徒然なるままに~のんびり、ゆったり、こまやかに

猪突猛進型の60代。そして卵巣がんですっ転んで8年。目指すはのんびり、ゆったり、細やかな生活!無理かなー(#^.^#)

父のことー小さな奇跡、そして・・・ー

2015-12-01 14:41:36 | 父とのこと
父が、救急救命士の介護タクシーに乗って、
転院して数日が経った。

出発の日、父は、夫が「お父さん!」と声をかけると、
パッと目が開き、「まあよく来てくれたねえ」
という感じで、頭を下げた。

私や妹の時には、これほどまでの反応はなくなっているのに、
やっぱり「うちとそと」の区別があるのだろうか・・・。

救急救命士の方が見えて、出発の準備が始まった。
父は、救命士の方の声掛けにうなずいたりする。
出発までの準備あれこれも
父は特に嫌がることもなかった。

移動時間は2時間半。
リクライニング型の車いすで、
寝たり起きたりしながらも、
具合の悪くなることなく転院先に到着した。

到着してから、いくばくかの検査の後、
ナースステーション近くの4人部屋の病室に落ち着いた。

私たち家族は、父が病室に落ち着く間に、
主治医の話を聞いた。

今後のことも含めての話だ。
毎回、病院が変わるたびに、これが繰り返される。

今回は今後の予測として、
肺炎にかかる確率が高いこと、
そしていくら胃ろうをしていても、
栄養が行きわたらなくなる可能性があることを告げられた。
腎機能も弱っているし、何がいつあってもおかしくないとも。

ここでは積極的な治療はしないということだ。
ここでもまた、このことを念押しされた感じだ。

「こちらに転院する前の病院で、赤血球の輸血をしたんです。
腎機能が悪いと赤血球の値が下がることがあるので、
輸血をしますと言われました」(妹)

「そうでしたか。でも腎機能は弱っているので、
一回輸血をしたからといって、治るものでもありません。
腎臓は老廃物をろ過する役割が大きいことは知られていますが、
実は、赤血球を作るという指令をする
ホルモンを出している臓器でもあるんです。
ですから、腎機能が弱ると、
赤血球の値が低くなります」(主治医)

「へええ・・・(これは知らなかった)」(私たち家族)

「また、赤血球が下がった時の対応ですが、
こちらとしては、積極的な輸血はしません。
輸血用の血液は貴重なものですから、
できたら、それをすることで回復の可能性のある方に
回したいと考えるからです」(主治医)

「なるほど・・・(まあ、納得)」(私たち家族)
そういうことなのだ。

面談が終わって、父の病室を訪ねた。

ところが、父の様子がここのところと違う。
なんだか、とってもはっきりしている。
私たちのこともわかっているよう。
そして、また夫が声をかけると、
「これは、これは」という感じ。

妹がここに来てよかったねというと「うん」という。
「また来るからね」というと、これにも反応してくれた。

それから数日、妹は毎日のように病院を訪ねてくれている。

父に「今日は誰か来た?」と聞いたら
「今日は(T子が)初めてだ」と答えたという。

え、しゃべりかえしてくれたんだ。
このところずっと、口を開くことはなかったから、
それを聞いてびっくりした。

それに加えて、父の妹や亡くなった母の妹の話をしたあと、
「妹は生きてるんだか、死んでるんだか、わからなくなっちゃって
情けないよ。誰が生きているんだか、死んでいるんだかわからないんだよ」
と、言ったという。
この二人の叔母はすでにあちらの世界に旅立っている。

へええ、すごい会話力!
さらに続けて、
「みんな、仲よくしているか?
そうか、仲よくしていればいいな」(父)
「俺はあと一年は持たないだろうなあ。
早くあっちへ行きたいよ」(父)とのこと。

ちょっとびっくりするほど頭が動いている。
あの、病院から病院への移動が刺激になったんだろうか・・・、
そんなことを考えた。

妹は付け加えた。「でもね、体を全然自分から動かさないの」と。


次の日は、さらにおしゃべりが進んだという。
けれど、妹のことは「M子だな」と叔母と認識。
そして、そばが食べたいんだとか、
実家の近くにあるおいしいうなぎ屋さんに食べに行こうなんていう
話になったようだ。

それからいろいろ妄想国の話もあったものの、
「90歳過ぎたなあ、みんな死んじゃったなあ」といったので、
妹が「そうだねえ、お父さんは元気で長生きできたねえ、
よかったねえ」と答えると、

「うん、うん、ぎりぎりまで元気だったなあ」と言って
にこっとしたとか。

まあ、状況をとらえること的確なり! とびっくり。

これは奇跡だなって思った。

転院して、妹が近くなってしげく通えるからかなって、
ちょっぴり嬉しくなった。

と、喜んで迎えた次の日。
父は妄想国の人々にからめ捕られていたらしい。
人がいっぱいいたり、綱に引っかかりそうになったり、
剃刀を持っている人がいたり、
ともかく、妄想国でかなり大変な状況になっている。

妹の質問には答えるのだが、ついに妹が帰るまで、
妄想国から現実の世界には帰ってこなかったという。

ちょうど夕飯時、胃ろうの準備に来た看護師さんから、
昨日胃ろうの接続部分を父は引っこ抜いてしまったと告げられた。

だからつなぎのパジャマを着させられていたのだ。

元気になったら、妄想国の活動も活発になってきた、
ということなのかもしれない。

あの、まったくしゃべらなかった父はどこへ行ったのだろうか?

奇跡の後は、レビー小体型認知症まっしぐらの父が戻ってきた、
ということなのだろうか・・・。


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