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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや原っぱカウンセリングなどをやっています

小倉清『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』2020・岩崎学術出版社

2024年09月30日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2020年9月のブログです

     *

 小倉清さんの『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』(2020・岩崎学術出版社)を読みました。

 新刊です。すごいですね。

 そして、とてもいい本です。

 小倉さんの最近の論文からちょっと古い論文までが並んでいて、それに小倉さん自身がコメントをつけています。

 このコメントがすごいです。辛口コメントばかり。

 人間、年を取ると、人にはともかく、自分には甘くなりがちですが、小倉さんは昔の自分にも容赦がありません。

 冷静に、しかし、「熱く」、昔の自分に注文をつける小倉さんは、とても素敵です。そして、尊敬できます。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、母乳を拒否した2歳の女の子の症例。

 家族や他人とうまく関係が持てないで騒ぐ女の子の初診で、小倉さんが女の子の心中を察知して、尊重し、何もしゃべらないままに診察を終えます。

 そして、それが、次回以降の治療に繋がったというケースです。すごいです。まるで手品のよう。

 しかし、小倉さんならではの技です。

 こんなことができるのは、あとは田中千穂子さんくらいではないでしょうか。

 二つめは、思春期に現れる乳幼児期来の諸問題、という論文。

 子どもの課題と諸問題を年代別に実に細かく、丁寧に説明をされていて、勉強になります。

 やはり当然ですが、治療者が子どもを尊重し、耳を傾け、丁寧に聴くことや心中を察することなどの大切さを改めて思い知らされます。

 さらに真剣に学んでいこうと思いました。          (2020.9 記)

     *

 2021年3月の追記です

 こんなことができるのは、田中千穂子さんくらいでは?と書いたのですが、もう一人、山中康裕さんを挙げるのを忘れていました(山中さん、ごめんなさい)。          (2021.3 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事  心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文 「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所  新潟市西区

 mail   yuwa0421family@gmail.com  

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井上靖『北の海』1975・新潮文庫-旧制高校に不合格になった少年の旧制四高柔道部体験記と青春の物語

2024年09月30日 | 小説を読む

 2023年8月のブログです

     *

 旭川生まれの井上靖さんの『北の海』(1975・新潮文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。

 かなり厚い本だが、110円。

 1975年(昭和55年)の文庫本、じーじが大学3年生の時の本だ。

 この青春もの(?)、なぜかじーじはきちんと読まずにきてしまった。

 暇な夏休みでもないと(いつも暇だが…)、厚い本はなかなか読まないかもしれないと思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で読む。

 これが面白い。

 時は大正15年。

 青春小説だが、相当に男の世界。

 なにしろ、世の中にあるのは柔道のみ(!)、勉強も女子も関係のないという世界。

 これは相当に(?)、気持ちのいい世界だ。

 今の芸能界など、吹っ飛んでしまう。

 こういう世界があったんだなあ、と思う。

 しかし、この時代にも戦争の予兆はある。

 なにせ、主人公の父親は軍医で、台湾に赴任中だ。

 父親への反感と時代への反感、男子の青春もなかなか大変だ。

 そういう主人公が友達や先輩に囲まれ、少しずつ成長していく。

 おそろしく真面目だが、不器用なユーモアがきいていて、読んでいて楽しい。

 文章も良質で、いい小説だと思う。

 あらすじはあえて書かないが、気持ちのいい小説だ。

 夏休みにいい本に出会えたと思う。       (2023.8 記)

   

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南木佳士『海へ』2004・文春文庫-山国暮らしの内科医と海沿いの街で暮らす親友の物語です

