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ネット右翼の攻撃のおかげで村上春樹の世界を堪能した

2021-01-13 14:05:30 | 日記
村上春樹の騎士団長殺しを読んだ。実に面白い。非常にスリリングで謎解きの興味が最後まで持続する。この作品を読む前に中村慎一郎の「愛の泉」を読んだが、通底する点があった。日本文化についてである。日本文化は王朝文化と西洋民主主義がない混ぜになっていることである。西洋民主主義が形だけで本質的に根付いていない様相はこのところの政権の横暴ぶりとそれを許す国民の実態で明らかであるが、日本人の理知は原理主義と伝統文化をどのように融合したら良いのかに回答を見いだせない状態にあり、その状態がこれらの作品の謎解きの要素にもなっている。

「愛の泉」では主人公の若い恋人の父親が戦前、フランスでリベラルから保守に偏向した知識人であり、「騎士団長殺し」では主人公が発見した日本画の「騎士団長殺し」の遺作を書いた画家がウィーンで抵抗運動に関わり強制送還後、一切戦中時代について沈黙をして洋画から日本画に転向する。このそれぞれの伏線も戦争の後遺症を描く共通点であった。

さらにこの作品では南京虐殺に加担させられた平和主義者の悲劇がリアリティある描写で迫ってくる。この場面をもってネット右翼が騒ぎたてていたが、どんなに騒いでもこの作品の人気が落ちることはなく、今まで村上作品を読んだことがない私のような人々が読む一つのきっかけとなるのだから皮肉なものである。


観念のもつ科学を超えた神秘をファンタジックかつ事実的に描く筆力に魅了される。
どこからともなく聴こえる鈴の音、そこに実在したものの消失、瞑想か夢想かの思念、超常現象とアミニズム、それらが自然なる空気感となって流れている。
さらに主人公の画家の創作技法の成長の過程も面白い、創造することの核心を暗喩している。


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