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マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

白い馬の季節

2007年10月04日 | 映画
 「僕、競走馬です。 成績次第の厳しい世界で生きてます」

 草原に座り込んだ一頭のかわいい馬が、こうしゃべる「セゾンカード」のCMにびっくりした。多分、このCMを作った方はかなり競馬に精通した方なんではないだろうか?クレジットカードと競走馬をうまく結びつけていている。斬新な発想で見る人を引きつける。でも、実際に馬は地面に座ることは不可能だと思うけど。

 競走馬も厳しいが、モンゴルの馬も厳しい。

 モンゴルの草原はカンバツ続きで、急速に砂漠化が進み、遊牧民たちの家畜が次々に倒れている。これが、現在のモンゴルの実体であることを知って驚嘆した。そんな遊牧民と馬との強い絆を描いたのが、10月6日から公開される「白い馬の季節」である。

 遊牧民ウルゲン一家はカンバツのために、最愛の息子の学費が払えなくなる。家族の一員であった白い馬を売り、町で暮らそうと妻が言う。しかし、夫ウルゲンは根っからの遊牧民。頑として、それを認めない。

 このストーリーにかなり古い日本映画、山本嘉次郎監督、高峰秀子主演の「馬」をダブらせる往年の映画ファンもいるだろう。馬と農民の関係を描いた秀作であった。

 政府の命令で牧草地に柵が張られ、ついに、遊牧民として生きれれなくなったウルゲンは、泣き泣き白い馬を売り、町に出る。

 自然と共に生きる人々の、その大切な自然が目の前から奪われていく悲しさと寂しさが、画面いっぱいに広がる。

 ラストは馬と人が乾いたアスファルトの一本の道路で繋がる。哀感がほんのりと漂い、涙が誘われる見事なエンディングである。

 競走馬もモンゴルの白い馬も、厳しい世界で生きているのは変わりない。


公式サイト http://www.shiroiuma.jp/
監督・脚本・出演 : ニンツァイ
出演 : ナーレンホア 、 チャン・ランティエン
公開 10月6日 岩波ホール

 

エディット・ピアフ ~ 愛の讃歌

2007年09月14日 | 映画
 
 今年見た試写の中で、最高の作品だった。いや、もしかしたら、私の映画人生の中で、ベスト10に入る素晴らしい作品に出会ったようだ。あまりにも感動が大きくて、試写を3度も見てしまった。こんなことは最近滅多になかった。

 その後の数ヶ月の間、私は大好きなヘヴィーメタルから遠ざかり、毎日、ピアフのCDを聞きこんでいた。「愛の讃歌」「ミロール」「バラ色の人生」。ビブラートが効いた、巻き舌で軽快に唄うピアフの声域の深さに獲り付かれ、人生の哀歓を体中で表現するピアフの詩にも夢中になっていた。

 晩年にピアフが唄う「水に流して」は、あまりにもはかなく悲しくて、聞く度に涙がこぼれる。

 エディット・ピアフ…。フランスが産んだ最高の歌姫であり、シャンソンを世界に広めた伝説の歌手でもある。ピアフの影響を受けた歌手や作家は数知れず。詩人・ジャン・コクトーとの親交はあまりにも有名で、シャルル・アズナブール、イヴ・モンタンの才能をいち早く見抜き、世に送りだしたのもピアフだった。

 そんなエピソードが、少しだが、挿入されているのも興味深い。

 47年間のピアフの壮絶で数奇な人生を演じた女優がマリオン・コティヤールである。今公開中のラッセル・クロウ主演の「プロヴァンスの贈り物」にラッセルの恋人役で出演している。しかし、残念なことに、この作品のマリオン・コティヤールは全く印象に残らなかった。単なる綺麗なおねーちゃんだけの印象しかなかった。だから、エディット・ピアフ役がこのマリオンであることを知って、ぶったまげたのである。

 女優は演じる役によって、これほど変われるものだと、溜め息が出ていた。適役との出会いが、女優の運命を変え、ひと回りもふた回りも役者として成長させる。

 マリオンはピアフ以上にピアフになり切り、スクリーンの中に故人のエディット・ピアフが甦ったのではないかとさえ錯覚させる。その演技は、あまりにも完璧で、名演技などというステレオタイプの言葉が虚しく響く。言葉が全く見当たらない。

 そうだ!ピアフが天国から降りてきて、マリオンの体に乗り移り、マリオンの体の中で生き返っていたのだ。今思えば、このピアフは実はマリオンではなくて、実際のエディット・ピアフだったのかもしれない。

 それくらい、マリオンの演技はカルト的だったのである。

 ここまでピアフに魂を売ってしまった女優・マリオンのその後の人生が心配で、8月に行われた彼女の来日記者会見には是が非でも行った。彼女は元気で、テキパキと質問に答えてくれたので、安心した。抜け殻になっていなかったのだ。しかし、黒のドレスに身を包んだ彼女は、素のままでもピアフにそっくりだったので、ピアフ役が彼女にとって、いかに大きなものだったかが伝わってくる。

 早くも、来年のアカデミー賞主演女優賞の声が出ているが、マリオン・コティヤールが取らなくて、誰が取るのだろうか?今のところ全く思い浮かばない。


 脇を固める、薄幸な子供時代を演じた子役女優たちの演技も見もの!今でも数々の名場面が走馬灯のように頭の中を駆け巡り、ここまで心理の探求と震えのくるような感動をさせてくれたこの作品に感謝の気持ちを捧げる。