2024年09月29日 | 小説を読む

 2023年8月のブログです

     *

 南木佳士さんの『海へ』(2004・文春文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。

 今年の旭川では、古本屋さんめぐりばかりをしていて、そうすると一期一会というと大げさだが、読みたい本に時々出会う。

 そんな貴重な古本が1冊110円で買えてしまうので、年金暮らしのじーじにはありがたい。

 もっとも、売る時はとっても安くてかなしくなるが…。

 南木さんの『海へ』は、昔、なんとなく読んだような気もするのだが、記憶があまりはっきりしていないので、読んでみた。

 読んでみたが、過去に読んだことがあるのか、それでもはっきりしない(?)。

 困ったものだ(こういう時に旅先だと本棚を確認できないのがつらい。じーじのばあい、確認しても見つかるとは限らないが…)。

 しかし、フロイトさんによれば、大切な夢は何度も見るから心配ない、という。

 ならば、読書も同じで、大切な本は何回でも読めるから心配ないのだろうと思う(じーじの新説?)。

 さて、本書、死者を看取りすぎて鬱病になった内科医が、学生時代の親友の誘いで海辺の町に遊びにいく物語。

 山国暮らしの内科医が、海暮らしの親友を訪ねるが、それぞれに抱えた問題があり、生きることの辛さや哀しさに出会う。

 なかなか辛い出会いが多いが、過去も現在も良質の物語が描かれる。

 物語の基調はあいかわらず暗いが、底のほうに少しだけユーモアが出てきている感じがする。

 単行本は22年前の本。

 南木さんも、少しだけ明かりが見えてきた時期だったのかもしれない。       (2023.8 記)

 

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堀江敏幸『雪沼とその周辺』2008・新潮文庫-のんびりと懐かしい感じの物語

2024年09月27日 | 小説を読む

 2019年のブログです

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 堀江敏幸さんの『雪沼とその周辺』(2008・新潮文庫)を読みました。

 夏休みに東川町にいる時に、なんとなく堀江さんの世界にはまってしまい、ずいぶん小説やエッセイを読んでしまったのですが、今もその余韻が続いていて、またまた読んでしまいました。

 特別大きな出来事もなく、ドラマチックでもなく、淡々とした日常が綴られるのですが、きれいな映像を見ているかのように、気持ちが落ちつきます。

 懐かしさ、のんびり、おっとりとした世界、なんとなく心が澄んでくるような世界、しかし、一方で、切なさや寂しさ、哀しみがにじんでいるような世界。

 おおげさではないものの、生きることのいろいろな場面がめぐります。

 大きくはないけれど、小さい喜び、しかし、哀しみや苦しみも伴ないます。

 基本にあるのは愚直な真面目さ。

 真面目さだけが取り柄の真摯な人生、そして、それは喜怒哀楽、清濁を合わせた大きな世界です。

 語彙不足もありますが、今のじーじのちからでは、読んだ感じをこれ以上、言葉にするのは難しいです。

 本書は、川端康成文学賞と谷崎潤一郎賞を受賞していますが、それにふさわしいおとなの良質な小説だと思います。     (2019.9 記)

 

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袴田事件再審無罪と兵庫県知事失職のニュースを見て思ったこと-じーじのじいじ日記(2024.9.26)

2024年09月26日 | じいじ日記を書く

 2024年9月26日の日記です

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 夕方のニュースを見る。

 袴田さんの再審裁判、無罪。

 良かった。

 裁判所が捜査機関の捏造3件を認定する。

 裁判所の冷静な勇気に感動するとともに、捜査機関のメンツを保とうとする姿勢に醜さを感じ、さらに、国家権力の怖さを実感する。

 今後、可能な限り、警察、検察の責任を追及し、きちんと処罰をしてほしい。

 一方、兵庫県知事。

 失職を選択し、出直し選挙に立候補するという。

 辞職は頭にないといい、道義的責任も否定する。

 しかし、県職員が自殺をしており、その原因は明らかに県知事にあるのではないか。

 公益通報に当たらないと強弁するが、職権乱用の責任は逃れられないだろう。

 マスコミも知事の言い逃れをだらだらと放送するだけで、責任追及ができていない。

 子どもたちがこういうニュースを見て、言い訳を上手にすれば、この世の中はなんとかなると誤解するのが怖い。

 勉強だけができて、公務員として出世しても、人の痛みがわからない人間ではだめだ。

 頭がいいだけの自己愛おぼちゃまだ。

 知事の資格はないと思う。

 せっかくのビールをおいしくいただけるようなニュースをマスコミにはお願いしたい。            (2024.9 記)

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新井満『尋ね人の時間』1991・文春文庫-おとなの哀しみと父娘の面会交流を描く

2024年09月26日 | 小説を読む

 2020年9月のブログです

     *

 本棚を眺めていたら、読んで、読んで、と言っている本があった、ような気がして、新井満さんの『尋ね人の時間』(1991・文春文庫)を読む。

 新井さんは新潟市出身の作詞家で、小説家。

 今は北海道に住んでいるらしい(なんだか身近な感じ)。

 『尋ね人の時間』は1988年の芥川賞受賞作。

 おそらく20数年ぶりに読んだが、例によって、当然、あらすじも忘れていて、新刊同様に読む。

 これがなかなかいい。

 落ちついたおとなの小説という感じ。

 びっくりしたのだが(一度読んでいて、びっくりした、もないが)、離婚で別れた小学生の娘との面会交流の場面が出てくる。

 面会交流の場面が出てくる小説としては、かなり早いほうではないだろうか。

 父娘の派手ではないが、しんみりとした交流がとてもいい。

 小説全体もおとなの哀しさがよく描けていて、いいと思う。

 新井さんの他の小説も読みたくなったが、見つけ出せるかどうか。

 こちらも年末までのお楽しみかもしれない。          (2020.9 記)

