱のごとき地酒文化となっていまの時代
花開いたことなのではないでしょうか。

そこには当然、そんな新たな和酒文化を支え、励まし、共に歩んできてくれた
販売店、料飲店、消費者があり、皆様の存在なくして今の日本酒はありえません。

当蔵も、自分たちにしかできない酒造りを求めて試行錯誤を重ねてきました。
会津の穀倉地帯に蔵を構え、自社田に囲まれた立地をいかし、
自家栽培米を中心とした地元産酒造好適米100%の純米酒造り。。

大切な主原料である酒米を自分たちで栽培し、ここでしか造れない酒を仕込み、
顔のみえる商売をしていきたいという私たちの仕事を支えてくれたのは
やはり酒販店、消費者の皆様でした。

もっとも、よりよい酒米を全国に求めて至高の酒を自らの手で醸す、という仕事はもちろん
酒造りに携わるものとして当然考えることであり地酒の醍醐味のひとつで、私の大好きなそんな蔵も数多くあります。

しかしいうところの『マーケティング理論』ではむしろよりコストパフォーマンスを
追求することのほうが大切な場合が多いでしょうし、そのような酒蔵経営も
もちろん否定するものではないと思います。

なんであれ、私たちが造るのは工業製品ではなく、もちろん芸術品でもないでしょう。 

嗜好品ですが、なにより食品であり、何よりも安全と信頼であると考えます。
では、その安全を約束し、信頼に足る商品・蔵であるためには何が必要なのか、
今回の米の問題で改めて、和酒業界全体が問われているのではないでしょうか。

今回の件で私が懸念することのひとつが、和酒文化入り口に立とうとしている
消費者層の本格焼酎・日本酒敬遠です。

鳥インフルエンザ、狂牛病、食肉偽装等々、近年のさまざまな問題のたびに、
もともとあまり好んで食べてはいなかった消費者はそれぞれの問題をきっかけに
口にしなくなってしまった例がとても多いのではないでしょうか。

同じように、これからこの素晴らしい和酒の世界に迎えるべき人々の何割かが
おそらく今回の問題で和酒文化に背をむけてしまうとすれば、
それはとても寂しいです。

宮城県の名醸蔵、平孝酒造では8年もの歳月を掛けて『山田錦』の父母種である
山田穂』『短稈渡船』という二品種を復活させ、蔵元のオモイをのせて商品化しました。
商品の詳しくははりきり企画部さまに譲るとして、“ハート”とソフトが絶妙に合致した
スバラシイ試みとスバラシイお酒です。

先頃縁あっていただいたこの2本の純米大吟醸『日高見』を飲みつくづく、
米から造られる日本酒の面白さと可能性を改めて強く感じました。

こんな素敵な和酒の世界を今トーンダウンさせてはいけません。

アプローチ方法は蔵それぞれですが、『米からのはじまる酒造り』、
(もうすでに全国各地で多くの蔵が取り組んでいます!)
改めて見直すよいきっかけにして、
ますます日本酒をおもしろい世界にしていければ!と、考えています。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする