りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

金網越しの15歳。

2009-11-16 | Weblog
昨日、旧友と再会した。

中学校の同級生。
20歳の時に成人式で顔を会わせて以来だから、
それでも20年ぶりの再会だった。

僕は子どもたちの自転車の練習も兼ねて歩いていた。
偶然、彼が建てた家の前を通った。
それが彼の家だということは知っていた。
共通の友人から聞いていたし、何よりも、半年ほど前に
彼の奥さんとそこでバッタリ再会していたからだ。
彼の奥さん・・・彼女も中学の同級生だった。

彼は庭の掃除をしていた。
声を、かけた。
不審がる彼に、僕は自分の名字を言った。
名字を聞いたとたん、彼は苦笑しながらこう言った。
「何やってんだ(笑)?」

いろんな話をした。
だけど、昼間の立ち話だ。
僕らは他愛もない話に終始した。
友達の話や、家族の話や、車の話や、身体の話とか、
まぁ、そんなところだ。
そうこうしているうちに、玄関から彼の奥さんも顔を出した。
しかし、久しぶりの男同士の会話に入るのは気が引いたのか、
僕に向かって中学の時と同じような明るい笑顔と声で
「こんにちは」と言うと、静かに玄関の扉を閉めた。

15分ほど会話を交わしただろうか。
気がつくと、足元で子どもたちが「帰ろう」と退屈そうに僕に懇願
していた。
今も昔も、子どもたちにとって大人の立ち話ほど退屈なものはない。
そして、今も昔も、子どもの懇願ほど立ち話を切り上げる絶好の
タイミングもない(笑)。僕は“じゃあ、また”と彼に片手を挙げて
その場を後にした。

午後から雑用で、歩いて1人で外出した。
ついでに、中学校に寄ってみた(写真参照)

校門に向かう。
しかしそこには「ご用の方は、1階の事務室へご連絡の上・・・」と
いう、例の事実上の立ち入り禁止の看板が、学校の銘板の下に
掲示されていた。
仕方なく、僕は校門の横の金網越しに母校を眺めた。

日曜日だというのに、グラウンドではサッカー部の連中が
練習をしていた。
一人ひとりの顔を見ると、ホントに幼い。少年そのものだ。
僕は“こんなに、幼かったっけ?”と驚いた。

でも、そうなのだろう。

僕や久しぶりに再会した彼も、25年前はきっとこんな感じ
だったのだ。
彼は、男の僕から見ても、爽やかな男だった。
バスケット部だった。3年生の時はキャプテンだった。
爽やかで、バスケット部で、キャプテン。
これでモテないわけがない(笑)

彼の奥さんは、テニス部だった。
いつも小麦色の肌をした、誰にでも優しく、
明るくて笑顔が可愛い女の子だった。

僕はというと、いつまでたっても100mを12秒台で走れずに、
半分ふてくされながら、のんべんだらりとグラウンドの
トラックを走る陸上部員だった。

僕たちは、15歳だった。
まだ何ものでもない、
誰のものでもない、
ただの、15歳の少年と少女だった。

金網の向こうには、バスケットゴールもトラックも、25年前と
まったく同じモノがグラウンドの上に存在していた。
僕はそれらを金網越しにぼんやりと眺めていた。

ふと、金網の向こうに、25年前の、あの頃の僕や彼や彼の奥さんが
いるような気がした。

細く長い針金を幾重にも絡ませて作られた金網。
ちょっと力を入れれば、簡単に破れて中に入れそうな気がする。
しかし当たり前だが、金網はちょっとやそっとじゃ破れやしない。
僕に出来ることは、せいぜい記憶をたどって金網を大きく揺らす
ことぐらいだ。
仮に、金網を破って中に入れたとしても、そこにあの頃の僕も彼も
彼女もいない。絶対に。
もう、どこにもいないのだ。

金網を破っても、決して時間は戻らない。

僕は、金網を2~3回軽く揺らすと、家路についた。
あの頃流行っていた歌を自分にだけ聴こえるほどの
声量で口ずさみながら、家路についた。
コメント
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