 

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樋口有介『八月の舟』1999・ハルキ文庫-高校男子のやるせなさ、切なさ、不安を描く

2024年09月25日 | 小説を読む

 2021年8月のブログです

     *

 樋口有介さんの『八月の舟』(1999・ハルキ文庫)を久しぶりに読みました。

 何度か読んでいるのですが、感想文は初めて。

 高校生のやるせなさや切なさ、不安などが淡い恋と一緒にうまく描かれています。

 主人公は母子家庭で育つ男子高校生。

 高校生にしてはニヒルな人生観を持っていますが、好きな女の子にラブレターをうまく書けないでいて悩むという、高校生らしさ(?)もあります。

 例によってあらあすじはあえて書きませんが、不良の親友やその女友達、その周りの同級生やおとなたちとのやりとりが、軽妙でかつ少しだけ哀しいです。

 解説の諏訪来人さんが、樋口さんの小説は、世の中の人間はすべてが努力をしても成功するわけではないが、でも悪いことばかりでもないと励ましてくれる、と述べておられますが、うまい表現だと思います。

 ここには、努力をすれば必ず報われる、という安直な人生観を否定し、しかし、頑張ればそれなりのことはある、という実直な人生観があるようです。

 そして、かなわないことへの哀しみ、やりきれなさ、失望などが避けられないことも経験します。

 これらが、硬直な人生論でなく、すてきな物語として美しく語られるところが魅力です。

 文句なしに面白く、そして、少しだけ哀しい小説です。 

 暑い夏にも、清涼な読書ができて幸せです。      (2021.8 記)

 

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田中千穂子『母と子のこころの相談室』2009・山王出版-こまやかで丁寧な母子面接に学ぶ

2024年09月24日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2013年3月のブログです

     *

 今年は新潟も大雪で、しばらく冬眠をしていました(冬眠をするなんて、クマさんのようですね)。

 ようやく目覚めました。

 転勤の荷物整理の中で、田中千穂子さんの『母と子のこころの相談室』を再読しました。

 とてもよかったです。

 このすごさは読んでみなくてはわからないだろうなと思います。

 じーじが今回、読んでいて特にすごいなと思ったのは、プレイセラピーの時に砂をかけてきた子どもに対して、田中さんが、砂かけばばあが来た!、と言って、砂をかけられるという困難な事態の時に、それを砂かけばばあごっこという遊びにしたという事例。

 美人の田中さんでも時にはばばあ(?)になるんだと妙に感心をしてしまいました。

 また、じーじも尊敬をしている精神分析の藤山直樹さんの論文からの引用がたくさんあることに改めて気づき、これも大きな収穫でした。

 今、じーじは放送大学大学院の修士論文を作成している真っ最中なのですが、いい本を再読できたなと本当に思えました。        (2013.3 記)

     *

 2019年12月の追記です

 久しぶりに再読をしました。やはりいい本です。

 田中さんの丁寧でこまやかな臨床の様子がわかりやすく描かれていて、勉強になります。

 今回も一番印象に残ったのは、砂かけばばあごっこのシーン。

 プレイセラピーで砂をかけられて困っている時に、砂かけばばあが登場するという、その即興性と創造性に感心させられます。

 じーじもいつか砂かけじじい(?)になってみようかと思います。

 全編に子どもさんとおかあさんへの深い愛と確かな経験が満ちていて、感動的です。

 初学者のじーじにはまだ気づけない部分も多いと思いますので、さらに勉強を深めたいと思います。        (2019.12 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事  心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文 「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所  新潟市西区

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荻原浩『なかよし小鳩組』2003・集英社文庫-ハチャメチャで魅力的な登場人物に笑ってしまいます

2024年09月24日 | 小説を読む

 2020年9月のブログです

     *

 本棚を眺めていると、なんと、荻原浩さんの『なかよし小鳩組』(2003・集英社文庫)が目にとまりました。

 このあいだ、シリーズ第3作の『花のさくら通り』を読んだばかり。

 ユングの共時性、でしょうか(?)。

 これは読まない手はありません。

 しかも、例によって、ほとんど内容を忘れてしまっているので、新刊同様にワクワクしながら読んでしまいました。

 面白かったです。

 この本も電車の中で読んではいけません。

 メインの登場人物は第3作とほとんど同じですが、ゲスト(?)がすごい!

