藤沢周平 著 「鱗雲」 新潮文庫 時雨あとより
この小説は、小関新三郎が、峠の地蔵堂で高熱で突っ伏していた娘・雪江を助け、自宅に連れて帰ってきた所から始まります。
雪江は二年前に病死した妹と似ていて、母とも心が通った。
場所は、野沢に近い信州? 藩では、家老と中老との勢力争いをしていた。藤沢さん得意な小藩の政権争いですね。
主人公のいいなづけの娘はそれに利用されて探索の役をし、他の男の子を宿し自死してしまう。
雪江は、父親の敵討の為、野沢に向かうところだった。
この小説では、いいなづけの自死、敵討に向かう雪江との別れ。
新三郎の切ない思いが、乾いた文章で描いてあります。
新三郎は、非番で母の畑の手伝いをしていた。
>--雪江も死んだかもしれない。
>道脇の草は、あれから半月経ったいま、すっかり枯れいろに変り、晴れた空の半ばを埋めて鱗雲が広がっている。空気は冷えびえとした秋だった。
>遠ざかる人影とは逆に、こちらに近づいてくる者がいた。人影は早い足取りで、ほとんど駆けるように近づいてくる。女だった。雪江だ。
>「母上」「あなたの娘が一人、帰ってきたようです」
なぜか、鱗雲が広がる風景が心に残ります。
たぶん、雪江は敵討ちを諦めて帰ってきたのではないか。私の希望的な憶測です。
雪江は、この家の娘となって、あるいは新三郎の嫁となって過ごすのではないか。これも、私の希望的な憶測です。
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