1月。
卒論提出の季節。
パワポで発表を終え、
打ち上げで居酒屋に繰り出した日のこと。
学生にしてはちょっぴりランクが上の居酒屋さん。
隣に居合わせたのは、
団塊の世代の小さな小さな同窓会。
卒論終わってホッとして
にぎやかながらも、のんびりまったり。
味噌ディップの野菜や味噌漬け焼肉・焼き魚
みんなで舌鼓を打っていた・・・。
すると一人の学生が
手に絵本を携えて「先生、これ最後に読んでください!」
「・・・・・」ここは居酒屋。
居酒屋で絵本の読み聞かせ???
でも、学生がわざわざここまで持ってきて絵本。
読まないわけにはいかないな。
勇を鼓して読み始めた。
読んだのはピーター・レイノルズ作・谷川俊太郎訳の「てん」(あすなろ書房)
絵を描くのが大嫌いなワシテ。
この日のお絵かきの時間も
画用紙は真っ白なまま。
それを見た先生は言った。
「あら!ふぶきのなかのほっきょくぐまね」
ワシテはプンとなり「かけないだけ!」と叫ぶ。
でも先生はにっこり笑って
ワシテに「なにかしるしをつけてみて」と提案。
ワシテはぷんぷんしたままマーカーを紙に押し付ける。
そして先生に挑戦するように「これでどう!」
でも先生はゆったりとしずかに
「さあサインして」と一言。
この一言がすべての始まりだった。
次の週、ワシテが描いた小さな「てん」は
ワシテのサインととも立派な額縁の中に。
それをきっかけにワシテは
小さな「てん」がかけるなら
おおきな「てん」だってかけるし、
いろんな色の「てん」だって・・・と挑戦を続ける。
そして、とうとう
「てん」で埋め尽くされた展覧会ができるほどに。
私は読みながら
絵本の中の先生がワシテが何も描いていない真っ白な紙を見て
「あら!ふぶきのなかのほっきょくぐまね」と
フォローしているところに、この先生の凄さをみた。
でも、ワシテは先生を越える存在だった。
「かけないだけ!」とは見事な反論。
子どもってそんなすごい存在でもある。
でも、先生も先生。
そんな反発にもめげず、おっとりした対話を続ける。
読みながら、私はその一場面に釘付けになった。
学生は言った。
本屋さんで、この絵本を見て、どうしても欲しくなって、
そして読んでほしくなったと。
絵本の読み聞かせ。
といっても私は自分の授業の初めの時間に
絵本の読み聞かせをしている。
以前は授業の終了間際に一冊読んでいた。
でもそれで気づいたことは・・・・。
学生たちは授業の内容をすべて忘れ、
その絵本にのめりこみ、それだけを覚えているということを・・・。
だから、戦略的に授業前に読むことにしたのだ。
まあ、そんな戦略はともかく、
私の絵本のセレクションは、文字通りの独断と偏見。
ただ、私が出会って大好きになったものに限っている。
「読みたい」というのがすべての動機。
子どもに読み聞かせるためのセレクションではない。
学生も自分が「これっ!」って思うものをもってきてくれた。
なんだかそれがとても嬉しかった。
ふと気づくと、となりの団塊世代の同窓会グループまで
シーンとなっていた。
絵本と居酒屋なんて、およそ対極にあるような存在だけれど
ああ、こんな風に人生動くこともあるんだと
なんだか、ほっこり新鮮だった。
今日は今年度の最終授業日。
私のセレクションは「ちいさなあなたへ」に決定した。
追記:
ピーター・レイノルズの本には
「ローズのにわ」主婦の友社
「そらのいろって」主婦の友社
また、挿絵を描いたものとしては
「ちいさなあなたへ」などがある。
卒論提出の季節。
パワポで発表を終え、
打ち上げで居酒屋に繰り出した日のこと。
学生にしてはちょっぴりランクが上の居酒屋さん。
隣に居合わせたのは、
団塊の世代の小さな小さな同窓会。
卒論終わってホッとして
にぎやかながらも、のんびりまったり。
味噌ディップの野菜や味噌漬け焼肉・焼き魚
みんなで舌鼓を打っていた・・・。
すると一人の学生が
手に絵本を携えて「先生、これ最後に読んでください!」
「・・・・・」ここは居酒屋。
居酒屋で絵本の読み聞かせ???
でも、学生がわざわざここまで持ってきて絵本。
読まないわけにはいかないな。
勇を鼓して読み始めた。
読んだのはピーター・レイノルズ作・谷川俊太郎訳の「てん」(あすなろ書房)
絵を描くのが大嫌いなワシテ。
この日のお絵かきの時間も
画用紙は真っ白なまま。
それを見た先生は言った。
「あら!ふぶきのなかのほっきょくぐまね」
ワシテはプンとなり「かけないだけ!」と叫ぶ。
でも先生はにっこり笑って
ワシテに「なにかしるしをつけてみて」と提案。
ワシテはぷんぷんしたままマーカーを紙に押し付ける。
そして先生に挑戦するように「これでどう!」
でも先生はゆったりとしずかに
「さあサインして」と一言。
この一言がすべての始まりだった。
次の週、ワシテが描いた小さな「てん」は
ワシテのサインととも立派な額縁の中に。
それをきっかけにワシテは
小さな「てん」がかけるなら
おおきな「てん」だってかけるし、
いろんな色の「てん」だって・・・と挑戦を続ける。
そして、とうとう
「てん」で埋め尽くされた展覧会ができるほどに。
私は読みながら
絵本の中の先生がワシテが何も描いていない真っ白な紙を見て
「あら!ふぶきのなかのほっきょくぐまね」と
フォローしているところに、この先生の凄さをみた。
でも、ワシテは先生を越える存在だった。
「かけないだけ!」とは見事な反論。
子どもってそんなすごい存在でもある。
でも、先生も先生。
そんな反発にもめげず、おっとりした対話を続ける。
読みながら、私はその一場面に釘付けになった。
学生は言った。
本屋さんで、この絵本を見て、どうしても欲しくなって、
そして読んでほしくなったと。
絵本の読み聞かせ。
といっても私は自分の授業の初めの時間に
絵本の読み聞かせをしている。
以前は授業の終了間際に一冊読んでいた。
でもそれで気づいたことは・・・・。
学生たちは授業の内容をすべて忘れ、
その絵本にのめりこみ、それだけを覚えているということを・・・。
だから、戦略的に授業前に読むことにしたのだ。
まあ、そんな戦略はともかく、
私の絵本のセレクションは、文字通りの独断と偏見。
ただ、私が出会って大好きになったものに限っている。
「読みたい」というのがすべての動機。
子どもに読み聞かせるためのセレクションではない。
学生も自分が「これっ!」って思うものをもってきてくれた。
なんだかそれがとても嬉しかった。
ふと気づくと、となりの団塊世代の同窓会グループまで
シーンとなっていた。
絵本と居酒屋なんて、およそ対極にあるような存在だけれど
ああ、こんな風に人生動くこともあるんだと
なんだか、ほっこり新鮮だった。
今日は今年度の最終授業日。
私のセレクションは「ちいさなあなたへ」に決定した。
追記:
ピーター・レイノルズの本には
「ローズのにわ」主婦の友社
「そらのいろって」主婦の友社
また、挿絵を描いたものとしては
「ちいさなあなたへ」などがある。