マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『ごくせん THE MOVIE』

2009年07月13日 | 映画
 

 テレビドラマをあんまり見ない私だが、唯一『ごくせん』だけは毎週楽しみにして見ていた。シリーズ第1作目の3年D組の不良生徒、松潤(松本潤)、小栗旬、成宮君の時は、それほど熱心に見なかったが、第2作目の亀梨君、小池徹平あたりからかなりのめり込み、第3作目の三浦春馬君では、欠かさず毎週見ていた。


 『ごくせん』の最大の魅力は、もちろん教師ヤンクミ演じる仲間由紀恵のぶっ飛んだ演技力だ。楚々とした端整な美しいマジ顔の仲間由紀恵が、極道の家庭に育ちながらも、教育者として、不良や落ちこぼれの生徒と命がけで向きあう。

 絵に描いたような理想的な教育者像であるが、ヤンクミは臭くなく、正直で、時にはコミカルで人間的だ。そして、お笑いの要素がバッチリ込められ、老若男女問わずに大笑いさせてくれる稀有なドラマだ。

 『GTO』の反町隆史演じた鬼塚教師と生徒たちの関係とどこか共通点がある。

 初映画化された『ごくせん THE MOVIE』はテレビシリーズの完結編で、もうヤンクミは2度と見れないそうだ。新3年D組の落ちこぼれたちを賀来賢人や玉森裕太(ジャニーズJr)が演じ、そこにすでに卒業して社会人になった三浦春馬が関わった事件が絡んでくる。

 ストーリーはテレビと同じパターンで、麻薬事件に巻き込まれた三浦春馬君を救うために、ヤンクミはジャージ姿で髪をほどき、めがねをはずして、敵地に殴りこみをかける。

 「ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃちゃー」とヤンクミ登場のお決まりのBGMが流れた瞬間、いつものことなのに胸がドキドキしてしまう。

 ラストはいつもハッピーエンド。これも変わりばえしないのに、なぜか涙が流れてしまう。

 この強烈な魅力は何なんだろう?

 そう、これは『男はつらいよ』シリーズのフーテンの寅さんや、『釣りバカ日誌』シリーズの浜ちゃんに共通する魅力と似ている。

 映画『ごくせん』はこれでエンドなのだが、もっとシリーズ化してくれればいいのにと、思っている。何しろ、大好きな『釣りバカ日誌』シリーズが次回作で完全ラストを迎えてしまい、日本の映画界から人気シリーズものが1本無くなってしまうからだ。

 


 ごくせんTHE MOVIE公式サイト

監督:佐藤東弥
出演: 仲間由紀恵、亀梨和也、生瀬勝久、高木雄也、三浦春馬、石黒英雄、中間淳太、桐山照史、三浦翔平

7月11日から全国公開中

『HACHI 約束の犬』とリチャード・ギア

2009年07月08日 | 映画
 
 いい男は何歳になってもいい男である。

 リチャード・ギアは59歳。立派なおっさん年齢になっても、その色気とハンサムぶりは健在である。昨日、銀座のペニンシュラホテルで、8月8日公開される『HACHI 約束の犬』で来日した主役のリチャード・ギアの記者会見に参加して、改めてそれを実感した。

 リチャード・ギア様よりはうん歳ほど若い私だが、四捨五入すれば、立派な「アラカン」のSAME世代なので、ジョニー・デップやブラッド・ピットなどを見るよりも、心が落ち着き、年相応の安心感と親近感が湧いた。

 会見場に現れたリチャード・ギアは、ただ一言、「いちいちカッコよかった」。いちいちカッコいいということは、姿かたち、どの仕草をとっても完璧で、何から何までカッコいいということだ。「いちいちカッコいい」というセリフは、以前、テレビ番組でDAIGO君が使っていて、とても面白いセリフだからいつかは使ってやろうと思っていた。

 熟成された男の色気の自信、熟成された演技への自信、熟成された感性への自信。そして、熟成された人生への自信に満ち溢れていた。おまけに今回の作品では、「主役は自分でなくて、3匹のワンちゃん(HACHI役は2匹の男の犬と1匹の女の犬が場面場面に応じて演じていたそうだ)だった」という謙虚さ。

 そう、リチャード・ギアは本当に「いちいちカッコいいのだ」。

ということで、4年ぶりに来日したリチャード・ギアを私は舐めるように見つめていた。

 多分、映画『HACHI 約束の犬』に感動しない人はいないだろう。動物と人を描いた作品には駄作なし。興行収入だってそこそこ読める。

 動物が人に与えてくれる素晴らしさを知っている人には、普遍的なテーマであり永劫のものだからだ。今まで、動物と人間をテーマにした大味小味の作品どれを取っても涙が出なかった映画はなかった。
 