 劇場公開は9月29日。私と同じ感動を味わい、「この映画に出会ってよかった!」と涙ぐみながら、映画館を後にする大勢の観客の声が、今から聞こえて来そうだ。

公式サイト  http://www.piaf.jp/
監督 オリヴィエ・ダアン
出演 マリオン・コティヤール ジェラール・ドパルデュー
配給 ムービーアイ
公開 9月29日から、日比谷みゆき座他全国ロードーショー
 

 

オフサイド・ガールズ

2007年08月28日 | 映画
 フェミニズムの視点から考えると、この作品に女性差別の匂いを嗅ぎつけ、イランという国に憤りを感じる人もいるだろう。なにしろ、イランでは、法律上、女性のサッカー観戦は禁止されているからである。

 2006年のドイツワールドカップ出場がかかったバーレン戦に、どうしても生で試合を見たいイランの少女たちが、男装してスタジアムに忍び込む。だが、あっけなく警察にバレて捕まってしまう。

 スタジアムの外に設けられた仮設留置所に保護された少女たちは、まさに「蛇の生殺し」状態。スタジアムのお客たちの歓声や罵倒から、イランチームの状況を想像し、共に喜び、怒り、落胆する。

 少女たちのサッカーへの熱意と愛情がひしひしと伝わり、どこかコミカルで楽しいシーンである。

 一人の少女がトイレに行きたくなる。しかし、スタジアム内には女性トイレが無い。看守がトイレにいる男性客を締め出して、少女を一人だけにする。このチャンスを狙って、少女は脱出し、うまくスタジアムに潜り込むのに成功する。

 少女がぼそっと言う。「日本人観光客の女の人のためには、トイレがきちんと用意されているのに!なんで私たちは?」
 
 このセリフこそ、法を犯してまで、サッカー観戦をしたかったイランの女の子たちの肉声であり、イラン政府の矛盾への憤りなのであろう。

 しかしである。確かにこの作品はイランの女性差別をモチーフにしているものの、私はむしろ、そんな重いものは全く感じなかった。

 この少女たちは、単純に全世界のサッカーファンの気持ちを代弁しているだけに過ぎないのではないか。ドイツワールドカップのチケットを「ヤフオク」で落札できず、泣き泣きドイツ行きを諦めたファンや、会場には行けないが、日本チームを応援するためにアウトビューイングに集まる熱狂的な日本のファンの気持ちと重なる。

 スタジアムに入れないからこそ、画面や音声から伝わる試合の展開に、一喜一憂する運命共同体のファンたちを、女の子はスタジアムに入れないというイランの古い法律を借りて、実は全世界の熱狂的なサッカーファンの深層心理を描いた、実に新鮮で楽しいスポーツ映画なのである。


9月1日より公開

監督 ジャファル・パナヒ
脚本 ジャファル・パナヒ ジャドメヘル・ラスティン
出演 シマ・モバラク・シャヒ サファル・サマンダール シャイヤステ・イラニ
    M・キェラバディ イダ・サデキ ゴズナル・ファルマニ
配給 エスパース・サロウ
 
公式サイト  http://www.espace-sarou.co.jp/offside/

「角砂糖」

2007年08月01日 | 映画

 8月に競馬ファン必見の韓国映画「角砂糖」がやって来る。

 韓流シネマ・フェスティバル2007「ルネッサンス」で上映される一本がこの「角砂糖」。昨日、その待ちに待った試写を見てきた。

 済州島の牧場で生まれ育った少女シウン(イム・スジョン)が名女性騎手になるまでの成長を描いたヒューマンストーリーである。 幼い頃に母親を亡くしたシウンの母親代わりをしてくれたのが「将軍」という名前の牝馬。そして、「将軍」は仔馬「雷」を産むが難産の後遺症で死んでしまう。

 シウンは弟のように「雷」を愛するのだが、ある日、父親はこの「雷」を売ってしまう。この悲しみを経て、シウンは女性騎手としてデビューするのだ。

 馬好きの私はドラマの序盤から涙が溢れて、ラストでは、人目もはばからず「おーい、おーい」と号泣した。持っていたハンカチが涙で絞れるほどだった。

 「緑園の天使」「夢駆ける馬・ドリーマー」「シービスケット」を足して3で割ったような感動作品。その感動の影に、競馬業界のひずみにもチクリとメスを入れているのもドラスティック。そして、こんな素晴らしい競馬映画が韓国から登場してくれた事実に感激した。  

 泣いて、泣いて、泣いて、心の中をすっからかんにして、競走馬と人の愛の物語を堪能尽くした。馬も人も素晴らしい!!!!

 詳しくは「角砂糖」公式サイト

 http://www.cinemart.co.jp/han-fes2007/movies/movie21.html  

 


GRACE(グレース)8月号「映画歳時記」!

2007年07月06日 | 映画
         
       【お知らせで〰す!】       
 
 

 協力している7月6日発売のGRACE(グレース)「世界文化社」8月号の「映画歳時記」に、なんとマリリンが映画評を書いています。 
 
 あ、その前に、全国の「GRACE」女性愛読者の皆様、そして、特に「映画歳時記」で連載なさっている俳優の豊川悦司さんの映画評を楽しみしている女性ファンの皆様、ごめんなさいね。8月号は豊川悦司さんが、10月6日公開の映画「サウスバウンド」の長期ロケのために、お休みになってしまいました。  
 
 それで、「相馬眼」(馬を一目見て走るかどうかわかる天才を、競馬の世界ではこう呼ぶ)ならぬ「相映眼」の持ち主の「GRACE」編集部のめちゃくちゃ素敵で気の合うCさんから、急遽、トヨエツさんの代役という、畏れ多いご依頼を受けて、今月号だけマリリンが担当しちゃいました。
 
 でも、ご安心くださいね。来月号には、「あるときはほんわか、あるときはドキッとさせてくれる」トヨエツさんの映画コラムが戻ってきますので、楽しみにしてくださいね!   
 
