林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

英語と日本語の間で(その4)ーー主語って何?

2010年07月13日 | 英語学習
さあ、いよいよ「英語と日本語の間で」の本論に入るぞ。題して「主語って、何?」です。

本当は石崎さんの「カエル英語」に行きたかった。しかし、やはりこの議論を先にしないではいられない。それほど、大事なトピックです。

ここで言語哲学的な議論に立ち入るつもりは全然ない。もしかしたらピンカーとかを参照したくなるかもしれないが、そういうムツカシイ議論をしたいわけでは全然無い。それなのになぜ「主語とは何か」などという問が出てくるのかと言えば、理解力の低い生徒にも教えることがあるからです。

さて、あまり言語的な能力が高そうではない小中学生に英語を教えるのだとしても、やはり理屈を分かってもらいたい。つまり、詰め込み式の丸暗記ーーたいていの場合しばらくすると全部忘れてしまうーーじゃなくて、英文法だとか言葉の仕組みについて理解してもらいたい、そんなに風に考えています。となれば、日本語は日本語で、英語は英語でそれぞれ理屈を考えましょう、などというのはダメです。精一杯日本語の感覚とロジックを活用しながら英語を学ぶしかないはずなのです。

使用テキストは石崎の『基本にカエル英語の本』です。この本が良いと思うのは、主語や補語といった基本的概念を、まずは日本語で考えようとしている点です。(Lesson1-5)。

ケロ蔵は歌を歌っている

という文章があったら、主語が「ケロ蔵は」、目的語が「歌を」、動詞が「謳っている」であると確認する作業から始めるわけです。もちろん日本語で、主語、動詞、目的語がなんだか考えるのです。

Lesson6になってようやく英語がでてきます。英語では、「ケロ蔵は」(主語)、「謳っている」(動詞)、「歌を」(目的語)という順番なんだよと確認しながら、ゆっくりと進めていきます。

私の授業でも、こういうやり方をしています。まずは「私は」だね、英語ではIだよね。次は?ーそう「する」だ、英語ではplayだよ。最後に「野球を」が来るね、これはbaseballだよねとみんなで確認してから英作文をするのです。それが英語の文法なのです。

もちろん、それでもI amとかHe isとかbe動詞が出てきちゃいますよ。「する」は「play」だよねと教えてあげたのですが、20秒後には忘れちゃっているのです。理解力の低い子供はそうんなものなのですね。


しかし、語学教育は、そのレベルの生ぬるいものではなかった!

主語が文の先頭になかったり、主語の先頭に所有代名詞や「あなたの」といった言葉がある場合には、学習者は主語を簡単に捜しだ出すことが出来ないのです。

どいうことか? たとえば、次の文章があったとします。

日本語: あなたのお父さんは病気です。
英語 : Your father is sick.

主語に○をつけてごらんと言うと、「あなたの」と”Your”につけてしまうのです! Yourに○をつけるのは英語初心者だから仕方ないのですが、「あなたの」に○をつけるのは非常に困ることです。だが、それが現実なのです。それが普通の公立小中学生の日本語力なのです。

私は問いかけました。「『あなたの』が主語というのは、変な感じがしない? 『あなたの』じゃ落ちつかないでしょう? 『あなたの』さんが『病気になった』というのは、よくわからないよねえ」と。

いちおう、その場では主語が何であるのかわかってもらえます。さらには『自由自在 国語3-4年生』なども使って練習問題も重ねましたし、宿題も出しました。しかし、何日か後にはすっかりわすれてしまい、やっぱり、主語はMyや「私の」になってしまいます。

要するに、主語あるいは動作主の概念がひろく日本語ネイティブにひろく共有されていないと言うことなのです。おそらく、実生活では、文脈から動作主体が何だか察することが出来ますので、苦労はしない。しかし、文脈から察することの出来ない複雑な文は理解できない。そういう言語力段階にあると言うわけです。

他にも例を挙げましょう。さて、今度の例は、沖縄で学習塾をされているyojiさんの事例です。2010年の5月6日「『私のお母さん』は複数」からです。この生徒の場合は、主語がどこの部分であるのか、わかっています。しかし、その部分の解釈が間違っているのです。一部のみ抜粋しましょう。


「すると、彼は少し躊躇していましたが、つぎのように答えました。「私のお母さんは、『私』と『お母さん』二人だから複数になる。だから基本になる。」


My mother=私のお母さん=私とお母さん というのが子供の頭の中にある。よって、My motherは複数形であると解釈してしまったのです。(なお、文中の「基本」とは、三人称の単数にはならず、sを付ける必要はないという意味です)。


さあ、これで日本語力を頼りに英文法を教えようと言う試みが、それほど簡単ではないことも明らかになっただろうと思います。動詞とは違って主語ならば、英語と日本語はそれほど違いがないと思っていたですが、日本語でも主語が分からない生徒がたくさんいるからなのです! こりゃ、大変です。が、我が国の英語教育を考えるというのは、そういう生徒をも射程に入れるということなんですね。

逆に言えば、英語教育の時間がいかに大きな役割を担っているのかと言うことです。英語の時間を通して、様々な言語力の増強の可能性が開かれていることを意味しているからです。

英語を通じて日本語や思考力を鍛えていきましょう、英語の先生方!

なお、メル レヴィーンの著作たとえば『ひとりひとりこころを育てる 』も大いに参考になりました。

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