マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『わたしに会うまでの1600キロ』

2015年08月19日 | 映画

「旅」と「人生」は似ている。

行く手に何が起こるかわからない。そして、どんな人々と出会うのかも未知である。唯一違う点は、「旅」は自分の意志で止めることができるが、「人生」は絶対に止めることができない。

『わたしに会うまでの1600キロ』は「旅」を止めることなく最後まで突っ走った一人の女性の物語である。

最愛の母(ローラ・ダーン)を亡くした喪失感から、理解のある夫を裏切り、薬と男に溺れていくシェリル・スレイドは実在の人物である。何もかも失ってしまい、自分自身を取り戻すために、1600キロに及ぶ旅を実行したシェリル役をリース・ウィザースプーンが見事に演じていた。

「旅」に出る、出たい人の心の中は千差万別である。私自身も旅好きの「旅病」にかかっているものの、自分自身を取り戻すための「旅」はしたことがない。

そこまで、人生に追い詰められたことがないということなのか?

いや、それは違うのではないか?

人生に追い詰められ、自分を取り戻す「旅」も、単に未知の国を訪れてみたいという好奇心の「旅」も、コンセプトは全く違うが、そこで起こり得る未知の出来事は、すべて同じはずなのである。

どんな「旅」であれ、いつでも自分を試されるののが旅なのである。試され試され、一つ一つ克服して、そして、最終目的地に到着した「旅人」の心は表裏一体なのである。

たまたま、今回の主人公の旅が1600キロの及ぶパシフィッククレストレイルという極寒の雪山や酷暑の砂漠を超えるという過酷な旅であったことに、旅病の私は畏怖の念を感じるのである。

主人公が旅の到着点で見たものは、旅に出た者にしか味わえない深い共感が生まれる。

その共感は、優しい解放感と力強い生への希望を伴って…。

挿入曲がサイモン&ガーファンクルの「コンドルは飛んでいく」。この曲無くして、この映画が語れないのも事実である。

8月28日から公開

【監督】ジャン・マルク・バレ

【出演】リース・ウィザースプーン  ローラ・ダーン