 ヤクザさんです。

 小鳩組。   

 かわいい名前ですが、本物のヤクザさんたちです。

 あらすじは書きませんが、お話は主人公たちとヤクザさんたちのドタバタ劇。

 ヤクザの怖さも出てきますが、ホロッとする場面もあります。

 そして、ラストがすごい!

 驚愕のラストです。

 読後感はとても爽快!

 いい小説です。

 荻原さんはあいかわらずいい仕事をしています。      (2020.9 記)

       *

 同日の追記です

 シリーズ第3作、第2作と読んだので、次は当然、第1作『オロロ畑でつかまえて』となりますが…。

 『なかよし小鳩組』は、なぜか、読んで、読んで、という感じで、本棚の一番前にあったのですが、『オロロ畑』はどうでしょうか。

 ざっと見た感じでは、見当たりませんね。

 またまたかなりの恥ずかしがり屋さんのようなので、年末にかけてのお楽しみになりそうですね。

 

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大場登「臨床家・河合隼雄の変容」(日本ユング心理学会編『ユング心理学研究第6集・河合隼雄の事例を読む』2014・創元社)

2024年09月23日 | ユング心理学に学ぶ

 2014年のブログですが、今でも時々読んでくださる方がいる不思議なブログです。

 大場先生の力なのか、河合さんの力なのか、とにかく不思議ですが、とりあえず再録します。

     *

 またまた,ようやく長い冬眠から目覚めました。

 年齢のせいか,だんだんと冬眠の時間が長くなってきているような気がします。

 さて,大場先生の「臨床家・河合隼雄の変容」(日本ユング心理学会編『ユング心理学研究第6集・河合隼雄の事例を読む』2014・創元社)を読みました。

 大場先生は(先生はじーじがつい最近まで在籍していた放送大大学院の先生で,たいへんお世話になりました。だからほめるというわけではないのですが…)ユング派の分析家ですが,河合隼雄さんを教祖のようにおっしゃる方が多い中で,めずらしく河合さんを一臨床家として冷静に語ることのできる臨床家・研究者だと思っています。

 この文章でも,河合さんを時期的に丁寧にたどりながら,河合さんの臨床家としての深まりをわかりやすく述べていると思いました。

 力のある人は本当にいろんな見方,読み方ができるんだなと改めて感心させられました。

 大場先生は,じーじが大学院の授業で,「ここはユング派だとどう理解しますか?」と質問をすると,いつも,「ユング派というより臨床心理学的にはこうかな…」と,より幅の広い見方に導いてくださったように思います。

 ありがたかったなと感謝しています。

 じーじもこれから少しでも臨床の力をつけていきたいと思います。

 なお,一緒に収録をされている皆藤章さんの「河合隼雄の臨床」も,河合さんの,沈黙と気配,について述べており,こちらもとてもいい文章でした。         (2014.3 記)

     *

 2024年9月の追記です

 前にも書いたかもしれませんが、昔、たしか、日本語臨床研究会だったと思うのですが、河合さんが講演をされました。

 あいかわらず、面白くて、すごくためになるお話が続いたのですが、しばらくして急に、時間ですので、今日はこのへんで、と終わりになりました。

 まだまだお話が続いているところだったので、じーじはびっくりしましたが、しかし、やはりすごい臨床家は時間をきちんと守るんだな、と感動もしました。

 河合さんはやっぱりすごい人でした。          (2024.9 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事  心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文 家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所  新潟市西区

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荻原浩『月の上の観覧車』2014・新潮文庫-人生と家族を見つめる小説たち

