東博初詣リベンジ編ー黒田記念館で実家を想うー

正月2日、
待ちに待った東京国立博物館への初詣。

でも、混んでいた。
おまけに等伯の松林図屏風はないし・・・、
ということで、
少々期待外れだったということは
前回のブログに書いた。

その日から、私はリベンジを決めていた。
もう一度行ってみよう。
そうしたら何か違うかもしれない。

そして出かけた13日。
土曜日だったけれど、2日の喧騒はなかった。
すぐに入場できた。
それでもその日も外国の方の姿は多い。

まずは夫がどうしても、もう一度と言っていた
横山大観の「無我」との再会。
ともかく参観者が少ないので、
ゆったり向き合うことができる。

大人のイメージでは子どもは「無垢」。
でも幼い子どもと生活していると
その心の中には様々なことが渦巻いていることを思う。

そんなことを思いながらも、
観ていたらなんだか
ホーッと温かい気持ちになった。

そして、「戌年」の展示室へ。
ここも、一室に10人もいなかった。
もうゆっくりと観て回ることができる。

前回は、込み具合に
心がざわざわしたのだと
改めて確認。
それでマイナス思考になっていたんだなって思った。

ゆっくり回ってみると、それなりに面白い。
今回は酒井抱一の描いた洋犬に足が止まった。

この洋犬の姿は20年前に
セルビアの友人を訪ねた時に
彼女の姪御さんが可愛がっていた犬にそっくり。

彼女は2年前に亡くなってしまったけれど、
20年前にベオグラードの
サヴァ川とドナウ川の合流地点にある
ボートハウスに連れて行ってもらって
川遊びをしたことを思い出した。

展示のストーリー性は、
展示者が考えるだけではなく、
観ている側も自分の中に
ストーリーを作っていくものかもしれない・・、
そんなことを思った。

ちょっぴり感傷に浸りながら、
展示室をあとにした。

そして向かったのは再び近代絵画の展示室。
ここでは再開したい絵があった。

安田靭彦の「五合庵の春」。
凛と立つ杉林の麓、良寛の庵。
そして彼を呼びに来る子どもたち。

私のイメージする安田靭彦とは少し違う。
杉の緑と、庵の周りの柔らかさが対照的。

安田靭彦「五合庵」

ここの展示室もほぼ独占状況。
本当にゆっくり観ることができた。
そして自分の想像の世界に思いっきり入り込んだ。

ゆったりと堪能した後、
「じゃあ、今日は黒田記念館でも行ってみるか」とは夫。
「まあ、付き合うことにしましょうか」と私。

たまには夫第一主義でいかなくちゃ・・。

黒田記念館はこじんまりと、でも落ち着いた雰囲気。
どういうわけか無料で入れる。
維持費とらなくていいのかなと思ったり。

中にある上島珈琲で一服。
久し振りのミルクココアの美味しかったこと。

ゆっくりしてから展示室へ。
そしてまずは特別展示室。

まあ、びっくりした。
ここは「実家」？と思ったのだ。

展示されているのは
「読書」「智・感・情」そして「湖畔」

このうち「読書」と「湖畔」のポスターは
実家の二階に長いこと飾られていた。


　　「湖畔」　黒田清輝


　　「読書」　黒田清輝

ポスターと言っても確か朝日新聞社が
毎月名画を新聞紙の中に納まる形のポスターとして
配布していたものだ。

父はそれを額に入れて飾っていた。
それは私がまだ小学生か中学生の頃だと思う。
もう50年以上も枚のことだ。

絵を観ることが好きだとか、
そんな話を父から聞いたことはなかった。
ただ、父は黙々とそれを飾った。

父にはもう一つ飾っていたものがあった。

それは自分の部屋のドアに
「プレイボーイ」誌に毎回付録としてついてくる
ヌードポスターを張ること。

私たち姉妹は、それがあまりにも当たり前のことだったので、
いやらしいと思ったことは一度もなかった。
だって、とっても綺麗だったから。

「プレイボーイ」誌は第1号をのぞいて
すべてそろっていたと、
父の遺品の整理をしてくれていた妹が教えてくれた。

そう言えば黒田記念館の特別室にあった
「智・感・情」も裸体画だ。

母が60歳を過ぎて絵を描くようになってからは
ドアに飾られる絵は母の描いた絵に替わった。

最後は母の絵だけだったけれど、
ある時期は母の絵とその裸体画が
同居していることもあったっけ。

父は何を思って、絵を飾っていたのだろう。
もう聞くことは叶わないけれど・・・。
本当に親に聞いていなかったことって
いっぱいあるんだなって思った
初春のひと時でした。