 なんだか、黒子に徹していたマリリンが表舞台に登場しちゃって、ちょっとこっ恥ずかしいんですが、マリリンお奨めの映画は7月14日公開の「イタリア的、恋愛マニュアル」です。http://www.renaimanyuaru.com/  
 
 全4編からなる喜劇のオムニバス映画です。この映画をご覧になって、大笑いしない人はいないと確信しています。それだけでなく、男と女の愛の機微や心の葛藤が盛りだくさん描かれていて、心が暖まり、満足度は120パーセント以上です。  

 詳細は8月号の「GRACE」に目いっぱい書いてますので、是非書店でお求めになっていただけるとうれしいです!! よろしくお願いします!

フリーダム・ライターズ

2007年07月01日 | 映画
 生徒と先生の交流を描いた映画で、最も感動した映画が過去、現代に4本ある。

 シドニー・ポワチエ主演の「いつも心に太陽を」(67年)、ピーター・オトュール主演の「チップス先生、さようなら」(69年)、ジャック・ブラック主演の「スクール・オブ・ロック」(04年)、ジェラール・ジュニョ主演の「コーラス」(05)である。


 この4本の製作された年が、60年代末期とここ数年の現代の作品と、真っ二つに分けることができることも、今気がついた。「いつも心に太陽を」「チップス先生、さようなら」から、「スクール・オブ・ロック」「コーラス」まで、なんと、約40年間ものブランクがあるではないか!

 そして、ここに5作目の名作が仲間入りした。ヒラリー・スワンク主演の「フリーダム・ライターズ」である。

 これは、「いつも心に太陽を」に近い作品である。シドニー・ポワチエ扮する黒人教師が、白人だけが通うハイスクールに赴任する。当時の黒人教師がどういう差別を受けていたか、推して知るべしである。しかし、ポワチエはひたすら愛という武器で、生徒たちの心を掴んでいくのだ。この作品がアメリカの黒人差別が激烈化した時代に作られたことも感慨深く、意味深い。

 「フリーダム・ライターズ」もまた、背景は違えども、94年のロス暴動直後のロサンゼルス郊外のハイスクールが舞台になっている。人種が激しく対立する高校に新任の英語教師・エリン(ヒラリー・スワンク)が赴任してくる。

 この高校では、肌の色が「浅黒いか、黄色か、黒いか」で徒党が組まれ、その闘争、抗争たるものは筆舌に尽くし難い。学校に行って、一日でも無事に生きて帰れれば、それだけでめっけもんというくらい、クラスは荒廃し、暴動が止まない。

 こんな凄まじい教育現場で、エリンが思いつくのが日記帳である。生徒たちに日記帳を渡し、いつでも好きなことを書き、書きたくない時には書かなくてもいい、そんなリベラルなホームワークを与える。

 この日記帳に書かれた生徒たちの文章が画面に露見された瞬間に、絶望的だったこの映画に希望の鐘が鳴り始まる。生徒たちの家庭や社会で置かれた生々しい、痛々しい肉声の一語一語に、未熟な熱血教師エリンは、強く心を打たれる。荒んだこの生徒たちに、「今一番必要な教育は何か?」と自問した時、「これだ!」と閃くのである。

 その鍵は「ホロコースト」と「アンネの日記」にあるのだ。

 その展開は伏せておくが、「人は書くことで救われ、解放される」という哲学がこの映画の核となって強く迫ってくる。エリンという女教師が単なる熱血先生だけでなく、夫や父親との確執に悩む普通の女性として描かれている点も興味深い。その繊細な若い女性教師の心の葛藤や揺れをヒラリー・スワンクが実に人間的に上手く演じきっている。

 そして、ラストは見事。クレジットに流れる生徒たちの卒業後の人生が分かった瞬間、「フリーダム・ライターズ」という映画を2度味わうことになる。本編さながら、2度目のこの大きな感動こそ、もしかしたら、事実に基いたこの作品が真に訴え、描きたかった世界なのかもしれない。


公式サイト http://www.fw-movie.jp/

監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
主演 ヒラリー・スワンク パトリック・デンブシー マリオ
公開 7月21日 シャンテシネ他全国ロードショー
配給 UIP
2007年 アメリカ映画
 

あるスキャンダルの覚え書き

2007年06月01日 | 映画
 初老の女教師(ジュディ・デンチ)が公園のベンチで一人で寂しそうに座っている。この孤独な女教師の週末の予定と言えば、コインランドリーに洗濯物を出しに行くだけだ。
 
 そこに、新任の美術の教師、ケイト・ブランシェットが赴任してくる。美しさと素晴らしい家庭を持ち備えた完璧な女性ケイトは、不覚にも遊び心で、15歳の教え子とデキてしまうのだ。

 その不倫現場を覗いたジュディはこの日を境に、ケイトの弱みを握る。今まで孤独で退屈な人生を歩んできたジュデイは、この密通を発見したことにより、あたかも水を得た魚のように、生き生きとしてくるのである。

