フェミニズムの視点から考えると、この作品に女性差別の匂いを嗅ぎつけ、イランという国に憤りを感じる人もいるだろう。なにしろ、イランでは、法律上、女性のサッカー観戦は禁止されているからである。
2006年のドイツワールドカップ出場がかかったバーレン戦に、どうしても生で試合を見たいイランの少女たちが、男装してスタジアムに忍び込む。だが、あっけなく警察にバレて捕まってしまう。
スタジアムの外に設けられた仮設留置所に保護された少女たちは、まさに「蛇の生殺し」状態。スタジアムのお客たちの歓声や罵倒から、イランチームの状況を想像し、共に喜び、怒り、落胆する。
少女たちのサッカーへの熱意と愛情がひしひしと伝わり、どこかコミカルで楽しいシーンである。
一人の少女がトイレに行きたくなる。しかし、スタジアム内には女性トイレが無い。看守がトイレにいる男性客を締め出して、少女を一人だけにする。このチャンスを狙って、少女は脱出し、うまくスタジアムに潜り込むのに成功する。
少女がぼそっと言う。「日本人観光客の女の人のためには、トイレがきちんと用意されているのに!なんで私たちは?」
このセリフこそ、法を犯してまで、サッカー観戦をしたかったイランの女の子たちの肉声であり、イラン政府の矛盾への憤りなのであろう。
しかしである。確かにこの作品はイランの女性差別をモチーフにしているものの、私はむしろ、そんな重いものは全く感じなかった。
この少女たちは、単純に全世界のサッカーファンの気持ちを代弁しているだけに過ぎないのではないか。ドイツワールドカップのチケットを「ヤフオク」で落札できず、泣き泣きドイツ行きを諦めたファンや、会場には行けないが、日本チームを応援するためにアウトビューイングに集まる熱狂的な日本のファンの気持ちと重なる。
スタジアムに入れないからこそ、画面や音声から伝わる試合の展開に、一喜一憂する運命共同体のファンたちを、女の子はスタジアムに入れないというイランの古い法律を借りて、実は全世界の熱狂的なサッカーファンの深層心理を描いた、実に新鮮で楽しいスポーツ映画なのである。
9月1日より公開
監督 ジャファル・パナヒ
脚本 ジャファル・パナヒ ジャドメヘル・ラスティン
出演 シマ・モバラク・シャヒ サファル・サマンダール シャイヤステ・イラニ
M・キェラバディ イダ・サデキ ゴズナル・ファルマニ
配給 エスパース・サロウ
公式サイト http://www.espace-sarou.co.jp/offside/
2006年のドイツワールドカップ出場がかかったバーレン戦に、どうしても生で試合を見たいイランの少女たちが、男装してスタジアムに忍び込む。だが、あっけなく警察にバレて捕まってしまう。
スタジアムの外に設けられた仮設留置所に保護された少女たちは、まさに「蛇の生殺し」状態。スタジアムのお客たちの歓声や罵倒から、イランチームの状況を想像し、共に喜び、怒り、落胆する。
少女たちのサッカーへの熱意と愛情がひしひしと伝わり、どこかコミカルで楽しいシーンである。
一人の少女がトイレに行きたくなる。しかし、スタジアム内には女性トイレが無い。看守がトイレにいる男性客を締め出して、少女を一人だけにする。このチャンスを狙って、少女は脱出し、うまくスタジアムに潜り込むのに成功する。
少女がぼそっと言う。「日本人観光客の女の人のためには、トイレがきちんと用意されているのに!なんで私たちは?」
このセリフこそ、法を犯してまで、サッカー観戦をしたかったイランの女の子たちの肉声であり、イラン政府の矛盾への憤りなのであろう。
しかしである。確かにこの作品はイランの女性差別をモチーフにしているものの、私はむしろ、そんな重いものは全く感じなかった。
この少女たちは、単純に全世界のサッカーファンの気持ちを代弁しているだけに過ぎないのではないか。ドイツワールドカップのチケットを「ヤフオク」で落札できず、泣き泣きドイツ行きを諦めたファンや、会場には行けないが、日本チームを応援するためにアウトビューイングに集まる熱狂的な日本のファンの気持ちと重なる。
スタジアムに入れないからこそ、画面や音声から伝わる試合の展開に、一喜一憂する運命共同体のファンたちを、女の子はスタジアムに入れないというイランの古い法律を借りて、実は全世界の熱狂的なサッカーファンの深層心理を描いた、実に新鮮で楽しいスポーツ映画なのである。
9月1日より公開
監督 ジャファル・パナヒ
脚本 ジャファル・パナヒ ジャドメヘル・ラスティン
出演 シマ・モバラク・シャヒ サファル・サマンダール シャイヤステ・イラニ
M・キェラバディ イダ・サデキ ゴズナル・ファルマニ
配給 エスパース・サロウ
公式サイト http://www.espace-sarou.co.jp/offside/