林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

中学進学予備校の弊害

2009年02月28日 | 受験
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認知工学の『進学塾不要論』は、業界の周辺にいる誠実で客観的な観察者ならばだれも本当は分かっていることを、はっきりと指摘した貴重な本である。(ただし社会学的の議論は、不要なものであったと思われる。ちょっと残念!)

議論はおよそ二つに分かれている。①子供の発達段階論的視点からたった中学受験予備校批判、②中学受験予備校の儲け主義的からくりの批判である。


中学受験予備校が子供をダメにする理由

中学受験予備校に通う子供達の多くが精神的なダメージを受け、中には廃人同様になっているということは、多くの業界関係者は知っているはずである。その理由は、認知工学こと水島さんのこの本に書かれているが、ほとんどの人は同意することができるはずだ。


かいつまんで述べると、学校の勉強がまだよくわかっていないような晩熟型の小学生に対し、無理矢理に受験用の難問を押し付けるものだから、様々な弊害が生じてしまうということだ。どうなるのかといえば、私も100%同意するのだが、問題を理解しようという気力がなくなり、「考えることを拒否してしまう」ようになってしまうのである。本当ならば、基礎学力の充実に努力を注ぐべきなのに、中学受験予備校に通ったがために、どうしようもないほどの勉強嫌いになってしまうというわけだ。あるいは、「悪い学習スタイル」と呼ぶものを子供が身につけてしまい、まっとうな知的好奇心を徹底的に排除する人間になってしまう。

例えば国語については、次のように述べている。

A君は「読解問題を解くとは、文章を理解しないままに文中から適当に言葉を探して書き入れる事」だと勘違いしてしまっていたからです。(中略)机に向かって「読解問題解く」という作業に入った瞬間、読書とは違うスイッチが頭に入って、読解問題とは全くかけ離れが頭の使い方をするようになっていたのです。(中略)これは明らかに、進学塾に変えたことによる弊害です。(21ページ)

読解力のない子どもにとっては、昨日も分からなかった。今日も分からなかったということになります。明日の授業も分からないでしょう。分からないこと分かるようにするのが授業であるのに、分からないことを日々続けさせているのが、進学塾の国語の授業なのです。(23ページ)


中学受験予備校の方法が間違っているのでしたら、どうしたらよいのか。認知工学氏は、物事には反復訓練によって学ばせることができるものと、不可能な領域があると言う。例えば、「割合の感覚」はその例である。つまり、ある発達段階に到達していない晩熟型の子どもには、どんなに教師が工夫しても、割合という単元について教えることは不可能なのだ、と。だから、晩熟君に対しては、急いで難しいことを強いるのではなく、中学生とか高校生になってしっかり勉強させるようにすればよいのである。これも私は100%賛成だ。(もちろんのことだが、中高で充分に伸びてくれない場合もあろう。しかし、そうだとしても、徹底的な勉強嫌いだとか無気力無関心といった精神の荒廃だけは避けられるだろう)。


問題は、こういった「凡庸な」正論がどこまで受容されるかということである。認知工学氏ばかりではない。以前紹介した松永氏だとか、もっと有名な人では小宮山 博仁氏の著作が、どれだけ子どもを持つ親たちと市民社会に受け入れられるのか、といっう問題だとも言ってよい。大手進学塾や大資本の利益追求術に振り回される御両親があまりにも多い現実を大変残念に思う。

東大式個別ゼミ

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