2024年09月23日 | 小説を読む

 2020年8月のブログです

     *

 またまた荻原浩さんを読んでしまいました。

 短編集『月の上の観覧車』(2014・新潮文庫)。

 思わず、うまいな!と思ってしまいます。

 座布団三枚!です。

 人生を半分くらい過ぎたおとなの小説、という感じ。

 決して明るいだけの小説ではないのですが、しかし、かといって、暗いだけでもない。

 明るさを見据えて生きようとしながらも、しかし、どうしようもないこともある、といったところ。

 あえていえば、やはり、いつものくりかえしになってしまいますが、生きることの哀しみ、ということでしょうか。

 人生には楽しいこともたくさんありますが、それと同じくらい哀しいこともある、いや、むしろ、哀しいことのほうが多いかもしれない。

 そんな感じでしょうか。

 八つの短編からなりますが、いずれもがセピア色の写真のような味わいがあります。

 じーじが好きなのは、「レシピ」。

 中年女性の回想ですが、ちょっとユーモアが効いて、読んでいて楽しくなります。いい小説です。

 離れて暮らす娘との面会交流を描く、「チョコチップミントをダブルで」もいいです。

 面会交流で張り切りすぎちゃうお父さんの姿は、家裁の面会交流の時を思い出します。

 普通、のままが一番いいのですが…。

 いろいろなことを考えさせられる、人生と家族を見つめる小説たちです。           (2020.8 記)

 

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村上春樹『シドニー!』(①コアラ純情篇・②ワラビー熱血篇)2004・文春文庫-村上さんのシドニー五輪観戦記

2024年09月22日 | 村上春樹さんを読む

 2021年8月のブログです

     *

 村上春樹さんの『シドニー!』①コアラ純情篇・②ワラビー熱血篇(2004・文春文庫)を久しぶりに読みました。15年ぶりくらいです。

 文字通り、村上さんのシドニー五輪観戦記。

 雑誌「ナンバー」の依頼原稿とのことです。

 しかし、村上さんのこと(?)、オリンピックなんてちっとも好きじゃないんだ、とおっしゃいます。

 事実、開会式は途中で退席します。

 すごい観戦記(?)です。

 いいなあ、自由で。

 村上さんは、最近のオリンピックの商業主義やメダル至上主義に反対をします。

 選手のことを考えない開会式や閉会式を批判します(村上さんは他の本でも、市民マラソン大会での来賓の長い挨拶が選手のことを考慮していないと参加者の立場から批判をしています)。

 一方、たまたま観戦したゲームで、一所懸命にプレーをする選手たちに感動をします。

 そして、村上さんの真骨頂ですが、オーストラリアの先住民であるアボリジニの選手の苦悩を描きます。

 ここは感動的で、しかし、なかなか読むことも苦しいドキュメンタリーです。

 合間のオーストラリアの風景描写は楽しいです。

 なかなかいい国みたいです(もちろんアボリジニの問題をはじめとして表と裏があるのですが…)。

 今回の東京五輪を振り返ってみても、考えることの多い本です。       (2021.8 記)

     *

 2024年9月の追記です

 じーじは今年のパリ五輪もテレビをほとんど見ませんでした。

 なんだかわけのわからない競技が増えて面白くありませんし、たしかに商業主義が見え隠れしています。

 金メダルの数が増えても、感動がないです。

 選手の頑張りはすごいと思いますが、それは選手をほめればいいのであって、国家がすごいわけでもないでしょう。

 もっと純粋にスポーツのすばらしさを楽しみたいと思います。      (2024.9 記)

 

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野田知佑『ユーコン漂流』2019・モンベルブックス-野田さんと愛犬ガクのアラスカ・ユーコン川漂流記です