 まぁ、その動物とは、私にとっては競走馬なのだが、主人公の「HACHI」の飼い主パーカー・ウィルソン教授を演じたリチャード・ギアにとっては、犬ということなのである。

 渋谷駅ハチ公口に、ぽちょんと立っている「忠犬・ハチ公像」。飼い主が亡くなっても、いつまでも駅に迎えに来ていた伝説の犬、「ハチ公物語」を、アメリカでリメイクした作品だ。実にシンプルな内容だが、HACHIが亡き主人を待ちわびていたベッドリッジ駅は、古城のように美しく、ロマンチックで、心が洗われた。

 犬のHACHIが人間たちを見る時にだけ、スクリーンがセピアカラーからモノクロ変わる瞬間を見逃してはならない。犬から見ると人はモノクロにしか見えなかったのか!いやー、お見事!実に上手いカメラワークと演出だ。

 監督は『サイダーハウス・ルール』『ギルバート・グレイブ』を産んだスウェーデンのラッセ・ハルストレムではないか!

 なるほど、なるほど、大納得である。

「HACHI 約束の犬」公式サイト

監督: ラッセ・ハルストレム
出演:リチャード・ギア
   ジョーン・アレン
配給 松竹
 8月8日から公開

『TAJOMARU』

2009年07月06日 | 映画
ユナイテッド・シネマ豊洲で、小栗旬主演の『TAJOMARU』の完成披露試写があったので出かけた。

日曜日の朝に完成試写があるのも珍しく、場所が行ったことがなかった豊洲であったので、これはおもしろそうだなと思い行ってみた。

『TAJOMARU』の原作は芥川龍之介の「藪の中」。

黒澤明監督の『羅生門』の原作も「藪の中」。黒澤作品は、言うまでもなく、世界中で注目され、多くのファンの心をつかんでいる傑作だ。『TAJOMARU』は『羅生門』で三船敏郎演じた伝説的な大盗賊にスポットを当て、小栗旬が演じる大盗賊「多襄丸」(TAJOMARU)として新しく蘇る。

 三船敏郎から小栗旬にバトンタッチされたわけである。

 作品そのものは、時代劇を現代タッチで描いているので、黒澤明の作品と比較してはいけない。あくまでも新生『TAJOMARU』は地位と名誉を捨て、愛する女に命をかける男の現代風トゥルーロマンスなのだ。

 衣装も斬新、役者たちの殺陣も迫力あり見事だった。主役を張った小栗旬さながら、八代将軍で男色の足利義政演じた萩原健一(私の世代ではショーケン)、旧多襄丸演じた松方弘樹の脇に回ったベテラン俳優陣の貢献度も大だった。

 ところで、この完成披露試写には、配給会社のワーナーブラザースのご配慮で、試写や記者会見を取材するプレスや一般観客すべてに、ドリンクとポップコーンのサービスがついた。これはとても有難い。

 売店はすでに長蛇の列だったので、最後尾に並んだ私。すると、なんと、左隣に、ワーナーエンターテイメントジャパン㈱社長のウイリアム・アイアトン氏が並んでいたではないか。

 私は思わずアイアトン社長に声をかけてしまった。

「社長自らドリンクの列にお並びになっているなんて、素晴らしいですね」と私。
 
「いえいえ、社長だからこそ、自ら現場に顔を出して、映画を鑑賞して下さる方たちと一緒に時間を共有することが大切なんですよ。皆様の生の声の感想を伺うことも勉強なんです。でも、時間がなくて、たくさんは来れないのが残念です。」と、ご堪能な日本語とお優しい笑顔でお話になった。

 売店に並んだ列越しというシチュエーションで名刺交換したことは画期的なことなので、私は大感激だった。

 ユナイテッド・シネマ豊洲の大きなスクリーンも見ごたえたっぷりで、見終えた後のショッピングモール「豊洲ららぽーと」でショッピングするたくさんのお客たちの活気にも圧倒されていた。

 何よりも腰の低い謙虚でお優しい紳士、アイアトン氏が『TAJOMARU』にかける心意気を知り、とても有意義な楽しい完成披露試写会だった。


TAJOMARU公式サイト

【監督】 中野裕之
【出演】小栗旬、柴本幸、田中圭、やべきょうすけ、池内博之、松方弘樹

2009年9月12日、13日、先行ロードーショー。全国にて公開