マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』

2013年09月27日 | 映画

 

 

福祉センターで映画の講座を持っている私は、「昭和のシネマを飾った女優」というテーマで、マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンについて講義した。

この伝説的な二大女優こそ、まさに、昭和のシネマを飾った女優にふさわしいからである。

「マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンのどちらがお好き?」と、生徒さんに質問すると、女性たちは声をそろえてオードリー・ヘップバーンと答える。一方、マリリン・モンローと答えるのはほとんどが男性であった。

ヘップバーンは女に愛され、モンローは男に愛される。ヘップバーンの純真無垢な美しさとかわいらしさに女性の憧れ、肉感的なセックスシンボルのモンローに男は興奮するのだ。

さて、女の私はどちらが好きかと言えば、実はマリリン・モンローなのだ。

もちろん、ヘップバーンの可憐さや美しさはこの世のものとは思えない。しかし、ヘップバーンには、なぜか、日常の香りがしてこないのだ。言葉を変えれば、人間臭さがないのだ。

一方のモンローは女優と言う前に、一人の女であるという生臭い人間臭さに満ち溢れている。女優モンローの存在は、そのまま、一人の女モンローと一致する。仕事と日常がゴッチャになって生きたモンローが、無性に愛しいのだ。

そういった観点から作られたのが『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』である。

死後50年を経て公開されたモンロー直筆のメモや日記をもとに、ユマ・サーマン、グレン・グローズ、マリサ・トメイなどのひと癖もふた癖もある女優たちが、モンローの日記を朗読する。

1962年、36歳の若さで突然亡くなったモンローの死には、時空を超えた現代でも、疑問や不審点に満ち溢れている。

ヘップバーンが社会貢献をして、美しい死で人生の幕を閉じたにも関わらず、相変わらずモンローはスキャンダルの女王として君臨している。

モンローの人生そのものが、まるで作り物の映画ではなかったのではないか、という余韻さえ残している。

華奢で繊細なモンローが悲痛に語る肉声を聞いた時、私はスクリーンの中に飛び込み、モンローを強く抱きしめてあげたくなった。

モンローが好きな女たちは男っぽいということなのか。

10月5日から公開

【監督】リズ・ガルバス

【出演】マリリン・モンロー  グレン・グローズ  ユマ・サーマン マリサ・トメイ

 

 


『許されざる者』

2013年09月04日 | 映画

『許されざる者』

熟年世代の誰もが、このタイトルで思い出すのが、クリント・イーストウッド監督主演の『許されざる者』(1992)『Unforgiven』だろう。

日本でそれをリメイクする?いったいどんな話になるのだろうか?イーストウッド監督はアメリカ西部劇の極意を描いた。日本では、どの時代を舞台にして、どんな人間を主役にするのだろうか?

あまりにも崇高な作品のリメイクは危険な企みである。例を上げるなら、「華麗なる賭け」「太陽がいっぱい」という名作をリメイクしたが、悲しいかなオリジナルを超えることができなかった。『華麗なる賭け』では、スティーブ・マックイーンに勝る俳優はいない。そして、『太陽がいっぱい』では、誰がアラン・ドロンを抜くことができようか!

そのくらい『許されざる者』では、クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマン、ジーン・ハックマンの存在感が強い。

しかし。

さすがに、世界のケン・ワタナベ。見事にクリント・イーストウッドを演じてくれました。悪役保安官になったジーン・ハックマンを佐藤浩市が見事に演じてくれました。イーストウッドの竹馬の友モーガン・フリーマンを柄本明が見事に演じてくれました。

時代設定が明治維新の北海道というのも違和感がなく、維新の影に隠れたアイヌ問題にメスを入れ、女郎たちの運命の悲しさを鮮明に描き、私は、アメリカ版よりも優れているのではないかと思った。

『フラガール』『悪人』という名作を撮った李相日監督。39歳という若さで、イーストウッド監督の哲学を見事に踏襲し、李相日版オリジナルの斬新な『許されざる者』を作り上げてくれた。

9月13日から公開

【監督】李相日

【出演】渡辺 謙  佐藤浩市 柄本明 柳楽優弥 小池栄子