マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『裏切りのサーカス』

2012年04月17日 | 映画

イギリスを代表するスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレ。

ル・カレの原作で映画化された作品は多々あるが、私は90年度の「ロシアハウス」が一番印象的だった。主演はショーン・コネリー、ミシェル・ファイファー。あいにく、ここには、ル・カレの作品にいつも登場する老スパイ、スマイリーはいない。

スマイリーが登場する作品では「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」は原作で読んでいる。

今回公開される『裏切りのサーカス』の原作「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」は読んでいなかった。かなり難解な作品だと聞いていたので、恐ろしくて手が届かなかった。

イギリスのテレビドラマシリーズでこれを映像化した時のスマイリー役がアレック・ギネスだった。あまりにも複雑な物語だったので、7話までの長さが必要だったそうだ。

それを約2時間でまとめた映画『裏切りのサーカス』には賛否両論がある。この名作を果たして2時間で完結することができるのか?と。

寸分をも見逃すまいと、試写室でありったけの集中力で眼をこらして見ていた。

ル・カレに免疫はあるものの、確かにこの作品は難解な物語だが、ソ連の二重スパイ(モグラ)のからくりは以外とよくわかったきた。

それは、多分、スマイリー役を演じるゲーリー・オールドマンのおかげだと信じた。つまり、大好きな俳優が出ることによって、スクリーンへの集中力は倍増するからだ。

これが、ゲイリーでなければ、私はきっと、途中で疲労して、展開が分からなくなっていたかもしれない。

ジョン・ル・カレに造詣の深い作家の小中陽太郎さんとご一緒したが、小中氏は「スマイリーがあんまりハンサム過ぎる」と、言っていた。原作のスマイリーは冴えない風貌の老スパイだから、ゲイリーはカッコ良すぎるとのことだった。

うん。これも一理ある。が、ジョン・ル・カレは今回のゲイリー・オールドマンのスマイリーを絶賛している。新生スマイリーによって、『裏切りのサーカス』(「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」)は、英国諜報部の内膜、ソ連の二重スパイの実態が、妻に裏切られたスマイリーの心の傷を通して、リアルに再現されたようだ。

だからこそ、ゲイリー・オールドマンはアカデミー主演男優賞の候補になったに違いない。

 

4月21日から公開

【監督】トーマス・アルフレッドソン

【出演】ゲイリー・オールドマン   キャシー・バーク  コリン・ファース ジョン・ハート