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立原正秋『風景と慰藉』1974・中公文庫-立原さんのヨーロッパ・韓国紀行です

2024年05月21日 | 随筆を読む

 2023年5月のブログです

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 立原正秋さんの紀行文集『風景と慰藉』(1974・中公文庫)をかなり久しぶりに読む。

 これも古い本で、当時、大学生だったじーじには少し難しいところがあったらしく、本にはめずらしくアンダーラインも付箋もなく(?)、きちんと読んだのか、やや不明(立原さん、ごめんなさい)。

 就職後も読んだのかどうか記憶がはっきりしない。

 しかし、改めて読んでみると、これがとてもいい本だった。

 じーじのその後の50年(!)の経験が無駄ではなかったようで、読んでいて立原さんの文章がこころに染み入ってくるような感じがする。

 本書は、立原さんのヨーロッパと韓国の紀行文集だが、ヨーロッパではスペイン・ポルトガル・ギリシア・イタリアを旅する。なかなか渋い選択だ。

 スペインやギリシアの大地を旅しながら、日本の風土との違いを考え、教会や神殿を見ながら、カトリックやギリシア神話を考える。

 ルナンの『イエス伝』などが引かれ、立原さんのカトリックにも詳しい一面を見せて、魅力的だ。

 一方、ポルトガルでは、庶民の暮らしに親しみを覚え、住んでもいいかなと考えたりする。

 素朴な飾りのない庶民の暮らしを愛でる一方で、高慢で強欲な金持ちたちには厳しく、立原さんの他の随筆や小説と共通している。

 この旅行の経験が、のちの立原さんの『帰路』などの小説にいかされており、読んでいて楽しい。

 さらに、韓国の旅もすばらしい。

 韓国のお寺を旅しながら、奈良のお寺を建てた渡来人のことを想像し、古の日本と韓国の関係を考える。

 臨済の寺に育った立原さんの原体験が、歴史に照射されて、仏教と神道の関係なども考える。

 なかなかに厳しい思索の旅で、同じようなことを考えることがあるじーじには参考になる。

 立原さんの文章は内容の確かさとともに、日本語の美しさが本当にすばらしいと思う。

 読んでいて、気持ちが良くなる文章だ。

 折りに触れて、読み続けていこうと思う。     (2023.5 記)

 


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