酔いどれ反省会

反省出来ない人の反省文

2019/10/25(金)大雨

2019年10月25日 19時25分31秒 | 日記
 近所の映画館「ユジク阿佐ヶ谷」にて、ベルイマンの『野いちご』を観た。この映画を最初に観たのは大学生くらいの時だったと思う。DVDでレンタルして。その時は、名画だって情報は得ていたし、その情報に引っ張られて何となく「面白かったなぁー…」と思ったくらいだと思う。今回、その時とそこまで激しく感想が変わったか?と言われると、そこまで変わらないとも思う。でも確実に、自分の中に残るものがあった(まぁ、大学の時に観た時も、わからないなりに自分の中に残るものがあったから今回も観たんだろうけど)。それが何なのか上手く説明は出来ないけども。

 老医師が名誉勲章みたいなものを受賞し、その式典に参加するために、会場まで車で行き、途中でいろんな人と出会い、懐かしい場所に立ち寄ったり、変な夢を見たり、というだけの話。そんなに大きな事件は起きない。

 なぜにこの映画がこんなにも深く自分の中に残るのか。自分の人生経験なんて薄っぺらだし、考え方も子供じみていて、自分という人間は、出がらしのコーヒーの如く、一切の深みなどない。僕じゃない人がこの映画を観たら、もっともっと深く感動するものがあるのだろう。でも心が死んでいる僕のような人間が観ても、何かしら自分の中にしっかりと残るものがある。人生の折々で観返したい映画だ。人生の一本と言っても過言ではないと思う。そこまで深く感動したのか?と言うとそういうわけではない。感動したというよりも、大切にしたいというような感じだろうか。

 老医師が自分の人生を振り返る。それが、自分が医者としてどれほどの功績を残し、今回もらった賞がどれほど素晴らしいものなのか、という事ではなく、諦めや後悔と言った場面ばかり。見る夢も不穏なものばかり。夢の中でよくわからないままに謎の面接を受けるのだが、その質問内容はまったく要領を得ないものばかりで、混乱していると「有罪です」と言われる。そして連れて行かれた場所が、今は亡き妻が、生前に他の男と不貞を働いている場面だった。老医師は当時、その場面を実際に目撃していた。妻はその男に、夫(老医師)の事を「優しい人。冷たい優しさ」と、苛立たしいような悲しいような表情で言っていた。
 式典が行われる会場までは、ギクシャクした関係の義理の娘との旅だったけど、途中、のんきだけど愛嬌のある3人組と出会い、車に乗せてあげる事に。そんな中、義理の娘から、現在抱えている、夫(老医師の息子)との問題を打ち明けられる。そこから見える老医師の息子との関係。3人組はのんきで気ままだけど、譲れないところはそれぞれ持ってて、3人でケンカもするけど、何だかんだ一緒に旅を続けている。
 会場について式典も無事終える。息子に会い、少し話す。息子夫婦はしばらく別居中だったため、久々に妻と再会した息子は、妻の事を心から愛していると言う。手放したくないと言う。息子夫婦間の問題は解決されたのかどうかはわからない。でも妻も久々に夫と会い、元気が出た様子。40年働いてくれている家政婦さんも、今朝はちょっとした事でケンカをしてしまったが、眠る前は、優しい表情で「何かあったらいつでもおっしゃってください」と言ってくれる。電気を消してベッドに入ると、外から歌が聞こえてくる。ベッドから出て窓を開けて外を見ると、3人組が老医師のために歌を歌ってくれている。3人は別な人の車に乗せてもらい、その夜にもう出発するとのこと。最後のお別れを言いに来てくれた。歌い終えると3人はそれぞれ老医師に感謝と別れを告げてせわしなく去っていった。ベッドに戻った老医師は、優しい表情で眠りにつく、というところで映画が終わる。

 本当にこの先も、何度も観たくなると、この日記を書いてみて改めて思った。とは言え、自分自身のために振り返っただけなので、抜け抜けだし、正確じゃない部分も多々あるだろうから、あまりこの内容を鵜呑みにしないでください...(-_-;)
とにかく、この映画を一度でもスクリーンで観れて良かった。

 今月いっぱいで権利切れ云々とのことで、『野いちご』の都内での上映はあと少し。あと数回だけ上映がある。ベルイマン特集で、ユジク阿佐ヶ谷では、11/1まで、ベルイマンのいろんな作品が上映されている。可能な限り、何度でも、観れる作品は観たいと思った。

 ※『処女の泉』も同じく権利云々で今月いっぱいで都内での上映は終わり。それが観れないのが本当に悔やまれる。。観れる人は観た方がいい。『処女の泉』『野いちご』に限らずいろいろと。ユジク阿佐ヶ谷、こじんまりとした、とてもアットホームな感じの、心地よい映画館。

https://www.yujikuasagaya.com/
コメント
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