 ケイトの不倫は学校の誰にも言わないから、安心してね。と、うれしそうにほくそ笑むジュディ・デンチの表情の恐さに仰天しない人はいないだろう。ケイトはその言葉にホッとし、二人は無二の親友になっていくのだ。

 しかし、しかし、この出来事が二人の女の人生を狂わせる、前哨戦になっていたとは!!!!。
 
 生粋の英国女優のジュディ・デンチは98年に、その巧みな演技力が認められて、大英帝国の「デーム」の称号を授与された。今まで、彼女の作品の中で、驚嘆させられたのが、女流作家アイリス・マードックのアルツハイマー病に侵された晩年をシリアスに描いた「アイリス」だった。それ以上に今回の作品は、迫真迫る熱演と怪演だった。

 久しぶりに女性の深層心理に迫り、女の真の恐さと孤独を抉り出してくれた格調高い映画の登場である。



監督:リチャード・エアー
原作:ゾーイ・ヘラー
脚本:パトリック・マーバー
出演:ジュディ・デンチ / ケイト・ブランシェット / ビル・ナイ/ アンドリュー・シンプソン /
配給:20世紀フォックス映画

2007年6月2日(土)シャンテ シネほか全国順次ロードショー


 

歌謡曲だよ、人生は

2007年05月13日 | 映画
 「ダンシング・セブンティーン」「僕は泣いちっち」「これが青春だ」「小指の思い出」「ラヴユー東京」「女のみち」「ざんげの価値もない」「いとしのマックス」「乙女のワルツ」「逢いたくて逢いたくて」「みんな夢の中」「東京ラプソディ」

 60年代に大ヒットした歌謡曲12曲だ。それをリアルタイムで聴いていた自分の年齢に「あっと」驚きである。特に守屋浩の「僕は泣いちっち」にしてみれば、昭和34年の大ヒット曲で、当時私は5歳なのに、ちゃんとこの曲の旋律や歌詞まで覚えていた。でも、それはいい歌として耳に残っているのではなくて、「ちっ、ちっ、ちっち、ちっち、僕の恋人、東京にいっちっちぃー」という、「ち、ち、ち、ちっち、ちっちぃ」と鳥が鳴いているみたいな妙な歌だなぁ、変な歌だなぁと、不思議な歌としての思い出の方が深い。

 「歌謡曲だよ、人生は」はこのヒット曲12曲をオムニバスのドラマ仕立てで綴った、日本の良き時代の歌謡曲へのオマージュである。その一篇、一篇を「解夏」の磯村一路監督や「ウォーターボーイズ」「スイングガールズ」の矢口史靖などの若手俊英監督が60年代の時代背景や青春を実にうまく表現している。ただ、リアルタイムで当時を生き、青春を過ごした私には、ちょっと嘘っぽい話もあったように思えたが、それを指摘したら、この映画は面白くない。

 歌謡曲が日本の象徴であったあの良き時代を生きた、オッサン、オババたち。思いっきり、若かりし頃の自分たちを懐かしんでください!

 この映画の完成披露試写は2月下旬に「シネスイッチ銀座」で行われ、その後の記者会見は銀座の老舗キャバレー「白ばら」で行われた。ショー仕立てで綺麗なホステスさんが傍らに付くという異例の会見となった。

 私は同年代のフリー編集者とNHKの女子アナの方と同席したが、3人で当時の歌を唄い合い、かなり盛り上がった。側についてくれたホステスさんは紫色のドレスを着た米倉涼子並みの美人で、女の私にもサービス満点でよく気が付く。これじゃ男がキャバレーに行きたがるのも無理がない。

 オババがホストバーにのめり込む気持ちと同じに違いない。そんなどうでもいいことを思っていたら、ステージに出演者全員が揃い、な、なんと憧れの妻夫木聡君が現れて、私は気絶するくらいうれしかった。

 もしかしたら、「歌謡曲だよ、人生」がより良い作品に思えたのは、今時珍しくアナログで楽しい、視聴者参加型の会見のおかげかも知れない。

 

5月12日からシネスイッチ銀座で公開

監督 磯村一路 タナカ・T おさだたつや 矢口史靖 他

出演 妻夫木聡 大杉蓮 高橋恵子 他


 










バベル

2007年05月02日 | 映画
 「バベル」の試写を見たのが、2月1日だった。ギャガコミュニケーションの試写室が連日満員という噂は聞いていた。確かに私が行った日も満員だったが、なんとお隣にある20世紀フォックスの試写室を借りての、異例の拡大試写となった。ギャガとフォックスは本来は商売敵のはずなのに、この歩み寄りと連携プレーに感心し、心が温まった。映画を愛する気持ちはどこも一緒なのかも知れない。

 試写をかなり早く見てしまうと、公開時になると印象が薄れてしまうので、なるべく感想はメモするようにしている。

 「バベル」は、モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本を舞台に、それぞれの国で起こる事件が最後に一つに結びつくといったタッチの映画である。これと似たタイプの映画では「レッドバイオリン」や「クラッシュ」が記憶に新しい。

 「バベル」は映画のそのものよりも、アカデミー助演女優賞にノミネートされた菊池凛子の人気がブレイクして、この映画を日本全国に広めた感がある。とりわけ、菊池凛子は心がすさんだ聾唖の女子高生役をオールヌードという体当たりの演技をぶつけて、アカデミー会員を驚嘆させたのであろう。

