マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

ブラッド・ダイヤモンド

2007年03月29日 | 映画
 それにしても、レオナルド・ディカプリオはつくづくオスカーに縁のない俳優だと思う。「ディパーテッド」では監督のマーチン・スコッセシが初監督賞を取り、「ブラッド・ダイヤモンド」では主演男優賞にノミネートされたにも関わらず、「ラストキング・オブ・スコットランド」のアミン大統領を演じたフォレスト・ウィッテカーにオスカー像を奪われた。

 今までディカプリオが出演した映画の中で、好きな作品はもちろん「タイタニック」。そしてちょっと地味ではあるが、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」だった。もっと時代を遡ればロバート・デ・ニーロと共演した「ボーイズ・ライフ」や「ギルバート・グレイブ」も気に入っている。

 今回の「ブラッド・ダイヤモンド」はその中でも群を抜いていい作品だったので、今度こそオスカーはレオだとばかり思っていた。しかし世の中は甘くはない。今回も外した。

 「ブラッド・ダイヤモンド」は、アフリカの内戦を舞台にとてつもない巨大なピンクのダイヤモンドをめぐるサスペンスでもあり、ラブロマンスだった。

 ダイヤモンド鉱山で強制労働を強いられていたジャイモン・フンスーとディカプリオの友情にも涙が溢れた。ジャイモン・フンスーがRUFに息子を略奪され、その息子がマインドコントロールされ、残虐な少年兵に変わっていたシーンに、いつの時代でも戦争に巻き込まれるのは子供である現実に強い憤りを感じていた。

 アフリカの難民の悲惨な現実が目の前に広がり、心が痛みっぱなしだった。ゆえにこの作品はアフリカの内戦や難民の現状を知る上でも貴重でジャーナリスティックな作品でもある。

 女性ジャーナリスト、ジェニファー・コネリーとレオの純愛は、「タイタニック」のジャックを思わせた。何よりもディカプリオがレオ様という茶番のアイドルから、立派なレオナルド・ディカプリオという一人の性格俳優に変わっていたことに感激していた。その成長ぶりに、ディカプリオファンの私は歓喜した。無冠の帝王でもまんざら悪くない。ハリウッドバビロンは一般常識では計り知れない未知の世界だから。

 

監督: エドワード・ズウィック
キャスト: レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、ジェニファー・コネリー
公開  4月7日から

配給  ワーナーブラザース

ハッピーフィート

2007年03月16日 | 映画
年を取ると、急に幼児化するようだ。

めちゃくちゃかわいい癒し系のものが好きになる。数年前までぬいぐるみやかわいい手帳やハンカチなどのグッズには全然興味が無かったのに、今やいい年したオバサンが凝りに凝っているのが「リラックマ」グッズの収集なのだ。

「リラックマ」のショップに一日いても飽きない。つまり、加齢とともに、その年齢と逆行するような幼児化した精神の防衛本能が働き、子供染みたかわいいものが好きになるのかもしれない。あぶねぇー!

ま、理屈は抜きにして、「リラックマ」もぶっ飛ぶくらいかわいいペンギン君たち主演の映画が「ハッピーフィート」だ。赤ちゃんを育てるのがお父さんで、お母さんは外に魚を取りに行く。ペンギンの世界は人間の世界と反対で、ウーマンリブが厳然と出来上がっている。女性が男子供を食わすなんて、カッケー!素晴らしい。

しかし、こんなかわいいペンギン君たちの食べる魚がだんだんと無くなっていく。そうです。人間たちがペンギンの食べる魚を捕獲しちゃっているからなんです。動物保護や環境問題という文明批評もこの映画はきちんとしているんです!

