ある日、S様から、スリングレッスンとアロマカウンセリングを続けて受けられる日があれば、予約したいとのご連絡をいただきました。
たまたま翌日、うえだが来ることになっていて、しかも空き時間があったので、早々に翌日予約が成立しました
タイミングが合わず、ご予約がずっと先になってしまったりすることもある中で、もう筋書きが決まっていたかのように、うまい具合に・・・。
カウンセリングの目的は、旦那様のおばあちゃんがご入院中で、しかもご高齢のため、積極的な治療も出来ない状態とのことで、
でも何かしてあげられることはないものか・・・ということでした。
付き添いをしておられるご親族の方々も、寝不足やストレスがおありだろうから、せめて病室に心地よい香りでもプレゼントできたら・・・と、
お考えのようでした。
「香りを焚いたりスプレーしたりすることは、もちろんとってもいいと思いますよ。でもリラックス効果や鎮痛効果のあるオイルで
手足だけでも少しさすってあげると、おばあちゃんも、している方も癒されるのでは?」と、提案させていただきました。
その時、S様は、3人のお子さんたちをオイルマッサージして、お互いがどれだけ癒されたかということをリアルに思い出されたことでしょう。
彼女は、一番下のお子様を連れて、何度もAroma Bebeに来られ、そこで習得したオイルマッサージを、上のお子さんたちにも日々実践しておられたのです
そんなS様だからこそ、私はそのような提案をさせていただきました。
でも、色々と問題があることはわかっていました。
彼女がマッサージに行けるわけではない。
マッサージのことを、お姑さんや親戚の方に伝えて、理解してもらって、実践していただかなければならない。
おばあちゃんが受け入れてくれるかどうかもわからない。
これはちょっと大きな賭けですね。
全然できなくて、むしろ迷惑がられて、オイルも無駄になる・・・っていう最低の結末も・・・
S様も私も、二転三転迷ったあげく、「やっぱりオイルをブレンドして下さい!!」と決められました。
そこで「穏やかな最期を迎える」というイメージで、ブレンドさせていただきました。私にとっても、初めてのことです。
S様とうえだと3人で、「自分の親が病気になった時は、アロマを使っていろんなことをしてあげたいね!!」と
話していました。
してあげられることがあるっていうのは、こちらもかなり癒されることでしょうね。
なすすべもなく、ただ看病に通う日々ってどれだけ辛いことでしょう。
それから数日後、S様からメールをいただきました。
あの日、早速お義母さんに使い方を伝え、ばあちゃんに届けました。
今、お義母さんから電話があり、ばあちゃんが今朝亡くなったと・・・
『Sちゃんが調合してもらってきたオイルでマッサージしてあげたら、ニッコリしてくれたよ。ありがとう。』と、
言われました。
たくさんはしてあげられなかったけど、一度でもしてあげられて、私も嬉しかったです。
あの時、本当に運良く予約が取れてよかったです。
何かの縁があったのかなあと不思議な感じもしました。
もし間に合わなかったら、すごく心残りだったと思います。
S様のご家族を思いやる優しさが、お義母さまにも、おばあちゃんにも、しっかり伝わったようですね。
ご高齢とはいえ、ご家族との別れは辛いものです。
そんな時にも、心にぽっと灯りがともるような・・・マッサージには、そんな魔法があると思います。
歳を重ねると、誰しも様々な感覚器官が衰えていきますが、皮膚が触れ合う感覚というのは、最後の最後までしっかりと残っているそうです。
手を握る、抱きしめる、さする、なでる。
誰にでもできることです。
ベビーマッサージが一時のお稽古ごとで終らぬよう
アロマトリートメントが非日常的な贅沢にならぬよう
いかにして、皆様の日常的な風景になっていくか、私の課題はまだまだ続きそうです。
新しい教室スペースにも、恩師からいただいた「手のぬくもり」と書かれた書を飾りました。
初心を忘れず謙虚に、でも新しい世界を目指して。
S様のご了解を得て、ご紹介させていただきました。
おばあちゃんのご冥福を心よりお祈りします。合掌
ふなかわ