 しかし、私は菊池凛子の演技は悪くはないが、それほど凄いとも思えなかった。以前、「チャーリーとチョコレート工場」でティム・バートン監督とジョニー・デップが来日した時、この映画に登場する子供たちの中で、一番難しい役が主人公の少年チャーリーだと言っていた。他の子役たちは姿形がデブだったり、内面が性悪、我儘、高慢と強烈な個性を持っているから、かえって演じやすいとのことだった。それに引き替え、チャーリーはどこにでもいる普通の少年だったので、無個性がゆえに演じるのが難しいそうだ。納得である。

 で、ここで菊池凛子に話を戻すと、菊池凛子は聾唖の役である。障害者の役は一見難しいようで、実は私は簡単であると思っている。徹底的に訓練すれば、ある程度の演技力や表現力は出せるのではないだろうか。
 
 とは言え、世界のアカデミー賞に日本の女優が「サヨナラ」のナンシー梅木以来なかったノミネートを手に入れ、その存在のデカさを世界中に広めたのだから、やはり菊池凛子ちゃんの功績は偉大である。

 さて、映画そのものに話を戻すと、モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本と話が流れていくのだが、私は妙な発見をした。この映画はまるで計算されたように、いえ、偶然そうなったのか分からないが、この国々の流れの順番通りに優れ、より強烈な印象を残している点である。

 つまり、この映画で私が一番感動した国は最初のモロッコだった。家庭内の不幸な出来事がきっかけに歯車が狂い、愛情が冷めてしまった夫婦(ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット)が心の痛手を癒すためにモロッコを旅する。そこで妻が何者かに銃で撃たれ、瀕死の重態に陥るのである。

 今まで、私は映像の中でたくさんの夫婦愛の美しい物語を見せてもらった。しかし、今回の「バベル」のこのブラッド・ピッドとケイト・ブランシェットの夫婦愛のシーンの素晴らしさは映画史上に残るのではないだろうか。

 言ってしまっていいのか、いや、言ってしまおう。良心的なモロッコ人の家に保護されたケイトが、突然尿意をもよおす。動けない体だからパンツに漏らしてしまえばいいのだが、やはり女性であるがゆえに最大の屈辱である。それを彼女は夫に恥ずかしそうに打ち明けるのだ。

 すると、夫のブラッド・ピッドはさり気なく、ケイトのために、側にあった洗面器を彼女の下半身にあて、おしっこの始末を手伝うのである。

 夫婦はこれを機会に心が融合し、お互いが抱えたトラウマから解放されていくのである。汚い部分、恥部に触れ合うことができることこそ夫婦の究極の愛の証なのである。これは長年共に生活をしてきた夫婦だからこそできることなのである。どんなに熱々の恋人同士でも、きっとこの部分だけは成立しないだろう。こんなリアルな夫婦の純粋極まりない愛の営みを描いた映画が他にあろうか。

 ゆえに「バベル」はこのシーンを見るだけでも、非常に価値のある作品になり得たのである。



原題 BABEL
製作年度 2006年
上映時間 143分

監督  アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

出演  ブラッド・ピット 、ケイト・ブランシェット 、ガエル・ガルシア・ベルナル 、役所広司 、菊地凛子 、二階堂智

配給 ギャガコミュニケーション

明日、君がいない

2007年04月12日 | 映画
 高校生の頃、私は不良娘だった。

 イキがってモク(煙草)も吸っていた。私の通った高校は理系大学の付属の進学校だった。規律が厳しく勉強に熱心な高校だったので、それに逆らって不良していたのかもしれない。

 悪友の百合子とはモク友達だった。駅前から続く商店街が通学路だったが、私と百合子はわざと裏道を通り、登校下校と隠れて煙草を吸っていた。ある日、それを通りすがりのオバサンに見つかった。

 「あんたたち、高校生でしょ?T高校の生徒でしょ?煙草なんか吸っちゃダメでしょ!学校に連絡するから名前を言いなさい!」と呼び止められた。

 百合子と私は血相変えて一目散に逃げ、学校に通報されるのだけは免れた。しかし、私はその日以来、裏道で煙草を吸うのが恐くなった。元来軟弱で気の弱い私は、今思えば形だけの不良だった。でも、百合子は真剣な不良だった。彼女は小さい頃に両親が離婚して、祖母に育てられた。いつか母親が迎えにきてくれると待ちわびていたが、高校生になった時、母親は別の男と再婚した。母親は百合子を捨てたのだ。

 心に傷を持つ百合子とのん気な不良の私とは年季が違う。翌日の朝も堂々と百合子はセブンスターに火をつけ、おいしそうに吸っていた。

 「百合子、また見つかるとやばいよ。今日はやめなよ」と私が言うと、百合子は「ふん、弱虫なヨーちゃん」と私を蔑んだ。学校に続く裏道を私たちは一言もしゃべらず歩いていた。その長い沈黙の痛さは今でも忘れない。

 翌日の朝。いつも待ち合わせするを駅のホームに百合子はいなかった。しかたなく一人で登校すると、もうとっくに百合子は教室にいた。「百合子、どうして待っててくれないのよ?」と文句を言うと、百合子はツンと無視した。それ以来、百合子は、私を避け、一言も口をきこうとしなかった。

 しばし、私は寂しくて微熱にうかされたような孤独な学園生活をおくっていた。

 700人もいる同級生の誰もがそんな私の寂しい気持ちなどを知るよしもなかった。いや、私はその辛い悲しい気持ちを人に知られるのが恐かったのかも知れない。知られることが恥ずかしい。寂しさよりもむしろ虚勢心の方が強かったのだろうか。