一杯楽しませていただいたのが歌やダンス。クイーンの「愛にすべて」、アース・ウインド・アンド・ファイアー」の「ブギーー・ワンダーランド」、フランク・シナトラの「マイウエイ」などなどとその唄いっぷり踊りっぷりは爽快、痛快、笑いと溜め息の連発だった。

さらにオープニングの卵の殻が破れて、ペンギンの赤ちゃんがちょこんと現れ「パァ、パァ」。このセリフと愛くるしい表情に微笑まない人はいないだろう。普通なら「マァ、マァ」なのだから。家庭で居場所のない肩身の狭いお父さんにも勇気と希望を与える作品でもある。

こんなかわいい映画を誰が撮ったの?なんだ、監督はあの子豚主演の「ベイブ」を撮ったジョージ・ミラーじゃない。当然だ。ミラー監督は本当にかわいいもんがなんであるかを心得ている天才だ。子供の心を忘れない心優しい監督だと、会ってもいないのに太鼓判を押した。




3月17日公開
【監督】 ジョージ・ミラー
キャスト: 【声の出演】イライジャ・ウッド、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ブリタニー・マーフィー、ヒューゴ・ウィービング、ロビン・ウィリアムス、ミリアム・マーゴリーズ、レスリー・ニールセン 
【日本語吹替え版】手越祐也(NEWS)、ブラザートム他
【配給】 ワーナーブラザース

GRACE(グレース)創刊!

2007年03月06日 | 映画
  


    7日。つまり明日です。右の鈴木京香さん表紙の雑誌です!

 最上級の女性誌「グレース」が世界文化社から創刊されます。40代の優雅な女性たちのための女性誌です。子育てに一息がついた女性、仕事でバリバリ働く女性たちには、絶対に必須アイテムになるような洗練された女性誌です。

 ここの428ページの映画コーナーにマリリンこと瀧澤陽子が協力しています。
創刊スタートの映画は俳優の豊川悦司さんお奨めの「ボンボン」です。アルゼンチンの映画です。パタゴニアに住む職を失った中年の男が、ある日人助けのお礼に貰った犬、ボンボンと出会うことで、人生が好転していくといったロードムービーです。

 公開は4月中旬、配給はシネカノン。私もこの映画にほんわかさせられました。主人公が素人であったからこそ、こんな心暖まるロードムービーができたのではないかと思っております。トヨエツさんも私も編集部の映画好きのCさんも、みんな感動した映画ですので、是非ご覧ください。
 
 そしてもう1本は先のブログにも書きました「ホリディ」です。監督はナンシー・メイヤーズ。「恋愛適齢期」でその才能を発揮してくれた女性監督です。今回の主役はキャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレット。失恋したこの二人がお互いの家を交換することで、新しい自分を発見していくといった、それは心温まるドラマです。キャメロン・ディアスの恋人になるジュード・ロウが男ヤモメの役ですが、こんなに素敵なジュード・ロウを見たことがありません。これもマリリンお奨めの映画です。

 そんなわけで、「グレース」の映画欄は次号も素晴らしい映画の話題が満載です。お楽しみに!いえ、いえ、それだけでなく、ファッション、食べ物、文化、そして、この雑誌の一番素敵なのは、40代の輝く女性「グレース」たちの生の肉声を聞くことができる点です。それを縁取るのが、作家の林真理子さんであり、大尊敬する作家、塩野七生さんのエッセイです。

 とにかく、創刊号は買って得するページばかりです。マリリンの手元にたった今届いたばかりですが、ご飯の支度もせずに「グレース」に釘付けになっています。
女性誌に縁遠かった、このマリリンがですよ!!!

 「グレース」をこれからもよろしくお願いしますね!