2024年09月21日 | 随筆を読む

 2022年8月のブログです

     *

 野田知佑『ユーコン漂流』(2019・モンベルブックス)を読む。

 東川の道の駅にあるモンベルに、いい本はないかな?と(いい服は?でないところがじーじらしい!)入ってみたところ、ペーパーバック版の本書を発見。

 以前、文庫本で読んだことがあるが、そろそろ中身を忘れてきていたので(?)、購入。

 値段も手頃で、なかなか格好いい本なので、袋は断わって、手に持った。

 表紙のカヌーにのる野田さんとガクの写真がいい。

 本書は野田さんと愛犬ガクが30年ほど前にアラスカのユーコン川を3年に分けてカヌーで下った記録。

 カヌーによる川下りだけでなく、現地のインディアンやエスキモーとの交遊がとても楽しい。

 現地の人々とうまく付き合えないでいる欧米人とは対照的に、野田さんの表裏のない態度での現地の人たちとの付き合いが面白い。

 そして、アラスカといえば、クロクマ。

 クロクマとの付き合い方も面白い。

 野田さんは一応、ライフルを購入するが、結果的にはライフルは鈴の役目で終わる

 クロクマの居そうなところにテントを張る時には、鈴の代わりにライフルを数回撃ち、人が居ることを知らせて、遭遇を回避する。

 それでだいたいの危険は回避する。

 一度、ガクが森の中でクロクマと闘い、野田さんのテントに逃げてくると、野田さんはライフルでクロクマを威嚇し、追い払う。

 そして、ガクに、逃げる時には、あっちへ逃げろ、と怒ると、ガクが恐縮して小さくなった、という描写には思わず笑ってしまう。

 また、食べ物がなくなって困っている時には、ガクがサケの頭を見つけてきて、それを野田さんと半分ずつ分けるなど、野田さんはガクとも対等の付き合いをする。

 そういう野田さんの姿がすがすがしいのだと思う。

 社会のゴタゴタで嫌になった時に、読むといい本だと思う。      (2022.8 記)

 

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伊坂幸太郎『砂漠』2017・実業之日本社文庫-伊坂ワールド全開の学生小説です!

2024年09月20日 | 小説を読む

 2022年8月のブログです

     *

 伊坂幸太郎『砂漠』(2017・実業之日本社文庫)を旭川の古本屋さんで買って読む。

 だいぶ前に単行本で読んだ記憶がうっすらとあったが、中身を忘れてしまっていて、旅先で本棚の確認もできず(かりに確認をしても見つけられるともかぎらず…)、古本のわりに少し高かったがつい買ってしまう(うちの奥さんには内緒)。

 これがいい小説。

 伊坂ワールド全開だ。

 例によって、あらすじは書かないが、盛岡から仙台の大学の法学部に進学した真面目な主人公が、友人とのつきあいの中でいろいろな経験をして、こころの幅を広げていくさまが、ユーモラスに描かれていて心地よい。

 もちろん、楽しいだけでなく、たくさんの哀しみや憤り、怒りなども丁寧に描かれていて、青春の苦しさも感じられる。

 真面目で少し堅苦しい主人公と好対照なのが、理屈より行動を重視する友人の西嶋。

 一見、はちゃめちゃな理屈と行動で回りを驚かすが、一本筋が通っていて、気持ちよい。

 彼らが、友人づきあいの中で、お互いに影響を与え合っていく様子は、読んでいてうらやましくなるような関係だ。

 西嶋が高校生の時に出会う家裁調査官は、『チルドレン』の陣内調査官を彷彿させるいい味の調査官。こういう調査官が増えてほしい。

 真面目だけではない、いろんな隠し味が散りばめられていて、それを味わうのも楽しい。

 旅先の木陰で、とても心地のよい物語を楽しめた。       (2022.8 記)

     *

 2024年9月の追記です

 その後、我が家の本箱周辺を捜索したところ、なんと本棚の横に単行本の『沙漠』を発見!

 じーじは単行本はほとんど買わないのだけれど、どうしたのだろう?

 当然、うちの奥さんには内緒!       (2024.9 記)

 

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樋口有介『風少女』1993・文春文庫-本の帯に、さわやか青春ミステリー、とあります

2024年09月15日 | 小説を読む

 2021年8月のブログです

     *

 またまた樋口有介さんを読んでしまいました。

 本棚の横に積んであった『風少女』(1993・文春文庫)。

 だいぶ前の本です。

 年寄りのじーじがご紹介するのは少し恥ずかしかったのですが、とても面白かったので、ついパソコンに向かってしまいました。

 このところ有介ワールドにはまってしまっていて、ずっと読んでいるのですが、さすがに感想文を書けるのは、限られます。

 おそらくは、単に面白いだけでなく、生きることの切なさや哀しみが感じられるからではないかと思うのですが、そういう分析はなかなか難しいです。

 主人公は男子大学生。

 あらすじは例によって詳しくは書きませんが、昔のガールフレンドが亡くなり、なぜかその妹と一緒に亡くなった事情や周辺をさぐることになります。

 若い人には若いなりの悩みや苦しみ、嫉妬やねたみが出てきて、なかなかたいへんです。

 そこのところを、ちょっとしたユーモラスな語り口で包み込む樋口さんの筆はとてもいいです。

 苦しい人生も、少しのユーモアの力で、なんとか進めそうな感じ。

 真面目一方ではなく、不真面目の力、遊びの力を感じます。

 このあたりの感じ、うまく伝えるのが難しいですが、よかったら読んでみてください。

 年取ったじーじでも、生きていることは悪くはないな、と思えるような、少しだけ元気をもらえる小説です。      (2021.8 記)

 

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