 オーストラリアの19歳の青年(ムラーリ・K・タルリ)が初メガホンを撮った「明日、君がいない」を見た時、私は咄嗟に高校生の時のこんな自分を思い出した。

 友人を自殺で失った実体験を元に作ったこの映画の原題が「2:37」。ハイスクールの午後2時37分に起こった衝撃的な事件について、軸となる生徒6人がそれぞれの視点で事件を語っていく。

 若葉が生い茂り、きらめくような陽光が木の葉を射し、音楽室からはピアノの音が流れてくる。グランドではアメリカンフットボールに興じる男子生徒たちがエネルギーに満ち溢れた豊な肉体を持て余すように、体をぶつけ合っている。

 どこにでもあるような平和な学園の風景だ。しかし、そこに生きるティーンエイジャーの裏側の顔は、日本であろうとオーストラリアであろうとも同じだったのだ…。

 この映画の重要なシーンの全ては、学校のトイレの中で交わされる会話の中にあることにも興味深い。そういえば、私もよく高校のトイレの中で泣いたり、笑ったり、友達と悪さを企んだりしていた。

 排泄する場所こそ、思春期の青年たちが一番素になれる場所。この現実もまた、日本だけではなく、オーストラリアもそうだったのだ。その生々しいリアリティは、やはり、19歳のつい最近まで、現役の高校生であった監督だからこそ、描ける世界なのである。


【監督・脚本】ムラーリ K. タルリ
【出演】テレサ・パルマー、ジョエル・マッケンジー、クレメンティーヌ・メラー、チャールズ・ベアード、サム・ハリス、フランク・スウィート、マルニ・スパイレイン
【配給】シネカノン
【公開】4月21日から渋谷アミューズCQNにて

ブラッド・ダイヤモンド

2007年03月29日 | 映画
 それにしても、レオナルド・ディカプリオはつくづくオスカーに縁のない俳優だと思う。「ディパーテッド」では監督のマーチン・スコッセシが初監督賞を取り、「ブラッド・ダイヤモンド」では主演男優賞にノミネートされたにも関わらず、「ラストキング・オブ・スコットランド」のアミン大統領を演じたフォレスト・ウィッテカーにオスカー像を奪われた。

 今までディカプリオが出演した映画の中で、好きな作品はもちろん「タイタニック」。そしてちょっと地味ではあるが、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」だった。もっと時代を遡ればロバート・デ・ニーロと共演した「ボーイズ・ライフ」や「ギルバート・グレイブ」も気に入っている。

 今回の「ブラッド・ダイヤモンド」はその中でも群を抜いていい作品だったので、今度こそオスカーはレオだとばかり思っていた。しかし世の中は甘くはない。今回も外した。

 「ブラッド・ダイヤモンド」は、アフリカの内戦を舞台にとてつもない巨大なピンクのダイヤモンドをめぐるサスペンスでもあり、ラブロマンスだった。

 ダイヤモンド鉱山で強制労働を強いられていたジャイモン・フンスーとディカプリオの友情にも涙が溢れた。ジャイモン・フンスーがRUFに息子を略奪され、その息子がマインドコントロールされ、残虐な少年兵に変わっていたシーンに、いつの時代でも戦争に巻き込まれるのは子供である現実に強い憤りを感じていた。

 アフリカの難民の悲惨な現実が目の前に広がり、心が痛みっぱなしだった。ゆえにこの作品はアフリカの内戦や難民の現状を知る上でも貴重でジャーナリスティックな作品でもある。

 女性ジャーナリスト、ジェニファー・コネリーとレオの純愛は、「タイタニック」のジャックを思わせた。何よりもディカプリオがレオ様という茶番のアイドルから、立派なレオナルド・ディカプリオという一人の性格俳優に変わっていたことに感激していた。その成長ぶりに、ディカプリオファンの私は歓喜した。無冠の帝王でもまんざら悪くない。ハリウッドバビロンは一般常識では計り知れない未知の世界だから。

 

監督: エドワード・ズウィック
キャスト: レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、ジェニファー・コネリー
公開  4月7日から

配給  ワーナーブラザース

ハッピーフィート

2007年03月16日 | 映画
年を取ると、急に幼児化するようだ。

めちゃくちゃかわいい癒し系のものが好きになる。数年前までぬいぐるみやかわいい手帳やハンカチなどのグッズには全然興味が無かったのに、今やいい年したオバサンが凝りに凝っているのが「リラックマ」グッズの収集なのだ。

「リラックマ」のショップに一日いても飽きない。つまり、加齢とともに、その年齢と逆行するような幼児化した精神の防衛本能が働き、子供染みたかわいいものが好きになるのかもしれない。あぶねぇー!

ま、理屈は抜きにして、「リラックマ」もぶっ飛ぶくらいかわいいペンギン君たち主演の映画が「ハッピーフィート」だ。赤ちゃんを育てるのがお父さんで、お母さんは外に魚を取りに行く。ペンギンの世界は人間の世界と反対で、ウーマンリブが厳然と出来上がっている。女性が男子供を食わすなんて、カッケー!素晴らしい。

しかし、こんなかわいいペンギン君たちの食べる魚がだんだんと無くなっていく。そうです。人間たちがペンギンの食べる魚を捕獲しちゃっているからなんです。動物保護や環境問題という文明批評もこの映画はきちんとしているんです!