「ダウト」「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2007年03月02日 | 映画
明日3日(土)から公開の面白い映画が2本ある。

【ダウト】
 
 1本目はレイ・リオッタ主演の「ダウト」。このタイプの映画のストーリーの基本は芥川龍之介の傑作「藪の中」である。登場する証言者たちの誰が本当のことを言っているのか全くわからない。これは、かなり綿密でクレバーな脚本でないと、茶番になってしまう傾向があるが、「ダウト」は類似作品の「ユージュアルサスペクツ」や「閉ざされた森」よりも、ちょっとだけ質が落ちてしまうものの、それでも十分にサスペンス色が濃くて楽しめた作品だ。

 「ダウト」の面白さは、最後まで、嫌疑をかけられる地方検事補女性、ジョリーン・ブレイロックが謎のベールで包まれている点だ。主役のレイ・リオッタを本当に愛していたのかさえ、微妙に見えるくらいな悪女的な粋なエンディングにはうなってしまった。そして、印象的なのが犯行の鍵を握るレンタルビデオショップのシーン。エロチックでミステリアスでドキッとした。リピートされるたびに、ジョリーン・ブレイロックが悪女に見えたり、聖女に見えたりしてとても面白かった。

 こういった謎解き映画は演じる俳優たちが「善」と「悪」のコントラストを巧妙に使い分けないと成功しない。主人公のレイ・リオッタですら、もしかたら共犯なのかも知れないと臭わせる彼の演技も圧巻だった。

 私はレイ・リオッタは「フィールド・オブ・ドリームス」で好きになった。「不法侵入」も良かった。彼はイケメンとは思えないが、どこかミステリアスでマニッシュでエキセントリックな魅力が一杯つまった男優だと思う。どうしてもレイが出演する映画は見たくなる。不思議。


監督:ウェイン・ビーチ
出演:レイ・リオッタ、LL・クール・J/メキー・ファイファー、ジョリーン・ブレイロック、ガイ・トーリー、テイ・ディグス、キウェテル・イジョフォー、ブルース・マッギル他
2005年/アメリカ映画/配給:アートポート


【蒼き狼 地果て海尽きるまで】

 壮大なスケール、最高の製作額という謳い文句には飽き飽きしていた私なので、モンゴル建国800周年記念イベントとして、チンギス・ハーンの映画が来ると聞いてもあまりピンとこなかった。

 しかし、試写を見て本当に良かったと思った。予想外にいい映画だったのだ。

 確かに壮大なスケールではあるのだが、ストーリーが実にシンプルで屁理屈がない。まるで、NHKの大河ドラマを見ているように、長時間の上映でありながらも、無駄のないストーリーの展開に全く退屈しなかった。

 壮大スケールであるのだが、凝りに凝ったような派手で無駄な場面も少なく、これもまた実にシンプルなシークエンスの数々だと思った。ストーリーも映像も全てがシンプルに展開されるにも関わらず、なぜか物語の中にスーッと引き込まれてしまう魅力は、やはり澤井信一郎監督の持つ感性と才能なのではないかと思った。

 反町隆史演じるチンギス・ハーンも見事。まさか反町君とチンギス・ハーンがこれほどマッチしていたなんて、と驚きだった。

 チンギス・ハーンって歴史上の英雄として、その名前だけが轟いてはいるが、実際はどんな人物だったかを私は知らなかった。この作品で、私はモンゴルがいかにして統一されたかを知り、チンギス・ハーンの思いもかけない私生活まで踏み込めた。

 そして、競馬エッセイストでもある私をグッと魅了させたのは、何千頭ものモンゴル馬の登場だった。かつてモンゴル馬は戦場で戦い、人間の争いの道具だった。つまりモンゴル馬の歴史こそ、モンゴルのチンギス・ハーンの歴史と言っても過言ではないだろうか。この映画に登場するたくさんのモンゴル馬たちの颯爽とした姿を見るのも、またこの作品の楽しさを倍増させてくれた。俳優人ともども、モンゴル馬たちにも頭が下がった。

監督:澤井信一郎
製作:角川春樹 / 千葉龍平
原作:森村誠一
脚本:中島丈博 / 丸山昇一
キャスト
反町隆史
菊川怜
若村麻由美
Ara
松山ケンイチ
袴田吉彦
松方弘樹
津川雅彦