一杯楽しませていただいたのが歌やダンス。クイーンの「愛にすべて」、アース・ウインド・アンド・ファイアー」の「ブギーー・ワンダーランド」、フランク・シナトラの「マイウエイ」などなどとその唄いっぷり踊りっぷりは爽快、痛快、笑いと溜め息の連発だった。

さらにオープニングの卵の殻が破れて、ペンギンの赤ちゃんがちょこんと現れ「パァ、パァ」。このセリフと愛くるしい表情に微笑まない人はいないだろう。普通なら「マァ、マァ」なのだから。家庭で居場所のない肩身の狭いお父さんにも勇気と希望を与える作品でもある。

こんなかわいい映画を誰が撮ったの?なんだ、監督はあの子豚主演の「ベイブ」を撮ったジョージ・ミラーじゃない。当然だ。ミラー監督は本当にかわいいもんがなんであるかを心得ている天才だ。子供の心を忘れない心優しい監督だと、会ってもいないのに太鼓判を押した。




3月17日公開
【監督】 ジョージ・ミラー
キャスト: 【声の出演】イライジャ・ウッド、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ブリタニー・マーフィー、ヒューゴ・ウィービング、ロビン・ウィリアムス、ミリアム・マーゴリーズ、レスリー・ニールセン 
【日本語吹替え版】手越祐也(NEWS)、ブラザートム他
【配給】 ワーナーブラザース

GRACE(グレース)創刊!

2007年03月06日 | 映画
  


    7日。つまり明日です。右の鈴木京香さん表紙の雑誌です!

 最上級の女性誌「グレース」が世界文化社から創刊されます。40代の優雅な女性たちのための女性誌です。子育てに一息がついた女性、仕事でバリバリ働く女性たちには、絶対に必須アイテムになるような洗練された女性誌です。

 ここの428ページの映画コーナーにマリリンこと瀧澤陽子が協力しています。
創刊スタートの映画は俳優の豊川悦司さんお奨めの「ボンボン」です。アルゼンチンの映画です。パタゴニアに住む職を失った中年の男が、ある日人助けのお礼に貰った犬、ボンボンと出会うことで、人生が好転していくといったロードムービーです。

 公開は4月中旬、配給はシネカノン。私もこの映画にほんわかさせられました。主人公が素人であったからこそ、こんな心暖まるロードムービーができたのではないかと思っております。トヨエツさんも私も編集部の映画好きのCさんも、みんな感動した映画ですので、是非ご覧ください。
 
 そしてもう1本は先のブログにも書きました「ホリディ」です。監督はナンシー・メイヤーズ。「恋愛適齢期」でその才能を発揮してくれた女性監督です。今回の主役はキャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレット。失恋したこの二人がお互いの家を交換することで、新しい自分を発見していくといった、それは心温まるドラマです。キャメロン・ディアスの恋人になるジュード・ロウが男ヤモメの役ですが、こんなに素敵なジュード・ロウを見たことがありません。これもマリリンお奨めの映画です。

 そんなわけで、「グレース」の映画欄は次号も素晴らしい映画の話題が満載です。お楽しみに!いえ、いえ、それだけでなく、ファッション、食べ物、文化、そして、この雑誌の一番素敵なのは、40代の輝く女性「グレース」たちの生の肉声を聞くことができる点です。それを縁取るのが、作家の林真理子さんであり、大尊敬する作家、塩野七生さんのエッセイです。

 とにかく、創刊号は買って得するページばかりです。マリリンの手元にたった今届いたばかりですが、ご飯の支度もせずに「グレース」に釘付けになっています。
女性誌に縁遠かった、このマリリンがですよ!!!

 「グレース」をこれからもよろしくお願いしますね!


「ダウト」「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2007年03月02日 | 映画
明日3日(土)から公開の面白い映画が2本ある。

【ダウト】
 
 1本目はレイ・リオッタ主演の「ダウト」。このタイプの映画のストーリーの基本は芥川龍之介の傑作「藪の中」である。登場する証言者たちの誰が本当のことを言っているのか全くわからない。これは、かなり綿密でクレバーな脚本でないと、茶番になってしまう傾向があるが、「ダウト」は類似作品の「ユージュアルサスペクツ」や「閉ざされた森」よりも、ちょっとだけ質が落ちてしまうものの、それでも十分にサスペンス色が濃くて楽しめた作品だ。

 「ダウト」の面白さは、最後まで、嫌疑をかけられる地方検事補女性、ジョリーン・ブレイロックが謎のベールで包まれている点だ。主役のレイ・リオッタを本当に愛していたのかさえ、微妙に見えるくらいな悪女的な粋なエンディングにはうなってしまった。そして、印象的なのが犯行の鍵を握るレンタルビデオショップのシーン。エロチックでミステリアスでドキッとした。リピートされるたびに、ジョリーン・ブレイロックが悪女に見えたり、聖女に見えたりしてとても面白かった。

 こういった謎解き映画は演じる俳優たちが「善」と「悪」のコントラストを巧妙に使い分けないと成功しない。主人公のレイ・リオッタですら、もしかたら共犯なのかも知れないと臭わせる彼の演技も圧巻だった。

 私はレイ・リオッタは「フィールド・オブ・ドリームス」で好きになった。「不法侵入」も良かった。彼はイケメンとは思えないが、どこかミステリアスでマニッシュでエキセントリックな魅力が一杯つまった男優だと思う。どうしてもレイが出演する映画は見たくなる。不思議。


監督:ウェイン・ビーチ
出演:レイ・リオッタ、LL・クール・J/メキー・ファイファー、ジョリーン・ブレイロック、ガイ・トーリー、テイ・ディグス、キウェテル・イジョフォー、ブルース・マッギル他
2005年/アメリカ映画/配給:アートポート


【蒼き狼 地果て海尽きるまで】

 壮大なスケール、最高の製作額という謳い文句には飽き飽きしていた私なので、モンゴル建国800周年記念イベントとして、チンギス・ハーンの映画が来ると聞いてもあまりピンとこなかった。

 しかし、試写を見て本当に良かったと思った。予想外にいい映画だったのだ。

 確かに壮大なスケールではあるのだが、ストーリーが実にシンプルで屁理屈がない。まるで、NHKの大河ドラマを見ているように、長時間の上映でありながらも、無駄のないストーリーの展開に全く退屈しなかった。

 壮大スケールであるのだが、凝りに凝ったような派手で無駄な場面も少なく、これもまた実にシンプルなシークエンスの数々だと思った。ストーリーも映像も全てがシンプルに展開されるにも関わらず、なぜか物語の中にスーッと引き込まれてしまう魅力は、やはり澤井信一郎監督の持つ感性と才能なのではないかと思った。

 反町隆史演じるチンギス・ハーンも見事。まさか反町君とチンギス・ハーンがこれほどマッチしていたなんて、と驚きだった。

 チンギス・ハーンって歴史上の英雄として、その名前だけが轟いてはいるが、実際はどんな人物だったかを私は知らなかった。この作品で、私はモンゴルがいかにして統一されたかを知り、チンギス・ハーンの思いもかけない私生活まで踏み込めた。

 そして、競馬エッセイストでもある私をグッと魅了させたのは、何千頭ものモンゴル馬の登場だった。かつてモンゴル馬は戦場で戦い、人間の争いの道具だった。つまりモンゴル馬の歴史こそ、モンゴルのチンギス・ハーンの歴史と言っても過言ではないだろうか。この映画に登場するたくさんのモンゴル馬たちの颯爽とした姿を見るのも、またこの作品の楽しさを倍増させてくれた。俳優人ともども、モンゴル馬たちにも頭が下がった。

監督:澤井信一郎
製作:角川春樹 / 千葉龍平
原作:森村誠一
脚本:中島丈博 / 丸山昇一
キャスト
反町隆史
菊川怜
若村麻由美
Ara
松山ケンイチ
袴田吉彦
松方弘樹
津川雅彦


「ゴーストライダー 」(ハーレーダビッドソンとディープインパクトが走った!)

2007年02月24日 | 映画
 ニコラス・ケイジは本当に多彩な俳優である。ほんの少し前、「ワールドトレードセンター」で9.11のテロに巻き込まれ、生死を彷徨ったレスキュー隊員の生還を生々しく演じてくれたと思ったら、今度はお化けのライダーになってダビッドソンを猛スピードで転がしていた。

 ニコラス・ケイジはハリウッドきってのコミック通らしく、原作「ゴーストライダー」の主役はどうしても彼がやりたかったそうだ。炎のバイクにまたがり、ドクロ顔で、闇の悪魔や極悪犯罪者をボカスカ倒すヒーロー。

 スパイダーマン、スーパーマン、バットマンなどなど、あまたいるヒーローの中でゴーストライダーはかなり異色で一線を画している。なにしろ極悪人を発見すると、その極悪人の背後に、犠牲になった被害者たちの阿鼻叫喚や魑魅魍魎が見えるのだ。極悪人はゴーストライダーの魔力で、かつての犯罪の犠牲者たちの味わった地獄のような苦痛を味わい、これでもかと思い知らされて、命果てていく。


 エンターティメントととしても十分満喫できる作品であるが、それだけでなく、この映画には数々の洒落たシーンが登場する。

 1つはハーレーと一頭の馬が一緒に走るシーンである。このシーンは実に圧巻で、まるで、ディープインパクトとハーレーが炎に包まれながら、猛スピードでマッチレースしているみたいな迫力なのだ。馬とハーレーが一緒に走る映画なんて今まで見たことない。競馬好きの私はワクワクしてしまった。

 2つ目はゴーストライダーが魂を売る相手メフィスト役がピーター・フォンダであるこどだ。父上は往年の大スター、ヘンリー・フォンダ。姉上は演技派のジェーン・フォンダはあまりにも有名。

 ピーター・フォンダを世に出したのが「イージーライダー」(69年)である。あのキャプテンアメリカもかなり老けてしまったが、バイクのハーレーが主役でもあるこの作品にはぴったりで粋なキャスティングだった。
 
 3つ目が挿入曲。な、な、なんと私の大好きなヘヴィーメタルの権化、オジー・オズボーンの「クレイジートレイン」が流れているではないか!!!!。あの伝説のギタリスト、ランディ・ローズのソロが始まる前でシーンが変わってしまったのは残念であったが、「クレイジートレイン」が流れて、興奮で体温が3度ほど上昇した。


 たくさんの魅力がつまった面白い映画だとつくづく感心していたら、2月16日、全米オープニング週末成績、ナンバーワンになったそうだ。どう凄いのか、数字に弱い私だが、ナンバーワンならなんでも凄いのでは!


監督 マーク・スティーヴン・ジョンソン

主演 ニコラス・ケイジ エヴァ・メンデス ウェス・ベントリー ピーター・フ   ォンダ

配給 ソニーピクチャーズエンタティメント  アメリカ映画

公開 3月3日~